涼しげな清流と緑が調和する夏の京の奥座敷「鞍馬」「貴船」へ

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京の夏は暑いというのが一般的な印象ですが、ただ標高570mの鞍馬山や川床で知られる貴船あたりは「京の避暑地」と言われるほど涼しい。牛若丸こと源義経の修行の地として知られる鞍馬寺と鴨川の源流である「水の神」を祀る貴船神社を結ぶのが「木の根道」。多くの伝説が息づく神秘の地です。鞍馬寺から昼なお暗い木の根道を辿って貴船神社を目指す夏山ハイクを楽しみます。

叡山電鉄は「えいでん」の名で親しまれ、出町柳駅から貴船口駅まで28分、鞍馬駅までを31分で結んでいます。特に毎日運転される展望列車「きらら」は大きな窓ガラスと窓側に向けて設置した8席の座席が人気です。別料金もなく早い者勝ちです!また枚数限定ですが叡山一日乗車券「悠久の風きっぷ」1000円も9月30日まで発売され、悠久の風~南部風鈴によせて~と風鈴電車「悠久の風」号も走っています。お得な1000円で一日乗り放題の乗車券を購入して、出町柳駅の改札をくぐります。写真は、南部風鈴が吊るされ涼を誘う電車「悠久の風」号です。

住宅地からだんだん緑のグラデーションに染まっていき、途中市原駅と二ノ瀬駅間に現れる約250mの「青もみじのトンネル」を展望列車で走り抜け、車窓いっぱいに広がる木々を愛でるうちに鞍馬駅に到着です。

叡山電鉄の鞍馬駅に降り立つ。昭和4年(1929)開業のお寺風の駅舎で、大正10年(1921)の信州上田電鉄別所線別所温泉駅や昭和6年(1931)開業の近鉄・宇治山田駅に匹敵する風情ある駅舎です。

駅舎の脇にはこの路線で活躍した名車デナ21型電車のカットモデルが陳列されている。そして駅前には巨大な天狗面が出迎えてくれます。

鞍馬寺の門前町として、また若狭へと続く鞍馬街道の要所として栄えた鞍馬。門前の鞍馬街道には、名物の木の芽煮や天狗面、とち餅などを売る店が並んでいます。鞍馬寺へは街道から少し入った場所に立つ仁王門からスタートします。鞍馬寺は霊峰鞍馬山そのものが尊天を表し、このコースは、自然を慈しみ、生きとし生けるものと共存する山中を歩きます。

鞍馬寺」は宝亀元年(770)、鑑真和上の高弟・鑑禎上人が毘沙門天を本尊として創建し、延暦15年(796)藤原伊勢人が塔堂伽藍を整え千手観世音も合わせ祀り誕生したとされる古刹です。宇宙エネルギーを「尊天」と称し、ご本尊と仰ぎ、その力の働きを護法魔王尊(鞍馬天狗)の姿で表しています。信楽香雲住職の時に鞍馬弘教総本山になっています。牛若丸(源義経)が修行したという伝説が残り、いにしえより信仰を集める霊験あらたかなお寺であり、広い境内には手付かず自然が残り、昼間でも少し暗くて神秘的です。実際、「鞍馬山」は暗部山(くらぶやま)の別称があるように、暗く霊気に満ちた山として古くから京の人に知られていました。

JR東海CM「そうだ 京都、行こう」でも不思議さを表しています。                             六五〇万年前、金星よりの使者、この地に立つ。八〇〇年前、義経、天狗と出会う。(1998年 夏 鞍馬山)                                           京都のミステリーゾーンへ、ようこそ。さて、どのコースをお選びになりますか。                     ①金星からUFO到来説②天狗伝説③義経生存説 む、信じられないって顔してますね 嘘か本当か先に行ってちょっと確かめてきます。(1998年 夏TVCM)

