
長野県の東南端、群馬県と境を接する南相木村は、東西に細長い地形で、総面積の92%を山林原野が占める緑豊かな東信濃路の谷間にある袋小路。信州の地図を広げても、その存在はあまりにも小さくて、周辺の野辺山や清里高原の華やかな地域に隠れて見落としてしまいます。県境付近を源に豊かな原生林をくぐり抜けてきた奥三川と栗生川が東から西に流れ、二つの川は役場付近で南相木川となり、千曲川に注ぎます。周囲を山々に囲まれ、起伏に富んでいるため流れはどこも急で、緑陰涼しい相木渓谷や奥三川渓谷があり、見ごたえのある「七福神の滝」といわれる7つの滝が点在しています。南相木ダムが完成し、かつての渓谷美は失われつつありますが、滝めぐりは今も変わらぬ人気コース。みずみずしい自然に触れにでかけます。
佐久ICから国道141号で小海方面に走り、JR小海駅から県道2号線で南相木村を目指します。駅周辺の喧騒を過ぎると、周辺は植林の山に変り、道は弧を描いて緩やかに山の奥へ奥へと伸びていく。道は広く整備されていて、信州の山深い里のイメージの上下起伏のある「険しさ」は感じない。村に入ってからも、緩やかな道が続く。
峻嶮な岩山の淵を水が流れる相木渓谷には、最上流に位置する犬ころの滝をはじめ、立岩の滝、お三甕の滝が豪快な水しぶきを上げています。最初に訪れる滝は、南相木村四季折々の景観がたっぷり味わえる3滝の中でも県の名勝に指定されている南相木川の「お三甕の滝」です。諏訪神社脇の急な遊歩道を下ること5分で見えてきます。上ん淵、中ん淵、下ん淵と呼ばれる3つの滝壺があり、それぞれが織りなす神秘的な水の世界に感動します。中ん淵が高さ16mで最大で、甕の形をした深い滝壷に向かって落下する水の帯を、岩壁にくりぬいた遊歩道のトンネルから眺めるという粋な趣向です。20mほどのトンネルは、中ほど左にぽっかり穴があいていてそこから正面に見えます。ほの暗い中から眺める色鮮やかな木々の緑と滝とのコントラストがことのほか美しく、映画のワンシーンのように幻想的な存在に映っています。
しかしながら映画のシーンのような風景とは裏腹に、この滝には、その昔、和田のある家に「おみか」という気立てやさしい美しい娘が嫁いできました。姑はおみかが嫁入りに持参した着物が欲しくなり、だんだんおみかがうとましくなりました。ある日欲に目がくらんだ姑はここでおみかを突き落とし、おみかは滝つぼ深く沈んだという悲しい伝説が残っています。滝のそばに祠がつくられています。
さらに南相木川上流の奥三川には村のシンボルともいえる直立した立岩があります。頂上に素戔嗚尊を祀った祠を持つ高さ60mの巨大な大岩で、「立岩滝」はその直下にあり、両側に樹々が迫るV字に切り立った谷底は真夏でもひんやりしています。落差15mほどでさほど大きくはないが、渓谷らしさが感じられ、谷底地形がよくわかります。
立岩のすぐ上流にはカラマツやシラカバがせり出す山中の人造湖「立岩湖」があります。昭和40年(1965)12月に砂防ダムとして完成した湖で年間を通じてシナノユキマスが釣れます。写真の左奥に立岩、手前の立岩湖の看板には『釣り吉三平』が描かれています。
さらに上流に車を走らせると、相木渓谷の最上流、日帰り入浴施設「南相木温泉 滝見の湯」の脇に「犬ころの滝」別名「ワンちゃんの滝」があります。このユニークな名前は、その昔、悪さをする山犬に困り果てた村人がここに犬を追い落としたことから付けられたといいます。道路脇に階段があり、下りて間近に見ることができます。ゴツゴツとした真っ黒な岩肌をなめるように白糸のような清流が流れ落ち、川風が肌に心地よい。。
南相木ダムに近い場所にある「千ヶ滝」は、自然豊かな山中、奥三川渓谷に入口にあります。駐車場が近くにあるので、車を降りて2~3分ほど歩けば見ることができます。美しい水と広い滝壺をもち、渓谷に光が差し込んで神秘的な雰囲気です。
常源寺近くの栗生渓谷に千ヶ淵の滝があります。大小の美しい滝が連続し、川に沿って流れ落ちています。落差は10mほど。
このほかにも栗生川の上流、一平沢の国有林内にある、落差10mの神秘の滝「一平の滝」と御座山の登山口から1時間ほど登った中腹にある、落差8mの滝「不動の滝」があります。
「犬ころの滝」のすぐ近くの日帰り温泉施設が平成13年4月にオープンした「南相木温泉 滝見の湯」です。5m以上と広々と大きく取った窓からは森の緑と青い空、日差し湯に降り注ぎ爽快感が格別。単純泉の湯もとろっと柔らかく肌を包み込みます。男女別の2つの湯船は1週間ごとに入れ替わり、片方の犬ころの滝が眺められるガラス張りの大浴場には寝湯ができる浅瀬浴槽や電気風呂があり、遠赤外線高温サウナやミストサウナが設置されています。
開放感に浸れる露天風呂にはサンデッキがあり、太陽を浴びて寛ぐことができます。
食堂もテーブル席と座卓があり選べる。メニューも充実していて村内の南相木ダムにあやかって1日5食限定のダムカレーはボリューム満点です。
滝見の湯から約12km(車で約20分)の南相木川上流部(奥三川)に平成17年(2005)に完成した南相木ダムがあります。高さ136m、幅444mの岩石や土砂を積み上げて造られたロックフィルダム。因みにダムに行った証拠写真を見せるとダムカードがもらえます。
東京電力の神流川発電所の上池を形成し、下池の群馬県上野村の上野ダム湖(奥神流湖)との間で水を往来させて発電する揚水式水力発電のダムです。ダム湖の名は奥三川湖といい、日本のダムの中では最も標高の高い、標高1532mの堤体が位置します。慣行水利権・漁業権の関係から南相木川の水を発電に利用することはできず、したがって湖水はすべて神流川の水を揚水したものです。南相木川の水はダムを通さず、脇から導水路を経由して洪水吐付近に放流されています。堤頂部からは晴れた日には八ヶ岳を望むことができます。
奥三川湖の周囲は約5.5kmの散策路が整備され、ダム右岸には天空の石広場、ダムの下流の公園にはウズマクヒロバと呼ばれる広場が設けられていて、ウズ・ナガレ・ラセンの三要素を石灰岩・水・コンクリートの壁により表現しています。