創業100年赤湯温泉「山形座 瀧波」は伝統とモダンが融合した宿

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平安時代後期開湯920年余という歴史ある赤湯温泉で、1915年4月に創業し100年以上にわたり親しまれてきた宿・いきかえりの宿 瀧波が、平成29年(1907)にリニューアル。リノベーションによってシンプルでモダンな宿「山形座 瀧波」に斬新に生まれ変わりました。館内は延床面積3000㎡という広さながら、客室数はわずか19室で、部屋は移築した蔵などを利用してつくられた3タイプからなり、それぞれの空間にマッチするような家具が配されています。全室に“生まれたての十割源泉”を愉しめる贅沢な露天風呂が付き、宿で冷えた体も温まる温泉三昧を堪能できます。美しい椅子に掛け、良質な温泉に入る。そして地元で採れた豊かな山海の幸を主役にした美味な食事をいただく。そんな山形の魅力を存分に味わえる宿を訪れます。

山形県南部の盆地に湯煙を上げる赤湯温泉(南陽市)の発見は、平安時代の寛治7年(1093)に奥州統一を志した源八幡太郎義家が戦をしていた時、同行していた弟源義綱によって開湯された時代まで遡る。戦で傷ついた兵士を湯に浸すと、すぐに治癒し湯は真っ赤に染まったことが赤湯の名前の由来とされています。江戸時代には米沢藩主上杉家の御殿湯(別荘)が造られ、藩公認の遊興の場所として早くから栄えていました。日本さくら名所百選の地・烏帽子山公園の八幡宮の境内から、赤湯の温泉街越しに田園と山並みが一望できます。明治11年(1878)にこの地を旅し「日本奥地紀行」を著した英国人女性イザベラ・バードは、赤湯の印象をこう記しています。『米沢平野は、南に繁栄する米沢の町があり、北に湯治客の多い温泉場の赤湯があり、まったくのエデンの園である。鋤で耕したというより鉛筆で描いたように美しい』と。さらに彼女が“アジアのアルカディア(桃源郷)”と絶賛したフルーツの里、南陽市は今なお、その豊かな実りと田園の美しさが保たれています。

赤湯温泉大通りが拡幅され、市街地にある赤湯温泉は、山間の温泉のような静けさとはいきませんが、旅館「瀧波」は、その街の一画に佇みます。赤湯温泉は古くから街道の宿場町として栄え、初代瀧蔵、お波夫婦が“あんびん(塩餅)”を販売する茶屋を大正4年に創業。「瀧波」の屋号は、創業者「瀧蔵」「お波」の夫婦に由来します。その後旅館となり、長年にわたり多くの旅人をもとなしてきました。

重厚な門金具が施された大きな門扉がケヤキの一枚板で作られている茅葺きの立派な薬医門をくぐって、黒塀に囲まれた瀧波の敷地内に足を踏み入れると、喧騒から離れた箱庭のような空間に変ります。

瀧波の母屋「毘龍軒」は、400年前に米沢藩上杉家の山守を務めた大庄屋の曲がり家を移築して始めた古民家の宿として親しまれていましたが、平成29年(2017)その建築を生かしながらリノベーションを行い、和モダンな宿に再生しました。山形の風土、文化を味わってもらう場として、「山形座」という名を新たに冠しています。

創業年に因んで名づけられた築350年の曲がり家を生かしたロビーラウンジ「1916」。ロビーは木目を生かした杉板の床で、シックな空間に彩り豊かな「スワンチェア」が花を添えています。古民家建築に息づく日本の美意識と北欧のモダン家具が不思議と美しい調和を奏で、琴線に触れる極上空間となって目の前に広がります。曲線のみで構成された椅子「スワンチェア」は、デンマーク・デザインの第一人者であるアルネ・ヤコブセンが1958年に生み出した傑作。シックな印象の古民家には、あえてカラフルな張り地で遊び心を加えています。

「瀧波」新生にあたり『山形座』というコンセプトづくりから設計・デザイン、さらに料理やサービスまでクリエイティブ・ディレクションを一貫して手掛けたのは、新潟県南魚沼市で温泉宿「里山十帖」を運営する、ライフスタイル出版会社「自遊人」の岩佐十良氏。岩佐氏の構想とアイデアを山形在住の建築家、井上貴嗣氏が図面化し、隙のないリノベ―ションを行いました。

ロビーラウンジの一角にはチェックインからチェックアウトまでフリーフローのドリンクコーナーがあり、無料で山形市のオーロラコーヒーやフルーツジュース、ビール、夜は日本酒やウイスキーなどの飲み物が滞在中いつでも楽しめます。北欧デザインやミッドセンチュリーのチェアが置かれ、フロアの表記もモダンなアイコンで統一。それでいてKURAの客室の入口には土蔵の名残があるなど、建物はまさに新しさと伝統の調和で生まれ変わっています。

