
車山の噴火による流れ出た溶岩で生まれた霧ヶ峰は、まるでビーナスの曲線のように美しくなだらかな起伏がどこまでも続く。眺めていると空の青と大地の緑とで造り出された油絵のような色彩の風景の中に吸い込まれてしまいそうになります。「車山高原」は7月には黄色いニッコウキスゲが高原一帯を覆い、霧ヶ峰最大の湿原「八島ヶ原湿原」では貴重な高山植物に出会えます。霧ヶ峰高原の花名所へドライブに出かけましょう。
全線が無料化され茅野から蓼科、白樺湖、車山、霧ヶ峰、八島ヶ原湿原、美ヶ原高原と続く全長約75KMのロングドライブが気軽に日帰りドライブで楽しめるようになったビーナスラインは、ゆるやかなカーブがいくつもの高原を突き抜け、天空を駆け抜けるような開放感が得られるドライバーたち憧れのドライブルートで、大自然の中を走るいくつものドライブルートの中で、その眺望の良さ、季節ごとに異なる風景の多彩さで最高の人気を誇ります。
目的地は霧ヶ峰連峰ですので今回は長野から諏訪ICで茅野からのスタートではなく、上田ICで降り大門川沿いの静かな谷あいの東信からの入口となるよだくぼエリアから大門街道(国道152)をゆっくり上ってゆく。古代官道の「七道」のうち「東山道」は、近江の国府を起点とし、美濃、信濃、上野、下野を経て、陸奥、出羽に至り、その原初の道は「東の山の道」とも呼ばれ、現在の長門町に接するように通っていたというのである。中仙道の脇往還として主役の座を譲っていくのは近世からであって、中世はこの道を鎌倉武士が、また遊行聖や勧進僧が、あるいは善光寺への巡礼たちが通り、戦国時代には武田信玄の軍が信濃へ進出して行った道なのです。走ることしばし、やっと武田信玄が村上、小笠原の連合軍と戦ったとされる「大門峠」の頂上に到着、標高1441m、R152の最高地点です。
右折して車山高原へ車を走らせるとやがて樹木がまばらになって視界が開けていく。ビーナスラインの醍醐味は車山高原あたりから始まります。。車山の噴火によって生まれた平均標高1400mの山肌は高く生い茂る樹木がほとんど無く、草原に覆われた地形はまるでビーナス像の曲線のように美しくなだらかなスロープを描く山の稜線の起伏がどこまでも続く。そしてこの時期、黄色い絨毯を敷き詰めたようなニッコウキスゲの群生は息をのむほどに美しく、見事というほかありりません。
車山高原は標高1925mの霧ヶ峰の最高峰車山の東側斜面になだらかに広がる高原で、中部山岳地帯の中心で長野県茅野市と諏訪市の境目に位置する。山頂に登れば遮るもののない360度のパノラマが眺望でき、北・南・中央アルプス、八ヶ岳、御嶽山と2500m以上の名峰を視界にとらえれば、胸のすくような爽快感が味わえます。
しかも車山高原SKYGATE(駐車場)に車を停め、スカイライナー(6分)とスカイパノラマ(8分)の二つの展望リフトを乗り継げば車山山頂までひとっとび、リフトを降りて5分ほど歩けば車山山頂です。
車山展望リフトは2014年8月30日付日経プラス1「絶景リフト雄大な自然を体験」で第5位に選ばれているほどで、遠くに蓼科山、眼下に白樺湖が見え気分爽快の空中遊泳が楽しめます。(1位が白馬・八方アルペンライン観光リフト2位志賀高原横手山スカイリフト)
この時期車山一帯はニッコウキスゲの群落地で、7月ともなると黄色に染まった花畑がのどかに広がり、緑の草原との美しいコントラストが描かれます。リフトで登るのもいいですが、おすすめは約2Kmのニッコウキスゲの咲く登山道をゆっくりと初夏の爽やかな風を感じながら80分程歩いて車山山頂を目指すコースです。
山頂には車山神社という小さな神社があり、鳥居と祠のような社殿、その周りは4本の小さな御柱で囲まれています。これからの旅の安全を祈願しましょう。また、同じく山頂には1999年から稼働している車山気象レーダー観測所が設置されています。
山頂で車山神社をお参りした後、車山肩を目指して約1.7Km、30分ほど下っていきます。道幅は広いのですが石や岩がゴロゴロしていて多少歩きづらいので履きなれた靴は必需品です。
ニッコウキスゲの一番の群生地である車山肩からは、なだらかな斜面一面に黄色い絨毯のように咲き誇るニッコウキスゲが圧巻です。
そしてニッコウキスゲ越しに見る、車山の気象レーダーや八ヶ岳の景色は、空の青と大地の緑が協調し、油絵のような鮮やかな色彩の風景を作り出していて、眺めていると風景の中に吸い込まれてしまいそうです。
