
明治16年(1833)に石川県から分県し誕生した富山県。日本海に面し本州の中央北部に位置し東南西を山に囲まれ、北は海に面する半盆地形の地形の中に、富山平野が広がっています。富山市は富山県のほぼ中央から南東部分までを占め、北には富山湾、東には立山連峰、西には丘陵・山村地帯が連なり、南は豊かな田園風景や森林が広がっています。富山市が進める「ガラスの街角づくり事業」は、300年以上の伝統を受け継ぐ「富山の売薬」に由来します。明治・大正期に薬を入れるガラス瓶の製造が盛んであった富山には、戦前富山駅を中心に溶解炉を持つガラス工場が10社以上あったといいます。戦争やプラスチック容器の登場でガラス生産は下火となりましたが、高いガラス加工技術を持つ職人を多く抱えていた富山市は、ガラスのアートや実用品としてのガラス産業の振興を図ることに努めました。
富山市をめぐるには富山地方鉄道市内電車が便利です。富山駅を中心に、富山市の南北や富山大学のある西部を結び市民の身近な移動手段として定着しています。5分から15分間隔で運行され、「一日フリーきっぷ」は観光客にも便利です。公共交通を軸としたコンパクトな町づくりを目指す富山市は、2006年、JRから引き継いだ富山港線を日本初の本格的LRTとして整備、09年には市中心部に環状線が開通、さらに20年に南北の路線がつながるなど、着実に路面電車の整備を進めてきました。富山駅から路面電車で環状線のグランドプラザ前または南富山駅前行き西町電停で下車し徒歩2分、氷の岩脈のようなひと際目立つ外観の建造物が目の前の迫ってきます。
「ガラスの街とやま」の発信拠点となる美術館「富山市ガラス美術館」や富山市立図書館などが入居する複合施設が「TOYAMAキラリ」です。世界的な建築家、隈研吾氏が設計を手掛けた建物は、キラキラ輝く立山連峰のような外観そのものがアート。地下1階、地上10階からなる高さ約57mの建物の外観は、御影石、ガラス、アルミの3種類の異なる素材の細長いパネルを組み合わせ、表情豊かな立山連峰を彷彿させる外観となっています。
面白いのは、その外観からは想像できない館内の雰囲気。2階から6階までは四角い木枠を回転させながら積み上げたような「スパイラルボイド」と呼ばれる中央を貫く大胆な内部の吹き抜け構造になっています。斜めに大きな光の筒が貫いたような形状で、周囲には県産材の杉板ルーパー(羽板)やガラス、鏡が並び、天窓からの光とともに明るく開放的な空間を創出しています。
2階から5階が現代ガラス作品を中心とした企画展や富山市が所蔵する現代ガラス美術作品を展示するコレクション展をはじめ、展示室の壁面に富山ゆかりの作家の作品を展示する「グラス・アート・パサージュ」などさまざまな表現方法を用いたガラスアートの魅力に触れることができます。
6階では、現代ガラス美術に特化し、世界にも強力な発信力を持つ作品を展示するという趣旨から、現代ガラス美術の巨匠である米国出身のデイル・チフーリ氏の工房が制作したインスタレーション(空間芸術)作品5点を常設展示する「グラス・アート・ガーデン」が楽しめます。
チフーリ氏の作品はカラフルな色の組み合わせと流動的な形が特徴です。その鮮やかな色合いと斬新なデザインの代表的なシリーズの中でも、富山でしか見られないインスタレーションを見ることができます。
2階では、慶応元年(1865)創業の金沢の老舗“麩専門店「加賀屋不室屋4+」がプロドュースする和カフェ「不室屋」の味を堪能できます。麩を現代の感覚に合わせてアレンジしたランチやスイーツを提供していて、一風変わった日本の伝統食が味わえます。
北陸新幹線開業でますます進化する富山駅前に新しいランドマークとして商業施設・MAROOTがオープン。富山の暮らしに必要な衣・食・住のショップが揃う他、ここでしか買えない日本酒やおつまみ、海鮮丼などの店舗があり注目の施設です。なかでも「バール・デ・美富味(みとみ)」は幅広い層に日本酒のファンになってもらいたいという思いで誕生したお店。印象的なのは、カウンターの奥にある25本のタップ。蔵出しの生酒をタップから注ぎ提供しています。バルメニューに加え、富山の人気店の名匠がプロドュースするお酒の合う美食、酒粕スイーツなどフードメニューも充実。日本酒との新しいペアリングが楽しめます。