新しくなったのは建物だけでなく、改装に際して完全源泉かけ流しに変更し、地下400mから毎分800リットル湧出する58.2度の源泉を適温の40℃程度に維持するよう新たに湯守を置きました。創業者の“お波さん”にちなんだ湯処「073」。男湯、女湯どちらも小さな湯船ですが、湯船には小さな湯の花が浮かび、硫黄の匂いがする湯はいかにも“効きそうな”肌触りです。湯処のほか、2017年に19部屋すべてに露天風呂を設え、源泉からじかに温泉を配湯するシステムにリニューアル。その湯を中庭を眺めながら四六時中湯浴みが楽しめます。

泉質は含硫黄・ナトリウム-カルシウム塩化物泉、pH7.3の中世でとろりとやわらかな感触。古来、戦で傷ついた兵士たちの治癒、その効能は慢性皮膚病、アトピー性皮膚炎、五十肩などさまざま。皮膚に優しく、硫黄で血行促進し、塩で保温保湿、体の巡りがよくなってたまった疲れが流れていくようです。飲泉すると糖尿病や慢性消化器病などにも効果があるとのこと。玄関脇に飲泉所があるので赤湯の源泉で身体の中からも美しく。

Discover YAMAGATAレストラン「1/365」 は、木の温もりあふれる「Yチェア」がオープンキッチンを囲むモダンなダイニングです。やわらかな曲線づかいが美しい「Yチェア」は、ハンス・J・ヴェグナーの代表作。国境と世代を超えて愛され続けている理由はその座り心地にあり、奥行きのある座面が疲れを軽減してくれます。ライブ感溢れるオープンキッチンを採用し、カウンター越しの料理長が盛り付けた山形らしさがふんだんの料理を、スタッフの軽妙なトークに耳を傾けながら味わうスタイル。旬は一瞬にすぎていくもので「瀧波」には“季節の料理”や“今月の味”といったものはなく、刻々と変わる日々の香り・旬の食材が主役。置賜盆地は四方をぐるりと高い山に囲まれて土地に栄養が集まり、寒暖差が大きい気候が豊かな食材をおいしくしてくてる“魔法の盆地”。その置賜の豊かな自然と食文化・置賜盆地ガストロノミーを楽しむためのレストランです。

ここでは毎日16:50頃からそば打ちの披露があり、日本酒の試飲をしながら、夕食に供されるそば打ちを軽妙なトークとともに見学できます。

お楽しみの夕食は和食とイタリアンが融合したフュージョン。レストランの中心はキッチンで、コの字に囲んだテーブルにゲストが座って劇場のように料理を楽しみます。厳選食材をふんだんに使用し、地産地消にこだわった料理の数々を新潟長岡の名店「L'armoise」におられた中川強シャフが仕上げます。夕食の献立は、二十四節気、七十二候とともに変化し、「今ここでしか」を大切にするレストランでは365日が特別料理です。お品書きの左下にあるシリアルナンバーのような数字「310/365」が、毎日献立が違うことを物語っています。スタッフの語る置賜盆地の食材や料理のストーリーに合わせて、ひとつひとつの料理が仕上げられ運ばれてきます。

またドリンクのラインナップが凄く、前菜、魚、米沢牛、デザートに合わせたワインと日本酒のマリアージュガイド表は読むだけでもワクワクします。全てバイザグラスで楽しめるのも嬉しい。

スタートは明治25年(1892)創業の地元赤湯の酒井ワイナリーが地元名産デラウェア(小姫)で作った「小姫〇(あわ)」がふるまわれます。無濾過のため山形県産デラウェアの果実感をダイレクトに感じられる微発泡スパークリングで小気味いい酸とお日さま農園の栗たんかぼちゃに白神山地のナツハゼが入り、甘みの中に甘酸っぱさが広がるのとが絶妙にマリアージュします。。

続いて小蕪に三陸産の小桑のソースは小蕪のシャキッとした口当たりと小桑の甘酸っぱさが口いっぱいに広がる逸品です。

土垂芋と三陸産 帆立は豆乳ソースで

椀物は置賜と白神山地の天然きのこ汁。本日のキノコはシモフリシメジ、チャナメツムタケ、天然平茸、栗茸、畑占地、天然なめこが入っています。そして次にここでさきほどの打ち立て蕎麦が振る舞われます。

オカヒジキと庄内羽太

生でも食べられる舟形マッシュルームは薄切りを花びらのように仕立てたタルトと、食感を残してミンチににした熱々のクロケッタ。デザートのような可愛らしいプレゼンテーションに笑顔もほころびます。次のアオモリトドマツの氷菓(ソルベ)で口直しして米沢牛を待ちます。

米沢牛の肉本来のうま味がつまった内モモ肉のグリルは、オープンキッチンの鉄板の上で仕上げます。

肉の味わいだけでもおいしい米沢牛は、芳醇で力強い高畠ワイナリーの赤ワイン「青おに」を合わせました。東根市の大富農産の山葵、高畠町の黒にんにくペースト庄内浜の塩と味に変化をさせながら楽しみます。

