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まさに文字通りの「ぶどうの丘」。甲府盆地を見下ろす小高い丘のてっぺんにある、ワインショップを中心とした市営の施設です。併設の露天風呂「天空の湯」の湯船からブドウ畑が一望でき眺望抜群。そしてカーヴでのワインの試飲三昧。トンネル遊歩道の散策とあわせて楽しみます。中央本線で行く日本遺産「日本ワイン140年史~国産ブドウで醸造する和文化の結晶~」「葡萄畑が織りなす風景」を求めてワインの旅へでかけます。

甲州種がどのような経緯で日本に渡来したのかは、昔から行基説や雨宮勘解由説の二つの説があります。いずれの説にしても、シルクロードを渡り、遣隋使か遣唐使の時代に大陸から種子の形で日本に持ち込まれたであろうブドウが、日本の気候の中で生き残った場所が山梨であり、そのブドウが甲州であるという事実です。まさに千年以上の歴史を誇る日本固有のブドウ品種なのです。かつては江戸への献上品として、およそ一週間かけて勝沼から江戸へ腐ることなく運ぶことができたのもこの甲州種特有の酸の強さだったといいます。

勝沼では甲州葡萄で様々な風味のワインが造られていて年々醸造技術のレベルアップが図られ、最近では世界のワインシーンにおいてKOSHU(甲州)の名が欧米のブドウ品種と同じ土俵に頭角を現すようになってきました。ユネスコ無形文化遺産として和食が登録されたことからも、今寿司や天ぷらなどの和食に合うお酒として世界的な注目を集めはじめています。レリーフには明治10年「大日本山梨葡萄酒会社」からブドウ栽培とワイン醸造を習得すべくフランスに留学した高野正誠と土屋龍憲の姿が描かれています。

最近国産ワインが美味しくなってきたということで、自分好みの一本を見つけたく日本最大のワイン産地勝沼にある勝沼ぶどうの丘を訪れます。左右の車窓にブドウ畑を眺めながら、緩やかな坂を上っていくと、頂きにプロバンスのシャトーを思わせる館が現れます。小高い丘「思連山」の上にあり360度ぐるりとぶどう畑に囲まれ、甲府盆地や南アルプスなどの眺望が抜群なことから「恋人の聖地」に認定されている公営施設が勝沼ぶどうの丘です。

前庭は石畳が敷かれた噴水広場。建物内には売店やレストラン、地下にワインカーヴが広がります。甲州勝沼町のランドマーク「ぶどうの丘」は山梨ワインの情報発信基地であり、日本のブドウ栽培とワイン醸造の始まりの地としてのプライドを体現した施設です。

地下のワインカーヴ最大の魅力は甲州市内37社のうち、年2回の審査会に合格した29社のワイナリーから約200銘柄、勝沼産ワイン3万本が並びます。試飲用のさかずき・タートヴァン(1100円)を購入して、カーヴに踏み込みます。試飲容器のタートヴァンは、銀製の小さな器で、内側が凹凸状に細工がなされ光の反射を利用してワインの色や濁りなどを見ることができる。フランスで古くからソムリエに使われてきた伝統の道具です。

ワインは、勝沼産甲州ぶどう100%の”原産地認証ワイン”・”オリジナルボトルワイン”など、どれも選びぬかれたものばかり。カーヴに踏み込めばまさに圧巻、カーヴ内の仕込み樽の上にずらりと置かれたすべての勝沼産ワインを自由にじっくり試飲できるので飲み比べて好みのワインを探す至福の時間です。ワイナリーだと自社ブランドのワインのみ扱うことが多いので、テイスティングできる種類も限られるが、ここはまさにワイン天国!とにかくいろいろ試したいというときには非常に役立つこと間違いなし。

カーヴの中は赤ワインと白ワインの2列に分かれ、奥の甘口から入口に向かって辛口になるという巧みな配列です。上手にティスティングするには白の辛口から始めて白の甘口、ロゼ、赤のライトボディ、最後にフルボディへと流れると、ワインの香りと味が良く分かります。特に白ワインは出色で、訪れていない岩崎醸造の「シャトーホンジョーシャルドネ」や五味葡萄酒の「シャルドネ樽醗酵」(因みに勝沼のワナリーでなく、塩山のワイナリーでブドウ品種も甲州ではない)。赤ワインでは大和葡萄酒の「十二原メルロー」「右八シラー」。また訪れていなかったイケダワイナリーの「セレクト赤」を見つけて試飲してみます。しっかりとしたブドウの味と豊かなタンニンを感じるタイプです。最後のグレイスワイナリーの「周五郎のヴァン」で締めくくる。

入口を戻るとすぐにワイン売り場があり、高品質のバラエティー溢れるワインが揃っていて、先ほど試飲して見つけたお気に入りのワインを購入することができます。入場券代わりに1100円で購入したタートヴァンは記念にもらえるのが嬉しい。

