
雪で長野も信州らしい景色に染められており、そうならばと信州の冬ならではの楽しみを求めて北信州山ノ内町に向かうことにします。冬季、野生のニホンザルが温泉に入るのを見ることできると、今やミシュランガイドにも掲載されている世界の「SNOW MONKEY」地獄谷野猿公苑のお猿の温泉です。標高850m、一年の約3分の1が雪に覆われる環境の中、崖に囲まれ、噴煙が煙を上げる光景から「地獄谷」と呼ばれています。野生のサルにはそれが地獄どころか楽園のようで、施設で与えられるエサを求めて山を下りてくるくるため、自然の生態を観察できます。露天風呂に浸かるサルを見られることが多いのは、寒さが厳しい雪の日、そんな日を選んでこの場所を訪れるのは大変ですが、苦労して歩いてたどり着いた末のスノーモンキーとの出会いは格別です。寒さや雪対策をしっかりして会いにいきます。
電車で行くなら長野駅から長野電鉄「SNOW MONKEY号」に乗って終点湯田中駅下車、長電バス上林温泉行きで約15分、終点下車で徒歩35分です。
車利用の場合、長野市内から高速で長野道を信州中野ICで降り、R292バイパス(オリンピック道路)を走って上林温泉の駐車場に車をおく(台数は少ない)。夏場は渋温泉の先の駐車場から歩いて15分程度なのだが、冬季は通行止めになることから上林温泉街に車を停めてゆみち遊歩道と言われる杉林の中の雪の小径1.6kmを約25分程度歩くことになります。
上林温泉入口から地獄谷野猿公苑に向かう途中にあるテイクアウトもできるカフェが「猿座(ENZA)カフェ」。ここ数年で急速に増えた外国人観光客の受け入れ体制の整備の一環として荷物預かり、防寒レンタル・販売等、各種機能を併せもったカフェダイニングなのです。ここにいれば世界各国の人々と出会えると言えるぐらいスノーモンキーの姿を見るのを楽しみに集う世界中の人たちが必ず立ち寄る定番スポットです。スペースは和と洋にわけてあり、入口すぐの床がフローリングのお洒落なテーブル席でのカフェスタイルと奥には小上がりもある座席スタイルがあり、国籍を越えて、人が集い、食を楽しむ高原カフェで、いつもと違うカフェ時間を過ごしてみるのはいかがですか。
看板メニューの「鶏白湯ラーメン」や「高原野菜を使った寿司ロール」は、ミシュラン掲載店で活躍したラーメンシェフと寿司職人が腕をふるう本格派の一品。メニューも英語表記になっていて異国情緒満点です。食事メニューでは、オーソドックスな「鶏白湯ラーメン」がおすすめ。スープはこってりとしたコラーゲンたっぷりの鶏ガラ+魚介系でそれぞれの旨味が楽しめるあっさり味です。そこに中太縮れ麺が絡みスープとの相性抜群の一杯に仕上がっています。外国の方も美味しそうにラーメンをすすっていますよ。
もちろん冬の雪の季節、寒い雪道を歩いたところで「ほっ!」と一息できる「猿座カフェ」でのあったかいコーヒーの一杯は、まさに地獄に仏ですね。
上林温泉から志賀高原の竜王山(標高1900m)に源を発する横湯川沿いを歩くこと30分、突然視界が広がり、川べりに建つ木造の温泉宿にたどり着く。地獄谷後楽館は、江戸時代末期創業。横湯川の渓流沿いに立つ鄙びた趣の一軒宿で文化人に愛されてきた宿でもる。昭和8年(1933)、“囲碁の神様”と尊敬された木谷實と呉清源が逗留し、新布石法を発案したり、そのものずばり木谷や呉清源をモデルにした小説『名人』を書いた川端康成をはじめ、夏目漱石、斎藤茂吉、棟方志功など、訪れた文人墨客は数えきれない。松谷みよ子が児童文学の名作を執筆した客室「龍の子太郎の間」も残る。玄関前には2003年に建てられた「新布石発祥の地」の石碑があります。
川の向かいには、轟音とともに熱湯が噴き上げる天然記念物の「渋の地獄谷噴泉」という間欠泉があり、常に10から20mのしぶきを噴き上げている。ここが地獄谷温泉です。
野猿たちが集う野猿公苑は地獄谷温泉の一軒宿・「後楽館」の向かいの階段を上がった先にある。
「地獄谷野猿公苑」は野猿に餌付けをして、誰もが気軽に野猿を観察できるようにと昭和39年(1964)に開苑して以来世界で唯一、温泉に入る猿の姿はもちろん、猿たちの息遣いさえ聞こえそうな距離で、自然の中で暮らすニホンザルの興味深い生態を観察できる数少ないスポットだ。多くの写真家や研究者も訪れ、広く世界中の人々から愛されている。ありのままの猿の姿を見てもらうため、野猿公苑ではイベントなど催しものは一切行っていないこそ貴重な場面を目の当たりにすることが出来るのである。白銀の世界にひっそりと身を置きながら、野生動物の姿、自然の息遣いを感じるのもいい。実際見かける人は外国人ばかりで多分日本で一番外人密度の高い場所ではないだろうかと考えてしまう。
