
歴史の足跡が数多く残る信州の中でも、とりわけ情緒のある北国街道。江戸時代に整備された脇往還で、主に中山道の追分宿から善光寺を経由し、新潟県の直江津まで結んだ道です。参勤交代や善光寺参り、佐渡の金山などを運ぶルートとして栄えました。江戸時代多くの人や物が行き来したというこの街道は、当時のままにたたずむしっとりとした町並みが懐かしさを漂わせています。信州上田市柳町は、北国街道の宿場町「上田宿」として賑わった町で、江戸時代には旅籠や商家が軒を連ね、呉服屋だけでも25軒ほどあったといいます。今でも蛭沢川が流れ、長い歴史を感じさせる蔵造りの建物や格子戸の家が建ち並び風情のある場所です。200mほどの通りには江戸時代に創業された造り酒屋をはじめ味噌蔵や古民家を再生させたパンの人気店、町家のカフェなど、情緒にあふれた魅力的な店が点在しています。映画のロケ地としてもよく使われる石畳敷きの情緒ある「柳町」に馴染んで佇むお気に入りスポットでほっと一息いかがですか。
真田昌幸による上田築城以来、城下町として栄えてきた信州上田市。その上田市街地に位置する北国街道の宿場のひとつが上田宿「柳町」です。北国街道に沿った町人町として、江戸時代には、上田紬などの商店や旅籠、休み茶屋でにぎわい、呉服家だけでも25軒程あったといいます。明治から大正には養蚕・製糸業で潤いました。蛭沢川が流れ、土蔵や石垣、格子戸のある家が立ち並び、モダンと伝統が織り成す素敵な風情ある街並みです。特徴的なのは卯建が設けられていることで城下の商人町として栄えた頃の面影を残しています。ここで見られる卯建は「袖卯建」といって二階の妻部に瓦を葺いた小壁が付き出しています。映画「犬神家の一族」等のワンシーンに飛び込んだ気分で散策できるスポットで、町家をリノベーションしたカフェやショップを巡るのがおすすめです。
通りの一番北にあるのが「菱屋」。昭和5年(1930)創業の武田味噌の直営ショップです。一時は卸のみの扱いでしたが、北国街道にある柳町の道路改装を機に小売部門の復活となりました。定番商品から業務用、贈答用におかず用の味が付いた味噌や白みそ、赤みそ、半熟仕込み味噌など、用途に合わせてお好みの味噌が選べます。おすすめは、100gからの量り売りで好きな量だけ買える武田みその一番の人気商品「寒仕込」です。一年中で一番寒い大寒に仕込んだ味噌で限定生産のためこの店だけの限定販売となっています。味噌を美しく盛り込んだ樽から漂うやさしく甘い匂いに心も身体も和みます。
柳の木が多いことから名付けられた柳町、その町のシンボルが「保命水」が菱屋のある四辻ななめ向かいにあります。北国街道を行き交う人々の喉を潤してきた海禅寺(上田城の鬼門避け寺)境内に湧き出る清水を、明治14年に引いたもので、上田市の上水道ができるまで市民の飲料水としての役割を果たしていました。今でも長寿の水としてお茶などに利用されています。
その保命水が店を流れているのが古民家を再生したそばの名店「手打百藝 おお西」。純白の更科そばをはじめ、主の大西さんが生み出した「発芽そば」が人気のお店です。発芽させたそばの実を使うことで、もっちりとした食感、コシそして発芽期の糖化酵素が独特の甘みを生み、栄養価の高い究極の健康食になっています。
おお西の向かいに明治9年に建てられた元呉服屋-その後簡易郵便局になった建物を使った喫茶店「森文」があります。「卯建」の上がる建物は幕末期の建主の心意気です。こじんまりとした店内には、古いオーディオからジャズが流れています。先代から受け継いだ家伝の「強飯膳」が人気で、昆布や鰹節のダシと旬の素材がよくなじんで、おふくろの味を思い起こさせるおいしさです。手作りのケーキは6種類ほど揃い、酸味と苦味のバランスが絶妙なニューギニアブルーマウンテンのコーヒーがよく合います。
毎日食べられるシンプルなパンがおいしいお店「Levain」。ルヴァンとはフランス語で天然酵母の意味。東京・代々木八幡に本店を構える無添加・天然酵母パンの草分け的存在の名店です。古民家を再生させた店内では、深い色をした重厚な梁と柱が静かに存在感を発揮し、ほの暗い空間にパンの香ばしい香りが広がっています。カンパーニュやライ麦パン、バゲットといったハード系パンのほかにも、旬の野菜を使った季節感のあるパンやスコーン、クッキーなども並びます。また木製のトレイに並ぶパンもひとつひとつに存在感があります。
