幻の富倉そばを楽しみに菜の花から始まる信州飯山の春の旅

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長野から国道117号沿いに北へ向かうと、ゆるやかに蛇行する千曲川が水先案内となって奥信濃・飯山へといざなってくれる。そんな新潟の上越市や妙高市と接する長野県最北の飯山市は、歴史ある城下町であり、また島崎藤村が「雪国の小京都」と呼んだ奥信濃の春遅い雪国です。豊かな自然と千曲川の詩情あふれる風景は比類ない美しさで心を惹きつけてくれます。GW、飯山は一番素晴らしい季節を向かえ、信州の春の訪れをもっとも実感させてくれる菜の花絨毯が迎えてくれるのです。

上信越自動車道飯山ICで降り、千曲川花の里風景街道として選出されている千曲川の堤防上を走る国道117号・通称フラワーロード(綱切橋から大関橋付近の約10km)沿いは、眩しい新緑の山並みと菜の花の黄色が風景画のような春の絶景となります。

国道沿いにあるのが「道の駅 花の駅千曲川」。ここに車を停めて道路を挟んだ千曲川河川敷に出れば、千曲川に沿って続く菜の花が畑一面に咲き誇る「常盤菜の花畑」が一望できます。そのスケールは圧巻の一言。対岸の菜の花公園を望み、春らしさいっぱいです。

例年GW5月3・4・5日には、常盤菜の花畑の先、千曲川西岸の常盤舟着き場から対岸の菜の花公園下、東岸の瑞穂舟着き場の間を「菜の花渡し舟」が3日間だけ復活します。日本一の大河・千曲川のおだやかな流れと咲き誇る菜の花ののどかな景色を情緒豊かな渡し舟をで楽しむのも風情があります。距離にすれば少しですが、川の流れのようにゆったりと流れる船上の時間を過ごせます。※2022年は中止

「道の駅 花の駅千曲川」へは、JR飯山駅から飯山線で2つ目の駅「信濃平駅」から15分ほど歩いて行くこともできます。貨物列車の車両を待合室に使った無人駅のホームの向かい側には菜の花畑が広がり、列車を降りると春の香りとともに黄色の花絨毯が迎えてくれます。JR飯山線を走る列車との風景は撮り鉄の絶好のポイントになっています。

少し疲れたら道の駅施設内の「Cafe 里わ」で休憩します。市内の和菓子屋さんの銘菓が揃ったスイーツコーナーと地元の食材にこだわったメニューを提供していて週替わりや月替わりなど旬の料理が味わえます。(飯山のスィーツ・バナナボートを是非味わって下さい)

飯山市の千曲川沿いにあり、唱歌「朧月夜」のモチーフとなったといわれる、菜の花が黄色い絨毯のように咲き誇る「飯山菜の花公園」は、信州の春の訪れを最も実感させてくれるスポットです。

赤い大関橋を渡り千曲川東岸へ、「湯の入荘入口」バス停近くの駐車場からゆるい丘を歩くこと約5分、「菜の花公園」があります。途中には鯉のぼりが空に舞う菜の花畑の迷路もあり、楽しみながら歩きます。向かいには高社山がそびえています。

坂を上りきった先に現れるのが、毎年GWに見ごろを迎え、残雪を抱く雄大な斑尾山や関田山脈を背景に、優雅に蛇行する千曲川、飯山の集落、それに色を添えて際立たせるかのように13haもの広さに約800万もの菜の花が咲き、まさに唱歌『朧月夜』の歌詞そのままに美しいニッポンを感じさせてくれる景色です。菜の花畑の向こうには、長野新潟県境にまたがる山々が見え、夕暮れ時に靄でも出れば、まさしく『朧月夜』の歌の世界にまぎれ込んだようになるでしょう。

菜の花の黄色と蛇行する千曲川に架かる赤い大関橋のコントラストがとても美しく、絶好の写真ポイントになっています。特に夕暮れ時のビュースポットとしても知られ、あえてドライブの締めくくりにこの場所を訪れる人もいます。

GWの5月3・4.5日に開催されるいいやま菜の花まつりでは、菜の花公園ステージ上にはインスタ映えする「黄色い天使の羽」パネルが設置されます。大きな羽を背景に撮影すると。菜の花畑の上を飛んでいるような写真が撮れます。

2021年4月の「サザエさん」オープニングに飯山市が登場し「サザエでございまーす」と飯山菜の花公園の幸せの鐘を鳴らしています。

屋根に統計台の載った管理棟では菜の花グッズやお土産が買えます。

名前の通りゆるやかにいくつも蛇行する千曲川を見下ろし、その先には関田山脈を眺望できる絶景スポットに一本のカスミザクラが立っています。写真は残念ながら葉桜ですが、桜と菜の花のタイミングがあえば、桜の開花の遅い北信濃ならではの絶好の写真ポイントになります。

