信州・美ヶ原高原は、天空に広がる溶岩台地と360°の大パノラマ

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山の詩人・尾崎喜八が讃えた信州のほぼ中央に位置する美ヶ原高原。最高峰の王ヶ頭を中心に標高2000m近い溶岩台地に牧草地が広がる日本一広い高原の大地で、松本市、上田市、長和町の3市町にまたがり、その面積は1000haに及びます。なだらかな草原には牛たちがのんびり草を食む牧歌的な風景も見られ、どこまでも続く真っ青な空とともに爽快な気分にさせてくれる、雲上の楽園からの360度の大パノラマを是非堪能してみてださい。

信州のほぼ中央、東信と中信を隔てる筑摩山地のちょうど中央に位置する「美ヶ原高原」は、八ヶ岳中信高原国定公園の最北に位置する日本一広い高原大地を誇る高原です。2010年7月31日付の日経プラス1「ハイキングにおすすめの高原」で第8位にランクされています。(1位は尾瀬ヶ原で長野県内では4位上高地、5位栂池高原、7位乗鞍高原)ビーナスライン側の美ヶ原高原美術館周辺から、美ヶ原自然保護センター周辺まで、スニーカーでも歩きやすい遊歩道となっています。山の天候に気を配りつつ、どこまでも続く空とのどかな牧場風景を眺めながらのんびり散策します。

美ヶ原高原のハイキングの起点は、ビーナスラインの終点「美ヶ原高原ホテル山本小屋」を出発点とするか、和田峠でビーナスラインを降り、中山道(国道142)で和田宿、長久保宿を通過し、上田市武石から美ヶ原公園沖線で「長野県美ヶ原自然保護センター」に向かい、ここを出発地点とするかです。どちらも美ケ原高原の最高地点「王ヶ頭」へは一般車通行禁止のため徒歩でないと行けません。今回は王ヶ頭に一番近い駐車場である長野県美ケ原自然保護センターからのスタートです。

沿線沿いに巣栗渓谷や番所ヶ原スキー場がある美ヶ原公園沖線は、カーブが85以上あるくねくね道をどんどん高度を上げていき、武石峠を過ぎれば、ビーナスラインに負けない高原道路になる爽快感ある道路です。長野県美ヶ原自然保護センターの駐車場に車を停めてスタートです。自然保護センターでは、高原の自然・歴史・文化・景観等をパネルなどで分かり易く展示されていてここで勉強してから行くとよりハイキングが楽しめますよ。

まずは「天狗の露路」と呼ばれる、所々小石が多く、足を取られるところがある小路を30分ほどかけて登っていくと各種の電波塔が立ち並ぶ王ヶ頭に出ます。

ここには電波塔と並んで一軒宿の老舗ホテル「王ヶ頭ホテル」建っていますが、まずは歩いて40分程先の「美しの塔」を目指しましょう。

馬や牛がのんびりと草を食む美ヶ原牧場の中を左右の柵で守られた幅広の平坦な遊歩道を歩いていきます。遊歩道はどこもフラットに整備が行き届き、小さな子供でもとても歩きやすいのです。

途中には「牛の塩くれ場」のようなポイントもあり立ち寄りながら歩いていきます。

霧が発生すると鐘を鳴らし登山者に位置を知らせる避難塔としてつくられた高原のシンボル「美しの塔」。どこまでもさえぎるもののない大パノラマが広がります。冷涼な空気にやわらかな曲線を描く鉄平石の塔には、詩人尾崎喜八が、この大自然の織りなす景色に感激して詠んだ詩が刻まれています。

『登りついて不意にひらけた眼前の風景に しばらくは世界の天井が抜けたかと思う。やがて一歩を踏み込んで岩にまたがりながら 此の高さにおける此の広がりの把握に尚もくるしむ。無制限な おおどかな 荒っぽくて 新鮮な 此の風景の情緒はただ身にしみるように本原的で 尋常の尺度にはまるで桁が外れている』 (尾崎喜八 美ヶ原熔岩台地)しばし腰をおろして同じ想いに心を重ねてみるのもいいでしょう。

王ヶ頭ホテルから約3km、50分ほどでビーナスライン側の山本小屋に到着です。体力のある人はここから美ヶ原高原美術館まで足を延ばして見るのもいいですね。今回は戻りの体力も考えて来た道を戻ります。

