京都といえば和であり、社寺がたくさんありますが、お参りのもうひとつの楽しみは門前町の餅や団子を食べることではないでしょうか。京都には魅力的な餅や団子がたくさんあります。ということで由緒のある社寺を参拝しながら名物の餅や団子を食べ歩きたいと京都に向かいます。
まずは京都市北区の世界遺産・「上賀茂神社」へ。初代天皇・神武天皇の頃に加茂山の麓にある御阿礼所に賀茂別雷大神が降臨したことを起源としています。
上賀茂神社の門前菓子である「やきもち」の人気店が2店あります。やきもちの正式名称は葵餅といってもともと上賀茂神社で毎年5月に開催される京都三大祭のひとつ葵祭で食べられていたものです。神社西側の参道と鴨川に挟まれた道路沿いにあるのが「神馬堂」です。歴史と風格があるお店で、山吹色の暖簾をくぐって店内にはいると囲炉裏があり、店名の由来であろう神馬が飾られています。
神馬堂のやきもちは、お餅であずき餡を包んでひとつひとつ丁寧に焼き上げたシンプルな和菓子ですが、香ばしいお餅にしっとりとした甘さ控えめの粒餡がたっぷり入っていて絶妙なバランスです。お餅はよくのびて上品な粒餡が餅本来のうまさを引き出していて、シンプルながら奥深い味わいです。1個130円
駐車場に隣接したところにあるのが「葵屋」です。こちらのやきもちも代表的な京菓子として取り上げられて、時間がたっても美味しいといわれています。
お餅はほんのりと甘く、あっさりとした粒餡と良くあい、白餅とは別にヨモギ餅もあり2種類の味が味わえます。やはり焼きたてが一番でお餅を焼いた香ばしい味が鼻腔をくすぐります。やわらかい食感もよく、サイズもかなり食べやすい大きさです。1個125円で一個一個包装されていてお土産にBESTです。
下鴨神社に寄る途中ちょうど時間も8:15ということで8:30開店の出町柳駅前の「出町ふたば」に先に寄ることに。
創業明治32年の和菓子店での一番人気が「名代豆餅」です。江州米で作られたものすごく伸びる真っ白いお餅に大粒の赤えんどうをたっぷり混ぜて、そこに甘さひかえめのきめの細かいこし餡をつつんだお餅です。ふわふわのお餅に塩が効いた赤えんどう豆のアクセントが丁度よく効いています。お持ち帰りのみですので買ってすぐに食べましょう。
正式名称を「賀茂御祖神社」という「下鴨神社」は、京都市内の地図を見ると一目瞭然。出町柳あたりで、京都を流れる加茂川と高野川とが合流して鴨川になるY字型の三角地帯に位置しています。御祭神の賀茂建角身命は神武東征で熊野から吉野に入られる際、八咫鳥に身を代えて導かれたのであり、鴨氏の祖で大和の葛城から古代の京都山城を開かれた神さまです。玉依媛命は賀茂建角身命の子であり、玉依媛命の子「賀茂別雷大神」は上賀茂神社の御祭神ですので、下鴨神社と共に賀茂神社と総称され、京都三大祭りの一つ葵祭(賀茂祭)が両社で催されている。御神紋は「双葉葵」という植物で、昔は「あふひ」と書かれ「あふ」は「会う」、「ひ」は神さまのお力を示す言葉で、神さまの大きな力に出会う植物が「あふひ=葵」であると伝えられています。
下鴨神社は上賀茂神社同様、京都でもっとも古い神社の一つとされ、世界文化遺産に登録されている。参道、「糺の森」を歩けば京都一のパワースポットと呼ばれる由縁もわかる気がするのです。
御手洗社は井戸の上に祀られることから井上社とも言われており、御手洗社から湧きだす清水で葵祭の斎王代の禊ぎや土用の丑の日に行われる足つけ神事(御手洗祭り)が行われている。「土用になると御手洗川から清水が湧き上がる」と言われいて、御手洗池から湧き出るアワを人の型にかたちどったとか、後醍醐天皇が水をすくった際に、池のアワの出方が初めに一つ浮かんで、続いて4つ出たところからこの形が生まれたともいわれているのが「みたらし団子」で、ここが発祥の地とされている。