急峻な崖と、いたるところから立ち上る温泉の湯気、そのような光景を見た昔の人々はこの地を「地獄谷」と呼んだのだが、サルたちにとっては楽園の地なのであろう。寒さや飢えをしのぐため山を降りてやって来るサルの群れが、頭の上に雪を乗せじっと温泉に入る猿の姿は世界的にも珍しい。湯には真っ赤な顔をした猿が、気持ちよさそうに浸かっているその風景は、何度見ても一種不思議で、しかし心なごむ風景である。
うとうとと目を閉じ、気持ち良さそうに温泉に入る姿を見てしまえば、自分も温泉に浸かりたくなるもの。元来た道を戻り「後楽館」への橋を渡る。日帰り入浴ができるのは男女それぞれの内風呂と、混浴の露天風呂で、受付を済まして狭い木の階段を下ったところに浴室がある。内風呂は高い天井が特徴で、天井近くにある窓から差し込む日光が、立ち上る湯気に反射し、幻想的な雰囲気を醸し出す。しかしながらここでも先着は外人さん二人。浴槽も3人はいればいっぱいです。
お目当ての露天風呂につかろうと外に出ると、毛繕いする2匹の猿に出くわした。人間に慣れているのか気にかける様子もない。運が良ければ、猿と混浴することもできるとか・・・。しかしまだ入浴時間が始まったばかりでお湯がまだ張れていなく、それも熱いということでそくそくと内風呂に戻ることになったのである。源泉は約50M離れた川沿いの岩間から湧き出ていて、温度は80℃近くにもなり、水を出しっぱなしにして湯温を調整している。泉質は弱アルカリ性でナトリウムやカルシウムを多く含み、神経痛、リウマチなどに効果があるとか。
名物はもち米をクマザサの葉に包み温泉で煮た「ちまき」で、甘いきな粉で食べるのである。5個入りで700円。もちっとした小ぶりのちまきできな粉との相性はよかった。
また地獄谷を降りたところにある志賀高原の山裾に佇む静かな温泉地・上林温泉は古くから文人や墨客たちに愛されてきた里として、その雰囲気を漂わせる数々の施設が並ぶ。文化人が滞在した大正ロマンあふれる旅館、老舗旅館・塵表閣の中にある文化人のゆかりの品が並ぶ展示館「円実」や郷土の芸術家の作品から現代美術まで楽しめる「志賀高原ロマン美術館」など、日本の文化と芸術にじっくり触れることが出来る。
山ノ内町上林温泉入口にあるのが1998年の長野冬季オリンピックの開催を記念して、その前年の1997年にオープンした「志賀高原ロマン美術館」。地獄谷野猿公苑、上林温泉の入口にある建物は、1960年代より“共生の思想”を唱え、自然との共生に重点を置いた建築を数多く手掛ける世界的な建築家・黒川紀章氏による設計です。「自然との共生」をテーマに周囲の杉林や太陽の動きといった志賀高原の自然と文化に見事に調和し、展示ケースやドアノブに至るまで細部にわたり綿密に計算されています。
エントランスホールは土蔵をイメージするかのようにスーッと立ちあがったコンクリート打ちっ放しの流れるような湾曲した壁面と、晴れていれば光を反射する壁のチタンチップがとても印象的です。ロマンをキーワードにガラス工芸品などを展示しています。円錐型のクリスタルテラスでは冬季は喫茶のみ、その他はランチも楽しめます。
館内に入ると、まず天井から差し込む日の光が織りなす筋状の陰影が目に飛び込んできます。天空を抜ける光とゆらめく影に誘導されながら奥へ進むと、そこは一転、闇の空間。そこには黒川氏によりスギをイメージしてデザインされたという円錐形のガラスのショーケースが、ほのかに中空に浮かび上がる吹き抜けの展示室にでます。楕円形の高い天窓から差し込む光により、暗闇の底から浮上していく感覚を味わいます。その中に現代ガラス作家・吉本由美子氏の「ガラスの天使」たちは、一体ずつ天使が輝いているのです。しばらくすると楕円形のトップライトの光で次第に目が慣れてきますが、このドラスティックな展開が、作品の魅力を高めているようです。
外国人観光客から『サムライルート』と言われる観光ルートの長野の起点となる地獄谷野猿公苑の入口でもある志賀高原の麓、山ノ内町には、古くから夏目漱石や志賀直哉、与謝野晶子など文化人が好んで訪れ、その足跡を残しています。ロマン美術館以外にも、実業家・渋沢栄一の孫の邸宅を移築した洋風木造建築の「志賀山文庫」には、志賀高原を愛した文化人約150人の貴重な資料が収蔵されています。また日本屈指の豪雪地帯・新潟県東頸城群松之山町で150年以上の長い歴史を積み重ねてきた民家「豪農の家」を移築、復元した民族資料館「豪雪の館」では、贅を尽くしたという当時の豪農の暮らしぶりが垣間見られます。