
孝行者の木こりが老父のために汲んだ滝の水が酒となり、それを飲んだ老父がみるみる若返ったという養老伝説は、日本人ならほとんどの人が知る昔話です。今では同名の居酒屋チェーンの名前として聞き馴染んでいますが、実際の「養老の滝」はちょっと忘れかけられた鄙びた岐阜県の山あいで、今も多くの人にパワーを与え続けています。清々しい滝のパワーをいただきに養老公園にでかけます。
養老町は濃尾平野の西南部、養老山地の麓に広がる扇状地です。日本列島のほぼ真ん中に位置し、町の中心部から養老の滝までの総面積約80haのエリアが養老公園として整備されています。
まずは「コーヒーが美味しい」と評判の隠れ家的cafe&gallery「温温(ぬくぬく)」を訪れます。 愛知・岐阜といえばモーニングでコーヒー代でトースト(玉子・小倉。バターから選ぶ)サラダ・デザート・茶碗蒸がついて420円、店内はオーナーが愛してやまないオードリー・ヘプバーンの写真やポストカードがセンスよく飾られています。モーニングといっても13時まで注文できるのが嬉しい。
目的地「養老の滝」を目指します。日本の滝百選に選ばれ、しかも日光の華厳の滝、和歌山の那智の滝とともに日本三大滝と呼ばれる養老の滝は孝子物語でも有名なのである。古今著聞集の中にある「孝子物語」は、孝行者の樵(源丞内)が老父の為に汲んだ滝の水が酒となり、それを飲んだ老父がみるみる若返ったという養老伝説は有名な昔話である。この話が都まで伝わり、、霊亀3年(717)には、元正天皇がこの地へ行幸され、お気にめされた天皇が「老いを養う霊泉」として称え、年号を「養老」に改元されたという史実が残っているとのことです。
その滝へは駐車場からゆっくり歩いて約30分。滝谷と呼ばれる川に沿った滝までの遊歩道を歩く。途中には名物のひょうたんや養老サイダーを売る懐かしい佇まいを見せるレトロな土産店が立ち並び、なだらかな登り坂を飽きることなく歩が進む。土産店が途切れるあたりに、養老山地から湧き出るミネラルを多く含んだ名水「菊水泉」に出会います。元正天皇が養老行幸した際、この泉に浴された美泉とされ、白髪が黒髪に戻ったとされる若返りの水です。菊水という名は昔、不老長寿に効くと宮中の儀式などで菊を浮かべた菊酒を飲むのが流行し、元正天皇が行幸されたころ泉の水に菊の香りがすると評判になったことに由来します。水質はカルシウム・マグネシウム・カリウムなどのミナラル成分を豊富に含み、環境庁名水百選にも選ばれており、水を手に取り口に含むとクセのないやや硬めの清清しい味がします。
この泉は実は養老神社境内にあり、創建時期は不明ですが、菊理媛命を祭神として「養老孝子伝説」の源丞内ゆかりの神社といわれ、奈良時代養老年間以降と考えられています。永正元年(1504年)菅原道真を合祀し養老天神といわれ、明治初期に近くの元正天皇・聖武天皇を合祀し、養老神社と改称しています。
菊水泉から滝まではちょっと急な登りで10分程度。サクラやカエデが深く生い茂り、桜や紅葉のシーズンには多くの観光客でにぎわいます。観光リフトも施設されているので、足の弱い方でも滝まで行くことができます。

名瀑といわれる多くの滝が遠望を余儀なくされる地形にあるものだが、この滝は滝壷まで容易に近づけ、高さ30m、幅4mほどの養老の滝は、あっけないほどストレートに岩肌を流れ落ちています。滝壺といえば直径にして5mくらい、落下途中に流れを妨げる岩も無いので、水しぶきは霧のように細かい。30mあるという高さから清冽な滝の本流とマイナスイオンミストともいえる冷たい飛沫がシャワーのように降り注いできます。滝の下に立ち両手を広げて滝から発生するマイナスイオンを体いっぱいに浴びながら深呼吸すれば、滝のパワーが体の隅々まで行く渡る様で「若返りの滝」とはこのマイナスイオン効果だったのかと納得がいきます。
養老公園内にあ出現する巨大なボウル(楕円形の窪地)。そのボウルの内側に広がるのが、1995年にオープンした“世界一難解な芸術家”と言われる荒川修作&マドリン・ギンズの体験型現代芸術作品「養老天命反転地」です。「現在抱えている不安な状況を、希望ある未来へ転換したい」という構想のもとに設計。「身体感覚」が、環境(建築)の変化によって新しい感覚に目覚めれば、自己意識も変えられると考え、基準となる水平・垂直をほとんど排除し、人間のもつ平衡感覚や遠近感に揺さぶりをかけるような仕掛けがいたるところに設けられています。写真は「極限で似るものの家」といい、岐阜県の形をした屋根が特徴の建物で、中は迷路のようになっていて、どこからでも出入りできます。
そのため1カ所として平坦な場所はなく、複雑に入り組んだ斜面に迷路のような回遊路が張り巡らされている摩訶不思議な空間。廃墟のような「宿命の家」、「養老天命反転オフィス」というサイケデリックな建物、ソファや机などの家具が野外斜面に放置された「運動路」など、日常生活の既成概念を根こそぎ破壊する空間が続きます。そんな場所を身体感覚を研ぎ澄ませながら歩き回るのがこの公園の楽しみ方です。勾配がきつい場所も多く、歩くだけでも疲れるけれど、“平ら”に慣れた日常生活や常識がひっくり返され、まるで感覚が新しくリセットとされたようです。、「心のテーマパーク」というサブタイトルで、既成概念から解き放たれて自分を見つめ直す場所ということらしい。写真は養老天命反転オフィス内部
13あるパビリオンには「陥入膜の径」や「極限で似るものの家」などのパビリオンには「目を閉じること」「声を出すこと」と使用法が決められていて、それも普段使わない感覚をフルに活用するための狙いです。すべてを回ると精神的にも肉体的にもかなりの運動量ですよ。写真は「宿命の家」といい、小さな子どもでも越えられるほど低い壁が巡らされています。廃墟のようなところですが、足下をみるとキッチンなどの生活の場が閉じ込められています。ここは日常と非日常が混じり合った、不思議な家です。
そんな不思議な地面を歩くのもいいですが、青空の下ゆっくり座って寛ぐのもまた格別。大きなすり鉢状になった園内を見下ろしながら、遠くに見える山、そして空を眺めれば、自然と一体化した気分になれます。まさに心のデトックスです。
最後は温泉でデトックスです。養老山脈の麓にある「養老温泉 ゆせんの里 本館」には「天然温泉みのりの湯」があり、地下1700mから湧き出るナトリウム・カルシウムー塩化物泉の源泉掛け流しの湯が楽しめます。露天風呂では壮麗な養老の山々が眺められ、健康増進、疲労回復、心の癒しに最適である。湯は少し褐色をおびており、このあたりに近い海津温泉や岐阜羽島温泉と同様のようです。