お部屋はツインの洋室でかなり広めの部屋で、ワイングラスが備えてあるのには感動します。

ホテルには「天空の湯」という大浴場がありますが、実は部屋のバスタブを利用したほうが本当の温泉を満喫できるのです。。バスタブに湯を張ってみるとこれが驚きの湯。熱いのはもちろんですが硫黄臭があり、口に含むと少しゆで玉子の味がするアルカリ性の美肌の湯が源泉かけながしで楽しめます。

温泉を掘り当て平成12年(2000)に開設された天空の湯は12角形の2階建てというユニークな建物で、ぶどうの丘の南側、一番眺めがいい場所にあります。1階が展望ラウンジ、2階が浴室になっていて、男女それぞれに露天風呂を併設しています。特等席はもちろん、露天風呂です。2階部分にせり出すように湯船が設けられているので、確かに眺望は素晴らしい。まず真下にブドウ畑、春以降は一面の緑となり、その向こうに甲府盆地、さらにその後ろに横たわっているのが南アルプイスです。右端の甲斐駒ヶ岳から北岳、間ノ岳・・・、左端に聖岳の先っぽが見える。3000m級の尾根が銀色に輝いて美しい。

ゆったりと明るく開放的な雰囲気で楽しめる内湯内湯の浴槽は42度の高温浴と40度の中温浴に仕切られ、ジャグジーと寝湯も配置。泉質はアルカリ性単純温泉。

「勝沼ぶどう郷駅」に戻り、目指す「大日影トンネル遊歩道」は駅前から始まります。ここは明治36年(1903)の開通から平成9年の新大日影トンエル開通までのJR中央本線の下り線として使用されていたトンネルを遊歩道として整備したものです。明治末期に中央本線が開通したことによって、それまで馬の背に載せて東京まで3~6日かかっていたブドウの出荷が、わずか半日で大量に輸送できるようになり、ワインや樽の輸送問題も一挙に解消。勝沼が日本一のブドウ郷となるきっかけにもなったという鉄道遺産です。

中央本線の線路は甲府盆地へ向かうための最適な勾配を考慮したため、勝沼盆地を迂回するかのように建設され、そのために列車は勝沼の中心市街は通らずに山の中腹を走っています。まずは駅舎を背にして右に行くと、昭和43年(1968)まで使用されていた勝沼駅の旧ホームが見えてくる。勾配区間であるこの地には鉄道開業当初、駅が設置されていませんでしたが、葡萄やワインの鉄道貨物輸送のために大正2年(1913)、スイッチバック方式で駅が開業し、この駅から勝沼の葡萄やワインが鉄道貨物で全国へと出荷されていったのです。

しばし昔に思いをはせながら今度は駅舎を背に左へいくと、すぐに平成18年まで活躍した実物の電気機関車EF64ー18が鎮座する広場にでる。その先の階段を上がると、レンガ造りのレトロな鉄道トンネルが口を開いて待っています。明治35念(1902)貫通、そして平成9年(1997)まで使用されていた旧大日影トンネルです。隣に新トンネルが開通した後は、遊歩道として整備され、トンネル内を歩けます。

内部は保線作業員のための待避所があり、中央本線や勝沼の歴史を物語る写真パネルが設置されていたり、オブジェが飾られていたりして、ちょっとした資料館になっています。猛暑時でもトンネル内は気温は20℃台前半で快適そのものである。

トンネルの全長は1367.8mでおよそ20分で通り抜けられますが、中間地点掲示板のところから両側のトンネル出口の大きさが同じに見えたり、東京駅からの距離標や線路の勾配標などの鉄道標識、水路などががそのまま残されていて往時を偲ばせる。天井に黒く付着しているのは、かつて走っていた蒸気機関車の煤とのこと。各所に解説板があるので飽きずに探検気分で歩けます。

このトンネルを抜けるとすぐに、同じような明治36年に建造された貴重なレンガ造りの旧深沢トンネル(1100m)があります。こちらは「勝沼トンネルカーヴ」として有料(月額2500円)のワイン貯蔵庫となっていて、ワインの熟成に最適な環境で、720mlボトル換算で1区画300本が収納可能です。

行基説養老弐年(718)勝沼に足を踏み入れた僧・行基は日川渓谷の大岩の上に静座して修行すると満願の日、対岸の大岩の上に、右手に葡萄、左手に宝印を持った薬師如来が夢のように現われ、感動した行基はその姿を木に刻み、柏尾山大善寺に安置したのである。その後法薬であるといわれる葡萄の栽培法をこの地の人々に教え、こうして勝沼の葡萄は以後、現在までの長きに渡ってこの地を甘くかぐわしい匂いの里としたのである。これが夢から1200年、伝説の甲州葡萄物語とのこと。

雨宮勘解由説:平安時代に雨宮勘解由が付近の山「城の平」で山ブドウの変性種を見つけ、改良したものが「甲州」という説

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