北八ヶ岳の神秘の世界!森閑の原生林「苔の森」白駒池へ

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森の中を歩き、樹木の息吹きを肌で感じ、小鳥や小動物の営みを間近に見る。アウトドアの基本に帰って森を歩いてみます。北八ヶ岳のほぼ中央、標高2127mの麦草峠からは、ここを起点に軽装備で短時間のうちに原生林に覆われた白駒池周辺の苔の森を奥深くまで分け入ることができます。八ヶ岳は標高2899mの赤岳を最高峰とし、日本百名山に名を連ねていますが、北部の山並みは比較的なだらかで、2000mを超える高所にも国道が通っています。八千穂村から麦草峠を越えて西側の蓼科へと八ヶ岳山麓をまたぐように走る国道299号から国道152号へ続く道は、別名「メルヘン街道」と呼ばれ、昭和57年(1982)茅野-広大な佐久穂町区間が国道になったのをきっかけに名付けられました。広大な原生林の中を縫うドライブルートでドイツのメルヘン街道に似ていることから名付けられたらしい。2018年4月中部横断自動車道も八千穂高原ICまで延伸しアクセスが容易になりました。しっとりとしたコケの森で、深く深く深呼吸してみませんか。

八千穂高原ICを降り、国道299号へ入り、白駒池を源に発している大石川沿いを上っていく。青い空に突き刺すかのように延びるメルヘン街道を走っていると広い駐車場が見えてくる。そこが白駒の池駐車場(駐車料金600円)です。茅野市側から来ると国道299号の最高地点麦草峠を越え、下り坂になってすぐに見えてきます。麦草峠は縞枯山や茶臼山を望む樹林帯の北側と、麦草が生い茂る笹原の南側とに馬の背のように分断された峠です。

白駒の池には、八ヶ岳に祀られている女神が、峠で働く娘のために白馬を使わせて父親の病を治したが、その後に約束を守らなかった娘を乗せた白馬は池に飛び込んで消えてしまう・・・という伝説が残ります。北八ヶ岳の標高2000以上の高地では最大の天然湖の原生林に囲まれた周囲1.35kmの池は、国土地理院の地図では「白駒池」と表記されるが、地元の人々は白駒の池と呼ぶ。池の周囲の森には485種もの苔が生息し、日本蘚苔類学会からは平成20年(2008)「日本の貴重なコケの森」にも認定されていて、緑のじゅうたんのような苔が原生林の足元一面覆い、まるで古代の森のようにより一層神秘的な雰囲気を作り出しています。

登山者だけに知られていた白駒池の苔の景観は、JR東日本大人の休日倶楽部「白駒池」編で、標高約2100mに485種もの苔が生息する信州の原生林。ルーペの向こうには小さな地球が広がっていました。と吉永小百合さんが、ルーペの奥に広がる神秘的な苔の世界に魅了される、大人の好奇心をくすぐる旅を描いたことで一躍有名に。またNIKKEIプラス1「梅雨こそお出かけ苔の名所」で第2位に選ばれています。

6:40、駐車場から国道を渡った白駒池入口は標高2094m。風は爽やかですが、「白駒の森」と名付けられた森に一歩踏み入れると様相は一変し、木道の両側を見ると群生する木々に日差しが遮られて薄暗く、しっとりとした空気の中、地面や木の根、岩肌にはモコモコとした苔がびっしり生え、緑の絨毯となっています。森は深緑から蛍光がかった緑まで、さまざまな緑に包まれ、幻想的です。

樹齢300年はあるコメツガの大樹に苔が這い、生命をむさぼるかのように枝の先近くまでびっしりとからみつく。生木ばかりでなく、根から倒れ朽ち果てた老木がシダ類などの根城とされ、要塞を思わせる異様な姿をされけ出しています。

木の幹に半月状に群落をつくるカギカモジゴケが観られます。カモジとは添髪のこと。シラビソやトウヒ、ツガなどの針葉樹の森を歩いていると、実にすがすがしい。

深呼吸しながら整備された木道を歩くこと500m、緩やかな上りを15分ほどで、最初の分岐点に着きます。左手が青苔荘経由で白駒池周回へ、真ん中が白駒荘経由で南歩道から高見石へ、そして右手が北歩道から高見石を目指すコースです。今回は勾配の緩い北歩道から高見石を目指します。1.3km約50分のトレッキングコースです。