下鴨神社の門前名物といえば「みたらし団子」です。みたらし団子発祥の地、下鴨神社の北西(同社から徒歩3分くらい)にある甘味処「加茂みたらし茶屋」で頂ける。
下鴨神社の御手洗祭(水で足を洗い、身を清める)というお祭りでは、神様にお供えする供物は、串団子と決まっていて、加茂みたらし茶屋のお団子がお供えされるそうです。舌触りが滑らかなモチモチした団子に黒砂糖ベースの醤油の甘辛いタレがたっぷり。しかしながら甘すぎず、焼きたての香ばしさとともに小さめの団子は食べやすくパクパクいただける美味しさです。一人前3本でお茶がついて420円。
糺の森の南側に位置する「河合神社」は、古くから下鴨神社本宮に次ぐ大社として歴史に登場し、今数多いパワースポットでも注目度が赤丸急上昇中の神社です。その理由は、中門の看板に記されている「女性守護 日本第一美麗神」の文字が。御祭神の玉依姫命に因み、女性の守護神として信仰されていて、美麗祈願の「鏡絵馬」と呼ばれる、手鏡形の絵馬が有名なのです。
絵馬にあらかじめ描かれた顔を自分の顔に見立てて、美しい女性になれるよう願いを込め、自分の化粧品でメイクを施し、裏に願い事と自分の名前を書く。そして本殿祭壇前にある鏡に自らの姿を写し、祈願して奉納するのである。奉納すると、御供米がいただけ、これをご飯に混ぜて焚いていただくと美しくなれるのだそうです。ちなみに絵馬のお化粧するお化粧室もちゃんと用意されているのが嬉しいらしい。
最後の仕上げは休憩所で一杯350円の「カリン美人水」をいただくのである。カリンには、抗酸化作用の強いビタミンC、タンニンをはじめとするポリフェノールが豊富に含まれていて、美肌・美白効果が期待できます。
世界遺産である下鴨神社と北大路通りとの間、松ヶ崎の閑静な住宅街の一角に一際見事な門構えの日本屋敷が現われる隠れ家的なお店が「茶寮 宝泉」です。わらび餅とは何たるものかを教えてくれるお店で、市販の物とは比べることのできない格の違う日本一の「わらび餅」がいただけます。世界遺産「下鴨神社」から歩いて10分かからないくらいの場所にあるので下鴨神社参拝と併せて行動予定に是非組み込んでみてください。木造りの門に暖簾がかかり、その先には石畳が敷かれた小径があり、いきなり京都感を存分に味わえる予感が高まる良い雰囲気です。
暖簾のかかる門を通り、玄関をあけて店内に入ると店員さんが応対していただけます。素敵な季節の和菓子をギャラリーのように並べた空間の真ん中に、緋毛氈の敷いた腰かけがあり、名前が呼ばれるまでここで座って待機することになります。メニューが配られ、先に注文しておいてから準備ができ次第名前が呼ばれます。それから初めて靴を脱いで奥の部屋へと案内されるシステムです。会計は帰り際で大丈夫ですよ。
店内のどこの席からも日本庭園が楽しめるように配慮された、ローテーブルが置いてあるいくつかの部屋があり、店員さんが案内してくれる席に着席します。お部屋には掛け軸や生け花が床の間に飾られ、注文した品が出てくるまでの間、窓越しに見える美しく整った日本庭園を眺めていると穏やかな気持ちになっていきます。築100年以上の歴史ある純和風の造りの建物は手入れが行き届いていて、古き良き京都の凛とした空気が漂い、とても居心地の良い時間が過ごせますよ。
ここではなんといっても「わらび餅」です。100%のわらび粉に少量の砂糖で作られているわらび餅は、作り置きを一切せず、注文を受けてから練り始めるため15分から20分程度かかるとのことです。注文を待っている間は、サービスで出されるほうじ茶と丹波の黒しぼり豆をいただきます。ほうじ茶は甘味が感じられ、黒豆は外側はサクっとしていて中から上品な甘さが溢れてくる最高のお茶請けです。