ご飯は事前に予約しておいた黒沢ファームの夢ごこちで炊いた松茸ごはんを白神山地の天然なめこ汁といっしょにいただきます。土鍋いっぱいに松茸が入り、混ぜると松茸の香りが鼻腔をくすぐります。残ったごはんはおにぎりにしてもらって夜食にいただきます。

おおきた最後にデザートは長澤農園の刀根柿を飯豊町の柿酢でいただきます。刀根柿は平たい角型で種の無い柿(平核無)の変種で果汁が多く程よいかたさがあります。秋に収穫され、その後渋抜きが行われる。

合わせるデザートワインは、地元赤湯の大浦葡萄酒のアイススイートスチューベンで、スチューベンの凝縮した甘い香りと蜜のような甘味が楽しめる、優雅な極甘口ワインです。「東北泉 雄町」や「山形正宗 雄町」といった地酒や置賜のワインとともに、ゆっくり2時間ほどかけて12品のコースを楽しみます。

“うきたむ”の朝食「大庄屋箱膳」を 昨夜と同様レストラン「1/365」でいただきます。現在の置賜は「おきたま」ですが、その昔は「おいたま」、さらにそのずっと前、日本書紀の頃には「うきたむ」と呼ばれていました。「うきたむ」とは「優嗜曇」と書き、「すぐれたもの、美味しいものをたしなむ」という意味を合わせもっているとのこと。その言葉通り、置賜の豊かな気候・風土が育んだ食文化をいかし、山手の手法による身体に優しい朝食を用意していただいています。本館母屋の大庄屋当時の食事スタイルにちなんで、漆塗りの「箱膳」に“今日の美味”を詰めて供された大庄屋箱膳には、米沢牛時雨煮・おかひじき浸し・三陸産牡蠣・秘伝豆豆腐にダシ・民田茄子の漬物・山形の朝の定番「近江漬納豆」が配されています。

炊き立て「つや姫」の白米に味噌汁、ちょっと甘めで優しい味わいの瀧波流芋煮にご飯がすすみます。

米を主食にした放し飼いの鶏卵「米コッコ卵」を使ったココット、

デザートは飯豊ながめやまヨーグルトと季節の果物と甘酒でしめくくります。

置賜の歴史が息づく蔵を今に生かした「KURA」、古い小学校の木造校舎をリノベーションし、緑が茂る庭園と美しく咲き誇るサクラを望む「SAKURA」、そして山形の工芸品でまとめられた「YAMAGATA」の3タイプがあり、明るさに満ちた全19室すべてに露天風呂が設えています。「YAMAGATA」の家具と備品は家具修復を生業とする若き7代目の弟がコーディネートしています。

「KURA」は、米蔵や板蔵をリノベーション、2Fにベットルームを設えたメゾネットタイプ。陽の光がたっぷりと注ぐ大きな窓から中庭を眺めるリビングは桜材の床にポップなカラーの北欧家具が置かれ、自宅のようなくつろぎのひとときを過ごせます。

2階は琉球畳のベッドルームで隠れ家の雰囲気です。

部屋専用の露天風呂は蔵王石をくりぬいた大岩風呂。一部屋あたり毎分約4リットルの豊富な源泉が、24時間出続ける露天風呂の浴槽にはこれみよがしの湯口は見当たらない。温泉の純度を守るために、源泉から空気に触れさせることなく足元に湧出させている蔵王石の岩風呂の部屋は最高。深めの湯船に首まですっぽり浸かるとふわっと硫黄が香って癒されます。到着後、食事前、食事後、就寝前、朝一番、朝食後といったペースで滞在中に最低6回は地球の恵みともいえる源泉、生まれたての温泉に浸かって100%、10割で赤湯を楽しみたい。

朝食前に開催される朝ツアーへは宿の車で出発です。前日深酒をしてしまうと朝起きるのが大変ですが、ぶどう畑が連なる山道を登り、置賜盆地が見渡せる絶景スポットへ。雲海の広がるパラグライダーの名所、十分一山と高ツムジ山で置賜盆地の風に吹かれていただくモーニングコーヒーはまさに目覚めのコーヒーで格別です。※この日はあいにくの雨模様で雲海は見えず残念。

置賜盆地はかつて大きなカルデラ湖だったそうで、眼下に見える白竜湖という小さな湖はその名残。実はその昔、白竜湖は大きな湖だったのですが、その湖水が地中深く染み入って、蔵王山へと続く地熱源により温められて再湧出したのが「赤湯温泉」なのです。赤湯温泉の恵みを守る大切な場所として龍神様が祀られています。

果樹王国山形でぶどう栽培の盛んな赤湯(南陽市)には、主に自家栽培ブドウを使ったワーナリーが6軒も集結ています。県外に出荷しないまさに地ワインです。

 

 

 

 

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