7:00ここからは観光客の姿はなくなり、ハイカーの領域。無数に延びた木の根っこをまたぎ、快適な足場を探しながら歩くうちに、道は徐々に険しくなり、生い茂る樹木が密生し40分ほどで標高2200m付近「カモシカの森」に。茎の高さ8~20cm近くにもなるというセイタカスグゴケが見られます。

さらに上りが続き、汗も出てきますがもう一息、ひたすら足元に神経を集中させて歩き続けること10分ほどで一気に視界が開けたと思ったら高見石小屋に到着です。小屋にはテラスがあり、飲み物や軽食が食べれる。高見石小屋の名物は“揚げパン”。きなこ・ココア・抹茶・チーズ・黒ゴマの5種類の味があり、小ぶりなパンなので全種類食べられそうです。

しかし目的の頂上(小ピーク)高見石はその先です。高見石小屋の脇を通り、見上げると一見手ごわそうな岩場をよじ登ります。両手を使いながら、岩と岩の隙間に落ちないように気を付けながらあせらず登っていきます。

すぐに頂上で、そこには360度の視界が開け、眼下に見下ろす原生林に囲まれた白駒池はまるで樹海の中に浮かんでいるようで、幻想的な絶景と山々の緑が鮮やかに一望できます。正面に浅間山、左には蓼科山や北アルプス、振り返れば中央アルプスが望める。

高見石は大きな岩が積み重なってできていますが、平な場所もあるので座って小休憩できます。振り返れば赤い屋根の高見石小屋や丸山を望めます。

8:00白駒池方面へは下りということもあり、距離は短いが急坂で岩が露出し、狭い道が多い南歩道でも大丈夫であろうと選択。高見石小屋の庭先から下る。かなりの急坂で大き目の岩が露出し足元に注意しながら下ります。

途中「高見の森」と名付けられた場所ではコセイタカスギゴケという茎の高さ4~10cmで葉は幅が広く短いコケが、林床に大きな群落をつくっています。

8:40南歩道を下りきると透明度5.8mという清らかな水を湛えた白駒池が眼の前に現れます。丸山が噴火し大石川をせき止めたことで誕生した標高2115m、水深8.6mの白駒池には、一周する木道が整備されており、ほぼ平坦な道をゆっくり歩いて1.8kmを45分ほど。

途中白駒池南岸からはニュウ(標高2352m)・稲子湯方面へ分岐があります。

さらに湖畔から離れた途中の木道沿いにはまるで森に緑の床をつくったかのようにコケが群生している場所もあり、多彩なコケが見られます。「もののけの森」と名付けられ、水滴がついたコケがキラキラと輝き、瑞々しい光景は幻想的で、ジブリ映画のような世界観がそこにあります。倒木や岩もコケに覆われ、一面が緑。木のもこもこした根や凸凹のある岩肌をふさふさしたコケのじゅうたんが覆う風景は太古の森にいるかのよう。癒しの要素満点でつい歩みがゆるみ、時には立ち止まって見入ってしまいます。ムツデチョウチンゴケという中から上部の葉は光沢があり、葉に横じわがあるのが特徴です。

9:30白駒池北岸にある青苔荘では公式キャラクター「コケ丸」が出迎えてくれます。亜高山帯に自生する北八ヶ岳を代表する日本の固有種・ムツデチョウチンゴケがモデルとなっていて、触覚のように伸びているのはコケの胞子体とのこと。

青空に映し出された白駒池はとても美しく、高見石から見るのとはまた違った雰囲気が味わえます。桟橋にボートが並び、絵本のような風景です。

9:40、さらに湖畔を歩いて白駒池の湖畔近くに立つ白駒荘へ100年を超える歴史がある山小屋ですが、2017年に焼失、建て替えたためとても綺麗です。ここの名物は白駒荘オリジナルスイーツの“ほおずきレアチーズケーキ”です。

10:00駐車場に戻る前に「白駒の奥庭」へ。麦草峠から白駒池を目指す木道の途中にある場所で、岩とハイマツのコントラストが美しい。

メルヘン街道を八千穂高原ICに戻る途中、目にも涼やかな白樺林が広がっています。八千穂高原は、北八ヶ岳山麓に位置する標高1600mの高原。ここは、日本一美しい白樺の群生地としても知られており、その数は500万本にものぼるといいます。最後に少し寄っていきのもいいですよ。

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