尊天は毘沙門天王、千手観世音菩薩、護法魔王尊の三身一体の本尊であり、太陽の精霊・毘沙門天王は北方守護の神で「光の象徴」、月霊の精霊・千手観世音菩薩は人々を助ける力の強い神で「愛の象徴」、地球の霊王である護法魔王尊は、「力の象徴」とされています。特に尊天の一人護法魔王尊は、650万年前に金星から地球に降り立ったといわれ、通常の人間とは異なる体を持ち、年齢は永久に16歳のままという永遠の存在なのです。

入山口になる仁王門の両脇に立つ仁王像は鎌倉時代の仏師湛慶の作。山門左側の扉は寿永年間(1182~84)のものです。

門前には阿吽の虎。鑑禎が鬼から毘沙門天に助けられた時が寅の月、寅の日、寅の刻であったことから阿吽の虎と呼ばれています。明治44年(1911)に再建されたこの山門は俗界と浄界の結界の役目を果たしています。愛山費300円を納めて、神秘のパワーを持つ鞍馬の尊天様に包まれた聖なる地へと、ゆっくり進んでいきます。

山門をくぐってケーブルカー乗場を過ぎると右手に小さな社「鬼一法眼社」があります。一説に牛若丸に兵法を授けたと伝わる一条堀川の陰陽師・鬼一法眼を祀ります。

その先をまっすぐ進むと少し見えてくるのが、京都三大奇祭の一つ、鞍馬の火祭が行われる神社として知られる天慶3年(940)鞍馬寺が都の北方守護を目的として御所から鎮守社として勧請した「由岐神社」です。鞍馬一帯の氏神を祀る神社で豊臣秀頼が慶長12年(1607)本殿と拝殿を再建、特に拝殿は中央に通路を設けた割拝殿という珍しい造りで桃山時代の建築様式を残しています。

境内には「大杉さん」と呼ばれる樹齢約800年、樹高53mの巨大な杉の木があり、ご神木として崇められている。一心願えば願いが叶うと言われています。

ここから清少納言が「枕草子」の「近うて遠きもの」の中に「くらまの九十九折といふ道」と記した、くねくね曲がる「九十九折参道」を30分程度歩きます。途中、牛若丸の守り本尊であった「川上地蔵尊」その向かいには牛若丸が7歳から10年間起居した東光坊の跡地に建てられた「義経供養塔」があります。

四脚門をくぐり山門より160m高い中心道場である「本殿金堂」に到着すると一気に視界が開け、本殿金堂前からは比叡の山が一望できます。

金堂内には鞍馬信仰の中心である三尊尊天が奉安されている。本殿金堂正面の石畳にある「金剛床」の中心にある六芒星は人間の内なる宇宙と、宇宙そのものが一体化するともいわれるパワースポットで「気」を受けるといわれているらしい。風水学を元に平安京が築かれ、御所を中心とした四方・四神の内、貴船・鞍馬は北の神「玄武」にあたりエネルギーが湧き出る所=パワースポットであると言われているのである。

ここから水の神が宿る貴船神社へと抜ける道は、電車に乗ればわずか一駅なのですが、ご存知牛若丸が修行に通った道と聞けばなおさら歩いてみたくなるものです。牛若丸が東光坊から奥の院へと兵法修行に通う途中、清水を汲んでのどの乾きを潤したと伝わる「息つぎの水

奥州へ下る牛若丸16歳が名残りを惜しんで背丈を比べた「義経公背比石

山中に砂岩が灼熱のマグマによって硬化し岩盤が固く地下に根を張れない杉の根が地表に這ったことで見事なアラベスク模様を描く「木の根道」は牛若丸が兵法の稽古をした所といわれています。

