北アルプスの南端にあり、日本のスイスとも称される中部山岳国立公園に位置する乗鞍高原。標高3026mの乗鞍岳の裾野(標高1200m~1800m付近)に広がり、広大な草原、澄んだ水、名瀑乗鞍三滝など、ありのままの自然が魅力。散策の後には温泉も楽しめます。山頂から秋が駆け下りてくる乗鞍は日々色が移り変わっていき、秋の気配が漂う高原のトレッキングに出かけます。乗鞍岳を映す湖沼をめぐり、シラカバ林を散策する乗鞍高原、一の瀬絵園地周辺を歩く半日コースはいかがですか。
上信越道松本ICからR158経由で上高地を目指し、奈川渡ダムの分岐、梓湖の湖尻に架かる前川渡大橋を渡り県道84号線で乗鞍高原に向かいます。まずは県道沿い、楢の木坂バス停近くのcafe irodoriで朝ご飯をいただきます。(要予約)。一歩足を踏み入れるとそこは木をふんだんに使った森の中カフェ、ゆったりと寛げます。
早朝からのドライブで疲れと空腹で温かいご飯とみそ汁そして厚焼き玉子で元気回復、これからのトレッキングにエネルギー充満です。
乗鞍高原観光センター前の車をおいて、のりくら高原トレイルズに出発です。まずは一の瀬園地を目指します。勢いよく流れる小大野川に架かり、オリガン橋ともいう滝見橋。橋の上でしばし立止まり、野趣あふれる爽快な渓流の風景を楽しみます。
白樺小径を歩く。両脇に白樺が生い茂り、白と緑の美しいコントラストを楽しませてくれます。シラカバは一の瀬園内のあちこちで目にできますが、この道沿いの景観がとくにすばらしい。
歩くこと30分一の瀬園地の入口に到着です。一の瀬草原の自然に囲まれて、乗鞍の恵みを味わえるCafe&Gallary KURUMUがあり、しばしの休憩タイムです。
KURUMUを拠点に青い宝石のような池をめぐります。上高地乗鞍線から乗鞍岳山麓に広がる一の瀬草原の気持ちよい風を受けてcafe 一ノ日へ。駐車場ではチェアリングで寛ぐ姿があります。
車道を渡り、脇の草原へ。すると現れるのがまずは逆さ乗鞍がくっきりと映し出された偲ぶの池。しばしの間見とれていまいます。
すこし奥進むと周囲の木々に溶け込んだひとまわり大きなまいめの池。周囲の木々とのコントラストが美しい。鏡のような水面に乗鞍岳が映し出される姿は、えもいわれぬ美しさで、シーンと静まり返った爽快な光景に出合えます。
ふたたびもとの車道に合流するところの右手にあるのがどじょう池。乗鞍岳と立木枯のコントラストが秋空に映えています。
その先にはコハウチワカエデの大木、大カエデが屹立し、乗鞍岳を背にした真っ赤な大カエデが楽しめます。乗鞍岳の初冠雪がある頃に紅葉のピークが重なり、美しい三段紅葉を楽しむチャンスもあるのですが、今年は猛暑の年で残念。
拠点のKURUMUまで戻り、しばし高原ミルクジェラートと手挽ドリップコーヒーで一息いれます。高原のそよ風が気持ちよい。
ここからのどかな小川沿いの遊歩道、小梨の小道を歩けば白樺の木々に囲まれたあざみ池に出合えます。池の形が切れ目の多いあざみの葉に似ていることから名付けられました。
あざみ池を半周、すると小さなあずまやまが静かに佇んでいて、ここで、先に続く林間の道に入る前に小休止でです。木造りの素朴なたたずまいが周囲の木々にすっと溶け込んでいます。一の瀬園地を眼下に眺めながらのんびりと澄んだ空気を味わいます。
木々の間を縫うように歩き始めて50分、ゆるやかな登り道、口笛の径にさしかかります。周囲のシラカバやミズナラの木々が陽光で照らされ、名前の通り、思わず口笛を吹きたくなるようなさわやかさです。
10分ほど口笛の径の気持ちのよい散策を楽しむと牛留池です。手前にはユーモラスなねじねじの木が出迎えてくれます。幹が途中で弧を描くようにくるりと1周し、ふたたび上へと伸びている奇妙な木。自然の不思議さを目のあたりにできます。
