日本ワイン発祥の地を持つ新潟県。清らかな水が米どころ新潟を支えているように、豊かな土壌を持つこの地で育つブドウが芳醇なワインを創り出しています。新潟市の中心街から日本海沿いに南西へ約20km、日本海から内陸に入ることわずか1kmほどの標高480mの角田山のふもと、「角田浜」に垣根栽培のブドウ畑が広がっています。新潟市西蒲区の一角にあるこの地域は、今「新潟ワインコースト」と呼ばれ、日本ワインの新たな名醸地として注目されています。海と砂が育む新潟ならではの個性あふれるワインを是非味わってみたく電車とバスを乗り継いででかけます。
2022年秋のJR東日本「大人の休日倶楽部」新潟ワイナリー篇で吉永小百合さんがカーブドッチワイナリーを訪れて“海と砂に囲まれた新潟の地に本物のワイナリーを。「地面すべて海と同じようなサラサラの砂なんですね」「サドルという赤ワインでフランス語で砂という意味ですね」誰もやらなかった挑戦がここでしかだせない味わいになっていました。”と赤ワインで乾杯しています。
青春18きっぷを使い始発5:10に長野駅を出発し越後川口経由で長岡駅に9:17着、JR越後線乗り換えで巻駅に11:11到着します。駅前の郵便局前にあるバス停「巻駅前」から11:17発「にしかん観光周遊ぐる~んバス」に乗り込みます。社内でフリーパス500円を購入。
国道402号を走っていると大きな看板が目に飛び込んできます。新潟には現在約10のワイナリーが点在していますが、その中でも「新潟ワインコースト」の愛称で親しまれている新潟市の西海岸エリアの一角にある「角田浜」には、アメリカのナパ・ヴァレーをモデルにして平成4年(1992)の創業時から世界標準のワイン造りと地域観光の活性化に取り組む「カーブドッチワイナリー」を中心に、カーブドッチのワイナリー経営塾から育った「フェルミエ」「ドメーヌ・ショオ」「カンティーナ・ジーオセット」「ルサンクワイナリー」の4つの個性あふれるワイナリーが集まり、切磋琢磨しながら美味しいワインづくりに励んでいます。ワイナリーを中心に飲食店や温泉、ホテルなど魅力あふれる施設が集まり、ワイン蔵巡りが楽しめます。「カーブドッチワイナリー」バス停に11:33到着です。
ボルドーの特級畑がビスケー湾(大西洋)とジロンド河に挟まれていることに対して、角田浜は日本海と信濃川に挟まれています。水面が近いのは、昼には海風が、夜には陸風が吹き、急激な気温の低下を防ぎ、ブドウの大敵である湿気を払って苗を晩霜から守ってくれるのです。角田山麓に広がるこの一帯は新潟砂丘の一部で、土壌が砂地なので栄養素が少なく水はけがいいので、ブドウの品種そのものの味や香りがワインに出やすいのが特徴です。手入れの行き届いた垣根式のブドウ畑の先には角田山が横たわり、のどかな景観が広がります。
新潟ワインコーストの先駆者である「カーブドッチ・ワイナリー」が、創設したのは平成4年(1992)のこと。カーブドッチとはフランス語で「落(経営者)の貯蔵庫(カーブ)」という意味です。角田山の麓に広がる砂地の畑にブドウを植え、作付け面積も年々拡大して、当初1haだったブドウ畑も今では8haの自社畑で約20種類のブドウを栽培しています。
ワイナリーを格に、敷地内にはガーデンレストランやカフェをはじめベーカリー工房やソーセージ工房のほか、宿泊施設のヴィネスパやウェディングホールも併設されています。レストランやホールを結ぶ庭はグリーンの芝生が美しいイングリッシュガーデンになっていて、どこか日本離れした空気感が漂うワインを泊りがけで楽しめるワイナリーリゾートなのです。
カーブドッチエリアのレジャーの拠点になっているのが「コテアコテマルシェ&カフェ」。カフェ&マルシェ機能を持ち、マルシェでは「新潟ワインコースト」加入5ワイナリーのワイン販売をはじめ、自家製パン、ハム・ソーセージ、燻製、ビールにとどまらず、ガーデン用品、インテリア雑貨まで販売しています。
おすすめは「コテアコテカフェ」でいただけるランチプレートです。
セルフサービスですが、自家製のソーセーに自家製のパン、自家製サラダ、スープとドリンクもついて1500円はカーブドッチの食を一挙にいただけますよ。ワインは別料金ですが飲むこともできます。
地元新潟県出身の元証券マンのオーナーが、カーブドッチの「ワイナリー経営塾」を受講し、平成18年(2006)、塾卒で初めて角田浜に0.4haのブドウ畑からワイナリー経営を始めたのが、フランス語で“農場で作られた”という意味の「フェルミエ」です。グリーンのブドウ畑と青い空に似合うオレンジ色の屋根が印象的で、フランス田舎の建物をイメージしたものです。バラやハーブが揺れる枕木のアプローチを進んで扉を開けます。