森厳の気みちる僧正ヶ谷不動堂あたりは、謡曲の「鞍馬天狗」で牛若丸が天狗に出会い兵法を習ったという山中です。

その先の「義経堂」は義経公の御魂はなつかしい鞍馬山に戻ったと信じられ、護法魔王尊の脇侍。遮那王尊としてまつられています。

そして650年前金星より地球の霊王として天降り地上の創造と破壊を司る護法魔王尊が奉安される「奥の院魔王殿」の前に立つと心なしか空気が澄み渡ります。

ここから蛇行する山道の下り坂を歩くこと15分で貴船側の西門に到着します。

西門を出て貴船川を渡り、川を遡って朱塗りの灯籠が連なる石段に導かれ「貴船神社」へ向かいます。「貴船神社」は京の町の中を流れる賀茂川(鴨川)を遡った水源に位置し、反正天皇(390年頃)の時代の創建とされています。貴船川には、ある伝説が残っています。今から1600年ほど前、大阪湾に黄色い船に乗った女神が現れ、こう告げます。「われは玉依姫なり。この船の留まる処に社殿を建て、その神を祀れば、国土を潤し庶民に福運を与えん」と。神武天皇の母、玉依姫命を乗せた黄船は、浪速から淀川・鴨川・貴船川を遡り、水が湧き出す源流に到着します。その地点こそ、水を司る神として名高い貴船神社の奥宮の地なのです。上陸し水神を奉り祠を建てたのが始まりで、平安時代から水の供給を司どる神として信仰を集めていたのです。牛若丸が平家討伐を祈願するために参詣したとも言われています。

二の鳥居をくぐって本宮へ。約80段の石段の両脇の朱塗りの春日灯籠が並ぶ参道は、したたるようなご神木カツラの緑が広がり映え美しくあでやかです。

貴船神社は全国450社ある貴船神社の総本社で、太古の昔より人間の生活に欠かすことのできない「水」を司る高龗神(タカオカミノカミ)を祀る神聖な場所であり、平安京遷都以来1200年以上経った現在でも、京都にとって貴重な水源を守る神様として崇敬されている。本宮の本殿には御参りする人が絶えません。8月15日まで本殿の社殿とその前に七夕笹飾りが美しく取り付けらています。

本宮も水が湧き出るところで、拝殿前の石垣の間から貴船山のご神水がこんこんと湧いています。柄杓ですくって自由に飲むことができ、持ち帰りも可能です。冷たくてさっぱりしています。                               JR東海「そうだ 京都、行こう」で貴船編 この「ヒンヤリ」は 水の神様の、しわざです。(2002年 夏)

その近くでは、白い紙をご神水に浸すことによって運勢が書かれた文字がみるみる現れてくる「水占みくじ」をする人が列をつくっていいます。一枚200円でスマホをかざすと英語や中国語などに翻訳されるQRコードつきです。

歴史書に貴船神社が初めて登場するのは平安時代初期の嵯峨天皇の御世の時、日照りが続き農作物に被害が出たので降雨の祈願をするために勅使を遣わされたとあり、以後もしばしば日照りが続くと「黒馬」を逆に長雨には「白馬」を献上することで雨乞い・雨止みの祈願をされた。このことが現代の「絵馬」の発祥とのこ

川沿いに本宮、中宮、奥宮が離れて点在し、貴船川の上流へ500m、夏の川床で有名な料亭の赤提灯が途切れたあたりに奥宮がある。その間にある中宮(結社)の御祭神は磐長姫命なのだが、実はこの磐長姫命には、瓊々杵尊が大山祇命の娘、木花開耶姫を娶られる時、姉の磐長姫命も共に嫁がせるのだが瓊々杵尊は美人だった木花開耶姫だけを召され、大そう器量が悪いと言われた磐長姫命だけを帰されてしまったというエピソードがあります。このことに大いに恥じて、「吾ここに留まりて 人々に良縁を授けよう」と御鎮座した縁結びの神様と知られ、歌人・和泉式部が詣でて、心が離れた夫とよりを戻したことで有名です。

願い事をかなえる為にはまず、本宮で購入した細長い緑紙の「結び文」の裏に願い事を書き綴って、結社の「結び処」に結び納めると生涯の幸福を得られるといわれ、若い女性が数多く訪れます。