「茶寮 宝泉」で一番人気の「わらび餅」は透明なガラスの器に笹が敷かれ、その上にわらびもちが5個、そして黒みつが添えられています。一粒ずつが大きく、表面は透き通っていますが全体的に黒みを帯びています。できたてのわらび餅というのは黒みがかっているとのことで、出来たてを時間をかけずに食べていただきたいとのお店の方のお話でした。ひと口めはそのままに、あとはお好みで沖縄産黒蜜をかけていただきますが、本当のわらび餅とはこれか!と唸るほどの美味な極上の一品です。箸で持ちあげるとぷるぷるとした感じですが、食感はもちもちとして弾力が強く、サクっとした歯ごたえもあり、甘さも絶妙で黒蜜をかけないほうがより「茶寮 宝泉」の「わらび餅」を実感できます。
はんなりとした京都弁での接客・美しく見応えのある庭の作り・凛とした空気が漂う落ち着いた空間・色鮮やかな季節感漂うお菓子・香り豊かな抹茶などあらゆる要素が非常に高いクオリティでまとまっています。「わらび餅」が1100円とお値段は少し高い感じもありますが、暖簾をくぐってからお菓子をいただき終わるまでの庭などを含めたトータルな贅沢さ、そして居心地の良さには割高感はありません。京都の風情が感じられるお店「茶寮 宝泉」の「わらび餅」を是非味わってみてください。(※価格は訪問時のものです)
茶寮 宝泉から先、さらに北に上がった通り沿いにお持ち帰り専門の和菓子店、黒みつだんごの「美玉屋」があります。
沖縄八重島産の黒蜜を串団子にからめ、たっぷりのきな粉とともに食べる団子です。1パック10本入りで多いと思われるかもしれませんが、ひとつひとつが小ぶりなこともあり一度食べたら病みつきです。一見黒蜜にきな粉と重く甘ったるさを想像するのとは違い、団子にしっかり黒みつがからまることで歯ごたえがあり、さらに風味のあるきな粉と一緒になることで口の中でとろけていきます。これは10本くらいあっというまです。
お腹が餅や団子でいっぱいなのでちょっと横道にそれ、「北野天満宮」の近く上七軒にある「がま口」を買いにいくことに。京都「七野」のひとつ北野にあり、京都の人々からは「北野の天神さん」と呼ばれ、親しまれている京都では御所の四方の鬼門の北西を護る「北野天満宮」を訪れる。
この社は幼い頃から勉強熱心で最年少で国家試験に合格し、右大臣にまで上り詰めた学問の神様で知られる菅原道真公をお祀りする、全国のおよそ12000社あると言われる天神様、天満宮の総本社である。楼門をくぐるも本殿は参道の正面になく「筋違いの本殿」といわれ、もとの地主神社があるため横にずらして本殿が建てられたためです。
「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな」拾遺和歌集に詠まれ、平安時代中期の学者/大江匡衡筆の楼門の額文に「文道大祖・風月本主」と称えた菅原道真公は、ことのほか梅を愛され、その梅が主である道真を慕って、一晩のうちに太宰府に 飛んでいったという「飛梅伝説」が生まれた。その梅が御神木の「紅和魂梅」です。
名物門前菓子として澤屋の粟餅と長五郎餅がある。北野天満宮の大鳥居のそばに店を構える「澤屋」の粟餅は、注文ごとに職人さんがせっせせっせと栗餅を仕上げています。出来立ての栗餅をこし餡で包んだのと、きな粉をかけたのと2種類あり、どちらも繊細で、口に含むとふんわりとして、淡雪みたいに溶けてしまいそうなほどに儚い。
