
長野県安曇野市の日本百低山の光城山(標高911.7m)とその北に位置する長峰山(933.5m)は北アルプスを一望できる駅から歩けるトレッキングコースです。光城山は登山道に沿って立ち並ぶ桜が有名で、4月下旬になると車窓からも帯を流したように連なる様を眺められ、花見をしながら登れます。長峰山は、ハングライダーのメッカでもあるように眼下に広がる安曇野の町並みと北アルプスの山々の展望が楽しめます。光城山には神明宮コースや田沢城跡コースなどいくつかのコースがありますが、今回はさくらコース登山口から登ります。JR篠ノ井線田沢駅から長峰荘を経由して明科駅までの約13.5km・約4時間半の行程は、温泉と花見を兼ねた安曇野展望に最高の縦走コースです。
JR篠ノ井線田沢駅がスタート地点です。第一目標の光城山登山口近くの駐車場に車を停めて登る人が多いのですが、駐車場までの途中、住宅地が渋滞することや駐車できなかった時のことを考え、また縦走が目的でもあり公共交通機関を利用することにしました。
JR田沢駅から光城山」登山口までは一般道を2.5km約40分歩きます。JR篠ノ井線の線路脇を歩き、踏切を渡って桜坂団地の住宅街を歩いていくと「光城山登山口」の案内板が現れます。その案内板に従って歩くと駐車場が現れ、その奥に光城山登山口があります。トイレもありますので事前準備はおこたりなく。
光城山は1500本ものソメイヨシノが登山道に沿って山頂まで約1.5km、標高差400mの山の斜面を駆け上がります。麓から山頂に向かって開花していくので、桜色の道がだんだんと上に伸びていくように見え、「登り龍が見える」と言われます。春風に誘われて桜のトンネルをくぐるのが楽しみです。
登り始めは順調、山頂までの登山道には道中、何回も分岐がでてきて「さくらコース」や「アカマツコース」などコースがいつくかありますが、どのコースを使っても必ず本線に合流して山頂まで行けるので安心です。登山道上部で分岐する「アカマツコース」は南側に大きく山裾を巻くような道になっていて、切り開けた安曇野の見晴らしが素晴らしい。
桜の時期は桜の花を見上げながらの登山道「さくらコース」を山頂まで歩いていくので登るのも苦になりません。
汗をぬぐいつつ登るにつれ視界が開けてきます。背後に常に北アルプスを感じながら登っていきます。立ち止まっては振り返りの繰り返しで、なかなか進みませんが、春は樹間からの見通しがよく、桜の木の合間から常念岳が見えます。
登りが終わると急に平らで広い場所に出ます。この場所にはたくさんの桜が植えられて花見ができる場所として有名です。
平らな場所を過ぎると目の前に急な階段が現れ、そこを登り切ると光城山山頂(標高911.7m)です。桜の回廊を抜け山頂に立つと眼前に春の安曇野と残雪の北アルプスの勇姿、眼下にピンクの絨毯が広がるコントラストが美しい。
光城山には、鎌倉時代にこの地に来住した東信の豪族海野氏の一族・海野(光之)六郎幸元という武将によって戦乱の激しくなった戦国時代(十六世紀)に築かれた山城・光城址がわずかに残ります。犀川右岸丘陵上の尾根道南端を固めており、武田氏の松本平侵攻に対しても、兵を配備し籠城したとみられます。川中島の合戦が近づくや天文22年(1553)3月、武田方先鋒による刈谷原城攻めに際し戦わずして落城しました。その後、天正10年(1582)に松本城主となった小笠原貞慶によって修復されたと考えられます。
この海野氏の一族は、そのころ会田、刈谷原、田沢(上の山)、塔ノ原にそれぞれ城を築き、互いにノロシ等を使い連絡しあって栄えていたので、城内の最も高い所でノロシ台のあたりに火の守り神とされる古峯神社が祀られてきました。古峯神社で参拝をすませ、長峰光城山山頂の展望を満喫したら長峰山に向けて出発です。
途中にあるあずまやの方に少しだけ寄り道をすると、北回りコースの下り口付近が開けていて、大パノラマが展開している。長峰山までの道は8割ぐらいがアスファルトで、陽射しに包まれ春風を受けてピクニック気分で歩きます。途中山頂から2km、40分歩いたところに天平の森という施設があります。コテージ、キャンプ場、研修棟、野外イベント広場などさまざまなアクティビティの受け皿を持ち、展望食堂・BBQハウス・展望風呂といった機能を有する長峰山森林体験交流センターです。天平の森からは10分ほどで長峰山山頂に到着します。
三叉路から蝶の森への山道に入り、平坦な尾根道を長峰山へ。
最後は緩やかに登って駐車場を横目に進むと、長峰山山頂部(標高933m)です。大きな展望塔とモニュメントが圧巻です。
安曇野の東に位置し、犀川、高瀬川、穂高川の三川合流の地を眼下に見下ろす長峰山は、昭和45年(1970)、作家の川端康成・井上靖と日本画家の東山魁夷が一同に会し、峻嶮な北アルプス連峰と山懐に広がる緑豊かな田園地帯「安曇野」の景色に感銘し「残したい静けさ・美しさ」と絶賛しました。
「槍や穂高は隠れて見えぬ 見えぬ辺りが槍穂高 槍で別れて、梓と高瀬、めぐり合うのが押野崎」と安曇節に歌われている様に幾筋もの川が明科の地でひとつになり善光寺平へと流れ下るのがわかる。北アルプスが一望できる絶好のビューポイントで、展望台前の広はハングライダーの基地として利用されています。
大パノラマを満喫しながら休憩した後は、名残惜しくも山頂を後にして下ります。
長峰荘に下るコースは、所々急な箇所に気を付けながら、伐採地を経て約1.8km、1時間ほどで長峰荘に到着します。昭和レトロをテーマに「タイムトラベラーの湯屋」を謳う長峰荘の自慢は、北アルプスの雄大なパノラマを見渡す絶景の露天風呂。泉質はラジウム温泉で「万病の湯」と言われる無色無臭の温泉です。
明科駅までは3.0km約50分の距離。旧中山道(上海道)を歩いて向かいます。道端には道祖伸や庚申塚といった安曇野らしい風景に出合えます。
山頂から明科駅方面に下るコースは、東信の豪族海野氏の一族・塔ノ原氏の山城塔ノ原城跡や伝説に登場する巨人「でいらぼっちゃ」がどっこいしょと座った跡が水溜まりになったといわれる金玉池を経由して雲龍寺から明科駅へと向かうコースもあります。