車山肩からはバスで車山高原SKYGATEまで行けますが、健脚な方は車山湿原から車山乗越経由でリフト方面に40分程で戻れます。
標高1820mの車山肩に、針葉樹の防風林に囲まれた小さな山小屋「ころぼっくるひゅって」があります。『邂逅の山』などの著作で知られる作家の手塚宗求氏が家族と暮らすために無人の原野に手作りの山小屋を築いたのが始まりです。初めは登山ルート上の避難小屋として立ち寄った人にコーヒーを出していたのがきっかけでカフェを営業するようになり今に至っています。
入口を入った左手にはカフェルームがありますが、この季節、奥の車山湿原を一望できるテラス席に座り、 霧ヶ峰トレッキングの後は、爽やかな風が吹き抜けるオープンテラスでカフェタイムといきたいものです。こちらで出している「ころぼっくるブレンド」は霧ヶ峰の地下水を使い、一杯一杯サイフォンで淹れてだされている本格派で、チーズケーキとの相性も抜群です。
澄みきった大気の中でいただく一杯の美味しいコーヒーと甘い物は格別ですので、是非眺望と癒しの山時間を楽しんで下さい。
健脚な方は少し足を伸ばして八島ヶ原湿原に向かうのがいいですし、最初に八島ヶ原の駐車場に車を停めて、車山を目指すルートもあります。「八島ヶ原湿原」は、解放感あふれる八ヶ岳中信高原国定公園一角を占める泥炭層が8mにも達する貴重な高原湿原で、国の天然記念物に指定されています。高原湿原とはミズゴケを主体に200種以上の植物が枯れたあとも腐食せずに堆積し、泥炭化を繰り返してやがては水面より高く盛りあがったものをいいます。八島ヶ原湿原の泥炭層は8mにも及びますので、1年に1mm堆積するとして今の姿になるのに1万2000年という気の遠くなるような年月を要しています。
そんなことを念頭にウォーキングに出発しましょう。スタートは八島ビジターセンターあざみ館。車はここに停めます。コースは湿原の中にある3っの池、八島ヶ池、鬼ヶ泉水、鎌ヶ池をめぐり、南端の旧御射山遺跡で再びビジターセンターに戻る一周90分。湿地帯には木道が整備されているので歩きやすいです。湿原の南端にある鎌倉武士らが武芸を競った日本最古の競技場跡である旧御射山遺跡には、説明看板もあるので一読し、古に思いを馳せるのも楽しみです。
標高1630mの東西700m、南北800mの広大なエリアには、200種類以上の高山植物が自生し、周辺には400種類以上もの植物が生息する植物の宝庫です。繊細な湿性植物であるミズゴケは世界の研究者の憧れであり、7月ともなるとピンク色のハクサンフウロや黄色いキンバイソウ、ホタルブクロなど、ちょっと歩くだけで10種ほどの花に出会えます。写真にはミヤマシシウドやヤナギランが写っています。じっくり観察したければ、双眼鏡や望遠鏡を持参することをおすすめします。
また八島ヶ原湿原は植物の宝庫であるとともに、上空から見るとハート形に見えることか「恋人の聖地」に認定されています。優美な草原の風を感じながらカップルで幻想的な景色を眺めるのもいいですよ。
松本市の東、美ヶ原高原を背にした「美ケ原温泉」は信州らしい静かな里山の風情と牧歌的なのんびりとした空気が流れ、旅人の心を癒してくれる場所です。その歴史は古く、奈良時代には信濃の国の名湯として都にもその名がとどろいていたといいます。当時は「束間の温湯」と呼ばれ、天武天皇が地形図を献上させた経緯が日本書紀に残され、さらに平安中期の宮廷歌人・源重之は、「いづる湯のわくに懸れる白糸はくる人絶えぬものにぞありける」と「後拾遺和歌集」に「白糸の湯」として温泉の賑わいぶりを記してもいる。江戸時代からは松本城主の庇護を受け、「白糸の湯」「山辺の湯」「束間の湯」など時代の変遷とともに呼び名も変わっていったが、日本で屈指の歴史を誇る温泉だけに街角や辻のあちこちに道祖神や歌碑、句碑がたくさん残されています。
今回訪れたのは浅間温泉に通じる県道284号線沿いにある「旬彩 月の静香」で、茅葺の門をくぐって受付。本棟造りの本館、新数寄屋造りの新館、250年前の古民家を移築した別館の三つの棟からなる和情趣あふれる旅館です。
湯は42℃前後と熱過ぎず、ゆっくりと入浴できる。無色透明の弱アルカリ単純泉で大変肌にやさしく湯冷めし難い温泉として人気があり、効能は神経痛、リウマチ、ストレス解消などに効果がある。