菜の花公園の駐車場からすぐ“神戸の大銀杏”入口の交差点を左に曲がると、そこは万仏山の麓、飯山市瑞穂地区福島。里山の美しい風景と温かい人々とのふれあいを描き、静かな感動を呼んだ映画「阿弥陀堂だより」の舞台です。お梅ばあさんが守っていた阿弥陀堂のセットが残されていて、まるで200年前からそこに佇んでいたかのように周囲に溶け込んで、棚田や眼下に流れる千曲川を静かに見守っています。春、山間の阿弥陀堂の前の休耕地が菜の花の黄色で染まり、阿弥陀堂との美しい景観をつくっています。

「日本の棚田百選」に認定された福島の棚田は、瑞穂地区周辺に3haほどの面積を持ちます。畦に石垣を用いているのが特徴で、加藤清正の名城・熊本城の石垣のように扇型の弧を描いた自然石を組んで造った独特の棚田が広がります。高低差が大きく、上からだけでなく下から眺めても迫力があり、雄大な山々や飯山盆地、ゆったりと流れる千曲川など、菜の花ごしにここから眺める風景も見事です。

お梅ばあさんが登り降りしたであろう万仏山に向かう急な坂道沿いには6体の観音像が並び、それぞれが絵になる表情、姿です。嘉永元年(1848)に福島の村人が造ったもので、苔むして人々の信仰の深さがわかります。

瑞穂地区小菅、野沢温泉村との境近くに佇むのが北竜湖」。信仰の山、小菅山に抱かれた三方を山に囲まれた面積約20ha、周囲2.2Kmの緑深い天然湖です。龍が棲むといわれた神秘の湖がハート型であることから恋愛成就のスポットとして知られています。ハートの斜め上部から突き出た弁天島は、まるでキューピットが放った矢のように見えます。

この湖の周囲一帯は、近くにある小菅神社の神域になっていたといい、だからこそ菜の花公園の鮮やかで開放的な雰囲気とは打って変わって墨絵に黄色を落としたような神秘的な美しさを持っているようです。季節ごとに違った景色を見せる湖で、この時期、菜の花の黄色と緑深い湖に映る新緑の木々の緑とのコントラストが最高です。

飯山旧市街地にあった茅葺きの大きな民家、江戸後期の旧家「牧野家」を移築復元したのが湖畔にたつ「北竜湖資料館」です。資料館の前庭は、春、菜の花に彩られた北竜湖を撮影する絶好のポイントで、著名な写真家・故前田真三氏がこよなく愛したことから、特に菜の花に彩られた北竜湖をどう撮影するかが腕前の見せどころと言われています。

飯山の菜の花は菜種油を取るアブラ菜ではなく、野沢菜の花畑です。現在では野沢菜の原種の保存のために栽培されているものと、遊休地を利用して観賞用に栽培されているものとがあります。信州の郷土食「野沢菜漬け」の野沢菜発祥の地が、野沢温泉にある薬王山健命寺です。今から270年前の宝暦6年(1756)頃、当時の住職が京遊学の土産に持ち帰った天王寺蕪の種がはじまりとされ、温暖な地域から持ち帰った蕪が標高600mの高冷地で突然変異をして野沢菜が誕生したといいます。

さてお腹も減ったことからお目当ての富倉そばの店「手打ちそば・笹ずし・かじか亭」に行くことに。その昔、上杉謙信が武田信玄と戦うために通ったとされる富蔵峠。越後と信州の境に位置する富蔵地区に伝わるご当地そばが「富蔵そば」です。つなぎに「オオヤマボクチ」という植物の繊維を使い、手間ひまのかかる昔ながらの製法で打つことから「幻のそば」とも呼ばれます。風味が良くツルツルの喉越しと強いコシが特徴。また「笹ずし」は戦国時代から伝わる野趣豊かな郷土料理で、富蔵地区の人々が上杉謙信に「野戦食」として贈ったともいわれ「謙信寿司」とも呼ばれる。殺菌効果のある笹の上に酢飯を置き、ゼンマイ・シイタケ・鬼グルミ・紅ショウガ・錦糸卵などをのせた素朴な山里の味。

このふたつの味が味わえるそば定食1200円を注文する。富倉そばに笹すしが2個ついたお値打ちの定番メニューです。

飯山の菜の花づくしと幻のそば、富倉そばとで、GWの混雑を回避した充実のコースでした。

 

 

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