王ヶ頭ホテルの建つ美ヶ原高原の最高峰「王ヶ頭」(日本百名山 2034m)に辿り着きます。山頂からは西に乗鞍、穂高、槍などの峰々を抱える北アルプス、北には妙高、戸隠など信越国境の山々、東に霊峰富士に八ヶ岳、浅間山、南に目を転じれば、中央、南アルプスと360度の大パノラマが展望できます。深田久弥が著した「日本百名山」のうち41峰までを望めるといい、大パノラマを存分に満喫してください。清々しい空気を満喫し一息入れるのに最適な絶景スポットです。

ここはまた花の宝庫でもあります。6月下旬からは真っ赤なレンゲツツジが高原を染め、夏になれば黄色いニッコウキスゲ、秋にかけてはマツムシソウの可憐な紫色が彩りを添えます。高山植物というと霧ヶ峰や車山高原の方をイメージしがですが、美ヶ原もそれらに負けず200種を越える高原植物が次々と咲く様は圧巻です。写真は王ヶ頭の岩崖に咲くミヤマキンバイです。

王ヶ頭から20分、約1Km程歩くと西方に張りだした尾根の突端「王ヶ鼻」と呼ばれるところに着きます。厚さ数cmの板状の鉄平石が幾層にも重なった「板状節理」という世界的に見ても珍しい地形です。松本市外からその山容が望見でき、垂直に切れ落ちた尾根が良く見えます。「王ヶ頭」と「王ヶ鼻」の由来は、麓の松本から見ると、王ヶ頭が冠を戴いた王の顔、王ヶ鼻がその鼻に見えるからだと言われています。

数体の石仏が置かれた絶壁からの眺めは、眼下に松本平、正面に雄大な北アルプスの展望が楽しめます。張り巡らされた注連縄の中には、古びた石像や石碑が立っていて、この石仏は木曽の「御嶽信仰」に由来し、御嶽山の方向を向いているとのことです。この山頂は古くからの信仰の中に生きているようです。

映画『神様のカルテ2』の冒頭で桜井翔演じる一止が宮崎あおいのハルに連れられて、まだ雪残る美ケ原に登り、美ヶ原高原・王ヶ頭ホテルからスノーシューで王ヶ鼻に向かう冒頭シーンを思い浮かべてしまいますね。このシーンの撮影には王ヶ頭ホテルの支配人の協力があったとのことです。

歩き疲れた身体を癒すにはやはり温泉でしょう。美ヶ原周辺には絶景で効能豊かな温泉が数多くあります。美ヶ原高原の最高地点・王ヶ頭の頂上、電波塔と並んで建つ一軒宿「王ヶ頭ホテル」は、山頂の宿とは思えない充実の設備です。特に浴場全体に檜の香りが充ち溢れる露天風呂は、目の前には遮るもののない日本アルプスのパノラマビューがあります。朝は湯けむり越しに見える雲海の彼方に登るご来光が湯船を染め上げていき、夜は今にもこぼれてきそうな満天の星を眺めながらの入浴が格別です。

また高原を一望するテラスとお洒落なカフェスペースの日帰りカフェ2034では、王ヶ頭ホテルオリジナルカレーやシチュー、パティシエ手作りのオリジナルケーキやプリン、人気のソフトクリームなどが楽しめます。

テラス席で夏期限定の夏みかんプリンをいただきます。

帰路、美ケ原の麓、曲がりくねった道を進むと姿を現し、武石地域の豊かな森とイワナやサンショウウオが棲む、清流・小沢根川のせせらぎに包まれた標高1000mの一軒宿が「岳の湯温泉 雲渓荘」です。

江戸・元禄年間(1688~1704)から地元の人々に、胃腸病に効き、身体がよく温まる湯、脳の働きをよくする名湯ととして親しまれてきました。昭和52年(1977)に旧武石村営の温泉宿泊施設としてオープンし、以来日帰り入浴もできる名湯として親しまれています。※2025年度で閉鎖予定

信州のまん中に位置する美ヶ原高原は、ビーナスライン沿いの霧ヶ峰や車山高原はもちろん松本や諏訪、上田方面にも足が延ばせるのに便利です。ゆっくりと滞在して、高原の爽やかな空気に包まれてみてください。

 

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