山梨・白州の森が育んだのは、森の香りのシングルモルト

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サントリーの創業者、鳥井信治郎が山崎蒸留所を設立したことで始まったジャパニーズウィスキー。それから50年経った昭和48年(1973)、二代目の社長である佐治敬三の時代、南アルプスの山々をくぐり抜けてきた良質の地下天然水が湧く山梨県北杜市に開設されたのが世界でも稀な森の中の蒸溜所「白州蒸溜所」です。2023年10月、50周年を迎えリニューアルオープンしました。刷新された白州蒸留所ツアーに参加し、清々しく、爽快な白州のシングルモルトを、森に包まれながら五感で味わってみてはいかがでしょう。

白州蒸溜所は、山崎蒸留所とは異なる個性のウィスキーを求め、“水の狩人”とも呼ばれた初代チーフブレンダーの大西為雄が理想の水を求めて全国を調査し、数年かけて辿り着いたのがこの白州です。白州とは文字通り、白い洲のこと。甲斐駒ヶ岳の岩肌を流れ落ちる水がふたつの川となって麓につくった扇状地。それが白州で、豊かな森に囲まれたその立地条件から“森の蒸留所”とも呼ばれ、南アルプス甲斐駒ヶ岳のふもと、広大な自然に囲まれた場所で、水や気候などの自然条件だけでなく、発酵槽や蒸留釜など設備の違いから、山崎蒸留所とは個性の異なる原酒を生み出し続けています。

今回予約した「白州蒸溜所ものづくりツアー」は所要時間90分、参加費3000円で、サントリーシングルモルトウィスキー白州が生まれるものづくり現場を見学できるツアーです。中央高速道路小淵沢ICを降りて国道20号で一路東、甲府方面へ20分程。案内標識に導かれるまま白州蒸溜所のゲートをくぐります。

120台ほど停めれる駐車場(無料)に車を停めた先に白州蒸溜所とサントリー天然水南アルプス白州工場の両工場共通の玄関として、エントランスに花崗岩を外壁に採用した「ビジターセンター」が迎えてくれます。場内見学や見学ツアーの受付が設置されているほか、両工場のオリジナルグッズが購入できる「ビジターセンターGift Shop」も併設されています。

受付を済まして外へ。バードブリッジを渡って集合場所であるウイスキー博物館へと進んでいきます。

途中には、森に住む鳥の声を聞くことのできる散策路「バードサンクチュアリ」が整備されています。竣工当時から敷地内に野鳥の保護区が設けられていて、約50種類の鳥を観察できる。鳥の声を聞くことのできる集音機などの造作物も設置されています。

集合時間に余裕があり、地元食材などを活かし、ウイスキーと相性の良い料理を提供する森のレストラン「Hakushu Terrace(ハクシュウ テラス)へ。森を感じる開放的な空間です。

今回のツアーのメインである白州のハイボールとチーズの盛り合わせで乾杯。

見学ツアーの集合場所になっているウイスキー博物館へ。中に入るとたくさん積まれたウイスキーの樽が目にとびこんできます。シングルモルトウイスキー「白州」の歩みや蒸溜所とその環境について紹介され、日本や世界のウイスキーの歴史、ウイスキー文化についての展示もあります。

初期のポットスチルも展示され、日本初の本格ウイスキー「サントリーウイスキー白札」などはこちらの蒸溜器で作られたとのこと。

簡単なレクチャーを受け、木樽発酵槽や形の違う数々の蒸溜釜、樽が並び華やかな香り漂う貯蔵庫など、溢れる臨場感に五感を刺激されながらウイスキーの製造工程をたどる「白州蒸溜所ものづくりツアー」のスタートです。見学ツアーの出だしは“森の蒸溜所”の名に相応しい、木々に覆われた道を通り抜けて蒸溜棟へと入っていきます。

蒸溜棟では、最初にプロジェクションマッピングでウイスキーづくりの工程を解説してくれます。原料となるのは、水と麦芽と酵母。白州蒸溜所では、南アルプスに降った雨が、長い年月をかけて駒ケ岳山系の花崗岩層をくぐり抜け、ミネラルを程よく含んだやわらかで硬度が30mgと低い軟水になった地下天然水を使用。麦芽は二条大麦を適度に発芽させ、内部に酵素を蓄えた大麦麦芽(製麦)とピート(泥炭)で燻したスモーキーフレーバーな麦芽との香りの違いも実際に嗅がせてもらえます。ビートを使った麦芽を一部使用することで『白州』には欠かせないスモーキーな風味が醸しだされる。

仕込過程では、温めた地下天然水と粉砕した大麦麦芽とを共に仕込槽へ。麦芽中の酵素作用でデンプンを糖に変化さます。この工程でできあがった糖化液を「麦汁」と呼び、周囲に甘い香りが漂います。ここで得られる麦汁の味わいが、仕込み水によって決まります。清冽で無垢な水が、「白州」の清楚で軽やかな個性の生みの親なのです。仕込み水は“マザーウオーター”と呼ばれますが、まさにその通りの役割を果たしています。