結社の横にある「天の磐船」は、貴船の山奥で見つけられた船形の自然石です。

貴船神社の参拝方法は、本宮⇒奥宮⇒結社という順に参拝するのが、三社詣と言われる古くからの慣習なのです。最後のお参りする「結社」が縁結びの最強パワースポットなのです。

恋に生きた平安時代の女流歌人・和泉式部が、恋や人生の苦しみを抱えながらお参りし、冷めてしまった夫の気持ちが取り戻せるように祈って、貴船神社で淡い光を放ちながら闇夜に舞う蛍を見つけ、その微かな光に揺れ動く自分自身の想いを重ねて詠んだ歌
「ものおもへは 沢の蛍もわが身より あくがれ出ずる 玉かとぞみる」
すると、御社の内よりそれに応える御声がして
「おくやまに たぎりて落つる滝つ瀬の 玉ちるばかり 物なおもひそ」
その後、和泉式部の願いは叶えられ、夫の心を取り戻すことが出来たということです。

中宮から奥宮への道が「和泉式部 恋の道」といわれており、途中に「思ひ川」と呼ばれている小川がある。この小川は禊ぎの川、物忌みの川だったのであるが、和泉式部の恋の話と重なり、何時からか「思ひ川」といわれるようになったとされている。

さらに杉の老木が立ち並んでいる参道を進むと朱塗りの奥宮「楼門」に行き着く。

貴船という地名は玉依姫命が黄色い船でこられたことから「黄船」が転じたという由来がありますが、古くは、木々の生い茂った山「木生嶺」とも大地全体からエネルギー(気)の生じる根源として「気生根」とも記されたといい、大地の「気」の生じる場所とされています。奥宮は貴船神社創建の地。この場所がかつての本宮であり、ご祭神の高龗神は降雨・止雨を司る水の神で、龍の姿をしているといわれています。奥宮の地下には龍神が棲む大きな穴が空いていてその真上に本殿が建つと伝わりますが、神聖な龍穴を人間が見ることは決して許されていません。そのため、どんな形状をした穴なのか、穴の中はどうなっているのか、はたまたそこに穴は本当にあるのか、その真相はわかりません。「奥宮」の拝殿の井戸は、地のエネルギーが噴出しているところで、その昔、本殿下の龍穴で本殿修理中の宮大工が誤ってノミを落としたところ、にわかに嵐がおこりノミを空中に吹き上げたという伝説が残っています。

また天喜3年(1055)に奥宮が洪水で流損し、本宮は現在の場所へ遷座し、真下にあった龍穴まで動かすわけにいかず、元の場所に再び本殿を造り、奥社を建てたと思われます。

元はここが貴船神社本宮で度々水害があったので1055年現在地に奉遷、元の霊地は奥宮として奉齋したと伝わる。境内にはいったとたんに凛とした空気が広がり、気持ちがシャキッとなり、創建の地が持つ力強いエネルギーにふれた気がします。そして境内には玉依姫命が乗った御料船である黄船を一目を忌みて小石で覆い隠したと伝えられている船形石が鎮座していました。

貴船神社本宮と結社の間に位置し、ミシュランガイドにも掲載された料理旅館の「右源太」が手掛けるカフェ「貴船倶楽部」で一息いれることにします。開店時間の11時半、大きな窓に貴船川沿いの自然が映る木の温もりが感じられる解放感あふれる明るいカフェです。

2016年秋に誕生した「貴船の水餅」680円は寒天質の素材を貴船の水で貴船神社の縁結びに因んでハート型に固めたもので、プルンとした食感がたまりません。黒蜜ときな粉をお好みでかけていただきます。

貴船川の瀬音を聞きながら、叡山電鉄鞍馬線貴船口駅まで下ればゴールです。

京の夏!貴船「ひろ文」の川床で涼を楽しむ川床料理」はこちらhttps://wakuwakutrip.com/archives/274

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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