毎朝、石臼で挽いた国産小麦粉と長野の自家製の天然酵母、そして自然塩を使用して焼き上げるフランスの田舎風パンは、ぜひ何もつけずに奥行きのある美味しさを味わってみてください。ほどよい酸味と甘味があって、口にほうばると幸せな気分になります。食べきれるようにとグラム売りされているのでいろいろな種類のパンを自分に必要な分だけ買うことができますよ。2階は畳敷きの簡易カフェになっていて、ワンドリンクとともに利用でき、ひと休みするのにちょうどいいです。
江戸時代からの創業当時そのままに補修しながら保存してきたという風格ある木造の建物が特徴の酒蔵が「岡崎酒造」。寛文5年(1665)から、菅平水系の水を使い、昔ながらの手法を守り手間暇かけて酒造りをおこなってきた老舗の造り酒屋です。全国で珍しい女性杜氏が醸す蔵で代表銘柄は「亀齢(きれい)」、洗米全量手洗いから槽しぼりまで手造りにこだわり丁寧な酒造りをしています。清酒仕込みの梅酒や梅の甘露煮、地酒ケーキ等のお土産も売っています。
通りに面した蔵の一部を改装したアンテナショップでは、無料で5種類ほどのお酒が自由にプラスチックの小さなコップを使って試飲ができます。信州亀齢シリーズは、米の品種や精米歩合による味の違いを楽しめるシリーズです。ひとごこち純米酒は透明度が高く、後味のきれいさが秀逸で、美山錦純米吟醸生は吟醸香と品のあるきれいな旨みがうまく調和しています。是非信州地酒のお土産に一本いかがですか。
上田市のお隣東御市にある日本一小さなワイナリー「はすみふぁーむ」の直営アンテナショップ「はすみふぁーむ&ワイナリーShop&Cafe」があります。一階では、はすみふぁーむのワイン各種、ジュース、ジャムなどを購入できるのはもちろん、ワイン樽を利用した3卓のテイスティングテーブルが設置されていて、スタンディング・スタイルでの有料のテイスティング・カフェとしても利用できます。シードルやナイアガラドライ、メルローなどが一杯300円で味わえます。
ここでのおすすめは2階のカフェルームでのイタリアンとフレンチに精通したシェフによるワンプレートランチ1000円です。一皿の中にこの日は、大根とお米のポタージュスープから右回りに地元産の新鮮野菜サラダ、はすみふぁーむがあるお隣東御市にある「アトリエ・ド・フロマージュ」のチーズ、赤ワインの澱に漬けられた信州福味鶏胸肉のハム赤ワイン風味、キャベツとクスクスのマリネ、ピクルス、信州太郎ぽーくスネ肉とりんごのシードル煮、5種のきのこが入ったキッシュ、そして自家製信州ミルクパンです。是非シードルとのマリアージュを楽しんでみてください。ミルクパンは一個だけおかわりができますよ。
上田市街の上田原に本店がある「餅屋伝助」の柳町店。蔵造りのお店は昔の休み茶屋のイメージです。ふっくらとした弾力が持ち味の餅の生地には、地元塩田産のコシヒカリが使われています。せいろで炊いたコシヒカリ米をつぶして作る伝助独自製法のお餅です。ご飯を杵でついて作られた餅には自然と甘さと風味が残り、もち米の餅よりあっさり歯切れがよく、時間が経っても固くならないので翌日も柔らかです。クセになる食感です。※閉店・上田原の本店で営業中
手でつつけば、ぴょこんと今にも飛び跳ね出しそうな、可愛らしい一番人気の「うさぎ餅」は、まるで赤ちゃんのほっぺたのように柔らかい餅の中には、これまたとろけそうなカスタードクリームが入っています。微笑ましい姿と飽きのこないおいしさは、ひと口で食べてしまうのがもったいないほどです。カスタード、チョコのほか抹茶うさぎ餅チーズつぶあんの欧風3種のクリームを包んでいて、コシがあるのにやわらかい食感です。そのほかみたらしやくるみだれといった10種類の団子や季節の和菓子もオススメです。
まち散策は思いがけないところでお洒落なカフェやショップに出会える楽しみがあります。信州の北国街道宿場町にはお隣東御市に「海野宿」もあり、ひと足のばしてみてはいかがでしょう。宿場町を歩く旅は、日常の世界を忘れさせてくれる癒しの旅でもあります。
「北国街道・海野宿の家並みに漂う旅籠と養蚕の残り香を訪ねる」はこちらhttps://wakuwakutrip.com/archives/16411