上七軒は京都にある花街(祇園、先斗町、祇園東新地、宮河町、島原、上七軒)の中でも最も古い花街で、上七軒という名称は、室町時代に北野天満宮を造営するときの残り木で七軒の水茶屋を建てたことからつけられたものである。また、桃山時代に豊臣秀吉が北野で大茶会を開いたとき上七軒の茶店が団子を献上したところ、秀吉はこの団子を気に入り現在でも上七軒の御茶屋の提灯に「つなぎ団子」があしらわれています。上七軒の茶屋が作った団子が「みたらし団子」の発祥という説もあるが、下鴨神社にある御手洗神社が発祥という説のほうが有力のような気がする。通り沿いにあるがま口専門店「まつひろ上七軒」の暖簾をくぐります。
店内には大小さまざまながま口がところせましと並べられていて、柄も豊富です。
通り沿いには餅屋ではありませんが、上七軒で明治41年(1908)創業の和菓子屋「有職菓子御調進所 老松」があります。当主の家系が平安時代の宮廷祭祀官の流れを汲み、古来より朝廷に伝わる有職故実に基づく儀式・典礼に用いる菓子、茶道に用いる菓子を手掛けてきたことから、屋号を有職菓子御調進所としている。格子戸にかかる白い暖簾が映える町屋建築。その店構えからも老舗の風格が伝わってきます。
最後に京都紫野の船岡山北側に位置し、1926年建立の朱ぬりの楼門が向かえてくれるのが正暦5年(994)創建「今宮神社」です。ご利益は良縁開運「玉の輿」です。なぜ玉の輿なのか、その由来は徳川5代将軍綱吉の生母・桂昌院にあります。桂昌院は、寛永4年(1627)西陣の青物屋仁左衛門の娘として生まれ、名は「お玉」、のちに徳川三代将軍・家光に見初められ側室となり、五代将軍・綱吉の母として大奥で権勢をふるったことから「玉の輿」の語源といわれています。桂昌院は、高い身分に昇りつめてからも、生まれ育った西陣を思い、荒廃した西陣の氏神である今宮神社の復興に努めたそうである。因みに西陣とは、応仁の乱の時、西軍の山名宗全が陣を敷いた場所であることから西陣となったとのこと。
お参りの後は門前名物「あぶり餅」。今宮神社での参拝を終えた後、風情ある参道で道行く人々を眺めながらのんびり食べるのがお決まりのコースです。歴史ある神社仏閣の門前には、やはり歴史あるお店が軒を並べている。今宮神社東門前にある2軒のお店、かざり屋と一和(一文字屋和助)、二軒のお店がほぼ正面で向かい合っています。かざり屋さんは、創業から約400年!一和さんにいたっては1,000年、平安中期の創業で、日本最古の和菓子屋といわれる。こだわりの京都人は、どちらが好きか意見がわれるらしい。なんとなくいつも一和さんの暖簾をくぐぐります。店先では、炭火の上で親指大のお餅が串に通され焼かれています。それを女将さんが団扇であおぐ。香ばしい香りがふわりと広がり、この香りだけで眩暈がしそうになります。
あぶり餅は、親指大のお餅にきな粉をまぶしてから、炭火であぶり、甘辛い白味噌だれをたっぷり絡ませたものです。千利休が茶菓子代わりに用いたこともあり、また疾病除けとして古くから重宝されていたそうである。また玉のような餅を食べることから玉(桂昌院)のご利益にあやかるとの言い伝えもあるらしい。表の床几に腰をかけて、参道の風景を眺めながらいただくのも良いのだが、ゆっくりしたくてお座敷に上がって、一人前11本500円を頼みお茶と一緒に頂くことに。食べ始めれば一本、また一本とぺろりと胃に収まる優しい味である。
真っ赤に燃える炭、立ち上る煙、漂う香ばしい香りと、味のある京風民家の店頭で、これみよがしに女性が両手いっぱいに竹串を持ち、団扇をバタバタさせながら焼き続けていて、焼きあがったお餅は店内へ運ばれて味付けされる。ちなみに白味噌だれに使われている白味噌は、「一和」さんが本田味噌本店、「かざりや」さんが石野味噌。どちらも京都では有名な白味噌のお店らしい。このへんに味の違いがあるのかも知れない。
魅惑の京都の餅菓子は奥が深いことを実感します。