
街中の銀杏並木も黄色く色をそろえ、本格的な秋の訪れが感じられる季節。身近な小さな秋も趣がありますが、少し足を延ばしてみれば、息をのむほど美しい紅葉が見られる名所があります。名湯連なる谷あいを、緑、黄、赤・・・さまざまな彩りが山を埋め尽くすのは、日本紅葉百選にも選ばれている名所信州高山村「松川渓谷」です。紅葉で燃え立つ景色とその渓谷美を引き立たせる滝は、この時期ならではの最高に贅沢なひとときを与えてくれます。また高山村には紅葉に包まれた渓谷に沿って点在する異なった源泉を持つ8っの温泉があります。渓谷を望む野趣あふれる秘湯を巡りながら、山里ならではの心あたたまる郷土料理を味わう。紅葉を愛でるのにこれ以上の贅沢はありません。
四季折々の壮大な自然美を見せてくれる「松川渓谷」は、信州高山村の中央を東西に分断して流れる千曲川の支流・松川が深いⅤ字形を形成したものです。この谷の両側には、イロハモミジ、ウチワカエデ、ミネカエデなどカエデ類の落葉広葉樹が多く、とくに紅が色鮮やかなのが特長です。厳しい冬に至る前の冷たい風にあたって、山もみじは錦にたとえられるような紅や黄色に染め上がっていきます。
松川渓谷は、全国紅葉百選に選ばれるほど美しく、信州でも指折りの紅葉の名所です。カエデ・ブナ・ナナカマドなどの広葉樹が赤や黄色に次々と染まり、標高差があるため、山頂から徐々に色づき、例年10月下旬まで長期間にわたり紅葉が楽しめるのです。渓谷にかかるひときわ目を引く真っ赤な高井橋と落葉樹が美を競うがごとく色付く美しさは、自然がつくり出したまるで絵画のような最高の芸術作品です。
紅葉とともにおすすめしたいのが遊歩道散策です。松川渓谷左岸に開通した「舞の道遊歩道」は、景色をゆっくり楽しむための遊歩道がしっかり完備されています。松川渓谷を茶庭に見たてた山田温泉の入口である高井橋から薬師堂に至る1.3Kmの散歩道です。迫りくる色鮮やかな紅葉の林の中を縫うように続く遊歩道散策は、まずは与謝野晶子の「鳳凰が 山をおほえる おくしなの 山田の渓の 秋に逢うかな」の歌碑が迎えてくれます。
数寄屋造りの露地門を基点に、中門、待合を経て、松楓庵へ至る往復1時間の行程です。
ゆるやかな山道を歩くと、川のせせらぎや鳥のさえずりを聞きながら、折り重なる山々が形成する渓谷を上から広く望むことが出来、周囲を紅葉に染まった日本の秋を満喫できます。途中、カモシカやサルとの出会いも楽しめるかもしれませんよ。
松風庵からs
松川渓谷の玄関口、信州高山温泉郷のほぼ中央にある山田温泉のさらに真ん中に、木造の共同浴場「大湯」があります。その昔、戦国武将福島正則によって見い出されたと伝わる山田の湯は、悠久の歳月を経た今も、昔と変わることなく豊富な湯量を誇り、旅人をやさしく迎えるいで湯の里として、人々を魅了しています。
森鷗外をはじめ多くの文人墨客が愛した、開湯210年の歴史を持つ山田温泉のシンボル「大湯」は、歴史を感じる入母屋と唐破風を持つ桃山風の共同浴場です。高い天井・壁・床・湯船に至るまで歴史の深さと重みを感じさせる総ヒノキ造りで、やわらかな香りが鼻をくすぐり温泉情緒を醸し出しています。泉質が「ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉」の無色の湯からは、ほのかに硫黄のにおいも漂っています。湯船は、男女ともに10人ぐらいが入れる「あつ湯」と小さな「ぬる湯」があり交互浴ができます。また大湯前の広場には足湯があり無料で利用できますよ。大湯を中心に並ぶ温泉街は山間の湯宿ならではの情緒が漂います。
紅葉で燃え立つ美しい渓谷美をいっそう引き立たせているのが、数々の滝です。山田温泉街を抜けて山田入洞門をくぐった道路沿いにある「八滝」は、180Mの落差を8つの滝壺を作りながら落ちる長い滝です。近くに平成8年に完成した八滝展望台「滝見の望楼」が設けられていて、そこから眺める錦秋の山肌に浮かぶ、白糸を引くかのような八滝の美しい光景は、まるで一幅の山水画のように美しく、時間を忘れしばし見とれてしまいます。展望台の向いには軽食、喫茶などを備えた「八滝もみじ亭」が建っていますのでここで休憩をとるのもいいですね。
さらに上流にある別名「裏見の滝」と呼ばれる「雷滝」は、その名の通り滝の裏側から一直線に滝壺に流れ落ちる姿を見ることができる落差30Mを誇るダイナミックな滝です。雷鳴のごとく響音をたてて落下する様子からこの名が付いたといわれ、息をのむ迫力です。
五色温泉手前、売店「ごろごろ亭」を目印に、車道から2、3分の遊歩道を下るとまず滝の裏に出ます。えぐられた岩屋からは、絶え間なく落ちる水の固まりを至近距離で眺められます。そこからさらに下ると、滝つぼを激しくたたく様子が一目瞭然の展望台に着きます。湯気が立ち上がるように下から冷気が吹き上げてきて、しぶきが霧となってあたり一面に立ち込めるので、全身が濡れてきます。
再び奥山田目指して県道66号を上っていきます。「雷滝」から先、「松川渓谷温泉 滝の湯」「五色温泉」と通り、「七味温泉」で奥山田温泉へと左折しさらに上っていく。志賀高原の主峰、笠岳の南麓に開ける標高1500mの「山田牧場」は、北アルプスから善光寺平、そして北信五岳が一望でき、奥山田の人々によって明治33年に開牧されました。牛の放牧が北欧ムードを漂わせ、まさに信州のチロル。平然と草を食む呑気な牛さんにのんびり癒されます。
平地に比べ一足早く訪れる高山村の紅葉は、9月末頃から笠岳周辺から始まり、山田牧場そして松川渓谷へとゆるやかに移っていきます。松川渓谷が一番の見頃を迎える10月中旬から下旬にかけてです。燃え立つような錦秋の美を心ゆくまで堪能してください。そして錦秋の渓谷美を望みながらゆっくりと湯につかるのも信州高山村温泉郷だけの秋の楽しみです。
信州高山村は志賀高原との境にそびえる横手山や笠岳の西斜面にひろがる松川の扇状地に位置していて、紅葉に包まれた松川渓谷に沿って異なった源泉を持つ8っの温泉が点在しています。渓谷に沿って車を走らせると滝や温泉が次々と現われ、寄り道しながら紅葉ドライブが楽しめますよ。