その先の展望所では、湖面に逆さ乗鞍を映し込む牛留池は風情があります。針葉樹に囲まれた静かな池は、乗鞍岳の噴火でできた溶岩台地の窪みが水をたたえ、池を作り出した。背後には剣ヶ峰や大雪渓などの山々が連なる光景を一望できます。
休憩がてら、見事な景観をしばし堪能した後は、池をぐるりと囲むように造られた立派な木道を歩き休暇村乗鞍高原を経てふたたびうっそうとさいた山道のふたりの小径を通り善五郎の滝へ向かいます。
しばらく山道を歩くと、徐々にひんやりとした空気があたりを支配し、やがて水が流れ落ちる音が聞こえ始めます。壮麗かつ豪快な善五郎の滝のお出ましです。「乗鞍三名滝」の一つ。落差21.5m、幅8mの壮麗な滝で、長い年月にわたる滝の流れで溶岩が浸食され、滝壺が後退している様子が見てとれる。昔大イワナを釣り上げようとした善五郎という釣り人が、逆に滝つぼへ引き込まれてしまいました。驚いた善五郎がこの話を村人にしたが信じてくれなかった。それでもしつこく同じ話を繰り返すのでこの名が付いたといいます。
滝壺近くの展望台からの雄姿は圧巻。山歩きでほてった体に届く天然のミストがなんとも心地よい。天然のマイナスイオンを体いっぱいに吸収します。
滝から先は長い階段が続き、周囲に茂るシラビソやトウヒの木々が目を楽しまくれくれます。
滝見台から見下ろす滝の姿も壮麗で美しく、乗鞍岳を背負った光景は一幅の絵のようです。
ラストスパート、15分ほどはゆるやかなアップダウン。いったん山道が途切れ車道に出ますが、すぐ先から再び山道へ、急な山道を20分ほど下れば、散策のスタート地点・観光センターはすぐです。
心地よい疲れは、温泉に浸かってほぐすのが一番。観光センターの真向かい、高原内で気軽に入浴ができる日帰り専用の温泉施設が乗鞍高原温泉「湯けむり館」。開館は1990年12月。スイスのイメージで作られた外観は、ヨーロッパの山小屋風スタイルで周囲の景観にもよくマッチしています。浴槽は男女それぞれに、樹齢500年の木曽サワラ材が贅沢に使った木肌のやさしいぬくもりに包まれながら入浴できる内湯と白樺林に囲まれた石造りの広々とした露天風呂があります。休憩室には釣鐘型の大きな暖炉があり、湯上り後の身体をゆっくりと休めるゆったりとした空間を演出しています。
前面にガラス窓を配し、天井まですべて木造りの内湯や露天風呂からは、乗鞍岳の雄姿が望め、明るく開放感いっぱい。源泉はここから約7km離れた乗鞍高原中腹にある湯川温泉。武田信玄によって開拓された大樋銀山から自然湧出する源泉から引湯した温泉は、湯に青みがかかった美しい乳白色で硫黄臭がする良泉で、信玄も開拓当時からその疲れを癒したようにじんわりと体に染み渡り、贅沢なひとときを過ごせます。泉質は単純硫黄泉でpH値3.12と酸性が強くアトピー症や皮膚病に効能があり、またメタケイ酸が多く含まれ、美肌の湯です。
最後は乗鞍そばで締めくくり。高原の豊かな自然のたまもの、乗鞍そば。朝夕に発生する霧、冷涼な空気、そして豊かな天然水で育まれたそばが、職人の手によって香り高い逸品に仕上げられます。トレッキングの後、番所の名店に立ち寄りたい。そば処中之屋は、水車挽き番所そばを守り続けるお店。そばの栽培から打つところまで、すべて主人自ら行うというこだわりです。
水車で挽いた香り高いそばは、つなぎを一切使わないため、のど越しも抜群。ざるととろろの2種類のそばがつく定食は人気です。
乗鞍には県道84号線(乗鞍エコーライン)に沿うようにして流れる小大野川には乗鞍三滝という3つの滝が点在します。上流から日本の滝百選の三本滝、善五郎の滝、番所大滝の順で優美な水煙をあげています。次回は乗鞍三滝を訪れたいものです。
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