麦汁を冷まして発酵槽へ。酵母を加えて発酵させます。麦汁の糖がアルコールと炭酸ガスに分解されてできたものを「もろみ」と呼び、アルコール度数約7%です。白州蒸溜所では伝統的な木樽の発酵槽を使っているのが特徴です。メンテナンスが難しい木樽で発酵を行うことで、森の中の蒸溜所に住む乳酸菌が手を貸して“もろみ”は、複雑で厚みのあるクリーミーな味わいが生まれます。

発酵で深みと華やかさをまとって生まれたもろみが、直火加熱のポットスチル(蒸溜釜)へ。直火蒸溜をすることで、トーストフレーバーと呼ばれる独特な香りをまといます。沸点の差を利用し、アルコールの香味を濃縮。2回の蒸溜(初溜・再溜)から「ニューポット」をつくります。生まれたばかりのウイスキーは、アルコール度数65%~70%、無色透明で、大きさや形状の異なるポットスチルを使い分けることで多彩な味わいの原酒が生まれます。

貯蔵庫へはバスで移動します。3分程で到着。無色透明のニューポット(原酒)を木樽に移して貯蔵され、樽の中で熟成の時を過ごします。ウイスキーの熟成に使う樽の大きさや使用経歴、樽材の違いなどでウイスキー原酒の個性が異なります。

ウイスキーは5年、10年、30年と長い眠りの間も、樽の中で冷涼で潤んだ森の空気を呼吸し、琥珀色に色づきながらその味わいを深めます。貯蔵庫の温度や湿度、更には樽を寝かせた場所の違いでさえも個性につながり、同じ熟成年数のウイスキーでも個性が異なってきます。原酒は樽ごとの熟成のピークを迎えるまで、白州の四季の変化の中で時を重ねていくのです。『白州』のうまさは、森の恵みです。

ツアーの最後は再びバスに乗り、セントラルハウスにて、「白州」や希少な非売品のモルトウイスキー原酒のテイスティング、そして白州ハイボールの作り方などを学び、味わうことができます。

試飲会場はセントラルハウス内の「Bar Hakushu」で。

試飲は4種でテイスティングの仕方を学び、味や香りの違いを堪能します。①白州のキーモルトであるライトリーピーテッド原酒ALC.43%。グレープフルーツや青リンゴのような香り、みずみずしく涼やか。口に含むとかすかなスモーキーに、ほのかな甘み、爽やかな後味を感じる。②爽快かつ複雑なスモーキーのピーテッド原酒ALC.50%。軽快で鼻通りの良いスモーキーかつ長い余韻。クッキー、ビスケットのような甘さもある。③甘くフルーティで、香味の総量が豊かなスパニッシュオーク樽原酒ALC.50%。ドライフルーツ、紅茶様、黒砂糖、エスプレッソの香り。甘酸っぱくもありほろ苦い、濃厚でなめらかな味わい。

そして樽で熟成された多様なウイスキー原酒をブレンダーがひとつひとつテイスティングし、配合が決定されて生み出されたたのがシングルモルトウイスキー白州です。色は明るい黄金色、すだちやミントの香り、軽快で爽やかな口あたりでほのかな酸味を感じるすっきりさ。フイニッシュはかすかなスモーキー、ほのかな甘み、すっきりとしたキレを感じます。

最後に「白州 森香るハイボール」の作り方を学び味わいます。①グラスに大きな氷を一杯に入れて冷やします。2ウイスキーを適量注ぎ、よくかきまぜる。③減った氷を足してきりっと冷えたソーダを加える(ウイスキー1:ソーダ3~4)④炭酸ガスが逃げないようにマドラーで、タテ1回まぜます。⑤最後に軽く叩いたミントの葉を入れるとより爽やかです。普段、飲食店や自宅で親しんでいる銘柄とはいえ、つくりの現場で飲むと格別の想いが込み上げてきます。

同じセントラルハウス内には、テイスティングラウンジがあります。設計は帝国ホテル東京の食品売り場「GARGANTUA」の若手建築家・工藤桃子氏。カウンターには樽材を使用し、その背後には周辺の木々を取り囲むようにピクチャーウィンドウを配置。大きなガラス窓のあるラウンジのカウンターに腰をかければ、白州の豊かな森が眼前に広がります。約25種類のウイスキーが味わえ、「白州25年」はストレートで、深いコクを舌でゆっくりと感じ、贅沢な時間を。「白州18年」はロックで、調和された世界を。「白州12年」「白州10年」は、ソーダで割るハイボールがおすすめです。白州を楽しめる三種類のペアリングセット「ハイボール×玄米ポンせんべい」「水割り×こし餡を包んだ蒸しどら焼き」「ストレート×白桃ジャム」がおもしろい。

お土産は白州フルボトルや白州蒸溜所限定ウイスキー等から、いずれかお一人様一日1本限りしか買えませんが白州好き、ウイスキー好きの方には一度は行ってみてほしい観光スポットです。(訪問日を予約しないと入場できないので要注意)

シングルモルトの個性を決めるのは蒸溜所と樽。蒸溜所を取り巻く自然環境は原酒に反映し、樽は熟成に影響する。世界に冠たるシングルモルトのベストセラー『白州』を生む蒸溜所を訪ね、見学ツアーに参加することでまたひとつ、ウイスキーのおもしろさに出会いました。

 

 

 

 

 

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