栽培している2品種は日本食との相性から選んだカベルネ・フランとカーブドッチと同じように砂質土壌の可能性を見出し、アルバリーニョを栽培しています。アルバリーニョはスペインで「海のワイン」と称され、イベリア半島北西部スペインガリシア州のリアスバイシャス地方で栽培される白ブドウ種の中で最も高貴といわれます。標高や気候、年間降水量、年平均気温も角田浜の風土と近く、砂質土壌の畑で育てることで海を臨む畑のワインはくっきりとした酸味が特徴でさわやか、内陸寄りの棚栽培の畑のものは、酸味が丸く膨らみのある味わいのワインに仕上がります。
試飲はカウンターに並んでいるワインを一杯400円~でできますが、おすすめはやはり“アリバリーニョ”で「アルバリーニョ スタンダード(ノンバリック)」はグレープフルーツや白桃のようなフレッシュでフルーティな味わい。一方「アルバリーニョ マセラシオン」は果皮ごと醸し発酵、果皮の香りを生かしたアロマティックなワインでどちらもくっきりした酸が特徴です。そして「アルバリーニョ エルマール」は試飲価格も1000円ですがステレスタンクで低温発酵させた蔵を代表する銘柄でアルバニーニョの全てが凝縮されています。
ワインショップや試飲カウンターを併設するレストランでは、新潟の素材を使った本格的なフレンチが食べられます。古民家の柱や梁を用いた明るく開放的な空間の店内から、ブドウ畑を見ながらワインと食事が楽しめます。
カーブドッチのワイナリー経営塾を経て、平成23年(2011)、角田浜で3番目にワイナリーをオープンしたのが「ドメーヌ・ショオ」です。ドメーヌとはフランス語でブルゴーニュ地方に於けるワインの醸造所のこと、ショオは醸造家兼オーナー夫妻の小林さんの名前の“小”から名付けられました。またフランス語のショオには「熱い」や「情熱的」という意味もあります。ワイナリーの目前にブドウ畑が広がり、赤い屋根が顔を出しています。
香りはやさしく、気持ちよく、「ダシ感」のある味を大切にしているとのことで、あえてラベルには品種の表示がなされていません。写真左が、通称ネコといわれる「アイム クロッシング ユー インスタイルサムディ」で、しっかりとした酸と複雑な旨味があり、濃くてキレのある楽しいワインです。右が通称カエルといわれる「サンキュー ソーマッチ フォー インコォリッジ ミー」でふくよかな果実味と伸びのある旨味、清涼感のある香りと土系の香りが落ち着いた味わいを出しています。試飲は驚きの一杯100円ですよ。
フランスのボルドーを彷彿させるブドウ好適地の角田浜に平成25年(2011)、4番目に創業したのが、イタリア語で「セトおじさんのワイン蔵」の意味を持つ「カンティーナ・ジーオセット」です。イタリアワイン好きで東京から移住した元広告代理店マンが経営するエリアの中でもイタリア品種に特化した個性的なワイナリーです。ブドウ畑の緑にスコットランドのオーベルジュをイメージして設計されたヨーロッパ風の白を基調としたトリコロールカラーの瀟洒な建物が目をひくワイナリーです。
1haの自社畑に植えられた栽培品種は欧州系のワイン専用ブドウを栽培していて、ランブルスコ、バルベーラなど全て赤ワイン用の5種類、国内でほとんど栽培実績のないイタリア・ピエモンテ州の原産品種、ネッビオーロもあります。イタリア原産種で造るワインは日本では珍しいのです。
果実味と酸味にこだわった食事に寄り添うワイン造りを行っています。試飲は無料でブドウ畑に向けて大きく取られた窓際のテーブルに座ってゆっくりと寛いで味わうことができます。
平成27年(2015)10月にオープンした「ルサンクワイナリー」は、新潟ワインコーストで5番目に誕生したワイナリーで「サンク」とはフランス語で数字の5を意味します。中米カリブ海の海岸沿いのリゾート地をイメージして建てられた白壁に赤い屋根の外観が目を引く建物で、青と白の日除けオーニングシートが爽やかな印象を与えています。白を基調とした店内でこれからが楽しみなこだわりのワインが試飲できます。ワイングラス型の照明はオランダ製で素敵です。しかしながらこのワイナリーだけ水曜日が定休日で今回は飲めませんでした。
少し離れた場所に「レスカルゴ」という平成24年(2012)醸造開始のワイナリーがあります。ワイン造りはゆっくり丁寧に歩を止めずに進んでいきたい、ぶどう畑に暮らすカタツムリをイメージして名付けられたワイナリーです。「新潟ワインコースト」とは一線を画しているようです。
ワイナリーを巡ったあとは、温泉で体を癒します。泉質の異なる二つの露天風呂があるワイナリー併設の「カーブドッチヴィネスパ」の日帰り温泉は、未就学児は入場できないので大人の空間として寛げます。角田山・粟ヶ岳・巻機山などの越後山系を望みながら、ゆったりとお湯に浸かります。泉質はアルカリ性単純温泉(pH9)のお湯です。
「カーブドッチヴィネスパ」前のバス停より15:20右回りで巻駅前に戻ります。