“那須”といえば高原?温泉?いえいえ「那須岳」登山です!

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那須といえば夏の避暑地の代表格、高原の風景が広がり、那須御用邸もある人気のリゾート地です。那須岳はそこに聳える日本百名山のひとつに数えられ、高山植物も豊富で、紅葉も美しく、季節を問わず楽しませてくれる山です。今回は、その中でも特に迫力のある火山の風景が魅力の主峰・茶臼岳(1915m)に登ります。今もなお白い噴煙を噴き上げて活動する活火山は、厳しい自然条件のために標高のわりに高山の風格が漂います。しかもロープウェイを使えば実は非常に登りやすく、まさに気軽にアルペン気分で誰でも楽しめる山です。天下一品の絶景と爽快感を求めて那須岳紅葉トレッキングに出発です。

那須高原のリゾートエリアを走り抜け、風景は趣のある那須湯本温泉街へと移り、やがて大きな建物が見えてきます。ここが那須ロープウェイの山麓駅で標高1915mの茶臼岳と標高1896mの朝日岳が並び立って迎えてくれます。実は那須岳という名前の山はなく、幾つかの山の連なりです。南から黒尾谷岳、南月山、茶臼岳、朝日岳、三本槍岳と続きます。栃木県の最北端に位置する関東を代表する活火山「茶臼岳」は那須連山の主峰であり、高さこそ三本槍岳に2mほど劣りますが、重量感と荒々しさを備えた姿は連山の盟主にふさわしい。

荒々しい印象は、最近の明確な噴火が昭和28年(1953)で、今もなお白い噴煙を噴き上げている迫力ある火山の風景であることによります。とくに活発なのは山頂の北側から西側で、無限地獄などの爆裂火口にいくつもの噴気孔があり、200~300mほど下の高さまで、樹木は一本もない裸山、岩と砂だけの世界が広がっています。

那須ロープウェイの営業は8:30からということですが、秋の紅葉シーズンは7:30には到着しておいたほうがよさそうです。那須ロープウェイは茶臼岳の東側斜面に架設され、標高1390mの7合目の山麓駅から山頂駅(1684m)茶臼岳の9合目まで登ります。ゴンドラは最大111人乗り、所要時間はわずか4分で高低差約300m、終点までの812mを登ります。

ロープウェイからはまるで優雅に空中散歩をしているかのように那須高原の稜線を眺められ、眼下に那須高原と那須野ヶ原が見えてきます。進行方向右手に目をやれば、那須五岳のひとつである朝日岳が鋭鋒を見せています。10月上旬~中旬には紅葉のピークを迎え、ツツジやナナカマドの真紅の葉とクマザサの緑が混ざり合う鮮やかな光景を楽しむことができます。

山頂駅のあるここ9合目から頂上まで50分、全体でも2時間の比較的楽な登山が楽しめますが、那須岳を登る際の注意事項や立体模型がおいてあるので、出発前に全体のルートを把握しておきます。飲み水も持っていなければここで買っておきます。

山頂駅を出ると、火山から噴出した膨大な瓦礫の連なりが視界いっぱいに飛び込んできます。麓で思う以上に荒々しく、樹木は皆無で、その分、いっそう背結にがらんとしているように感じます。

茶臼岳山頂の火口を目指してスタートです。最初は緩やかな斜面ですが、ほどなくちょっと意気込む急勾配になります。道は幅の広い砂と小石が混じるザレ場(砂礫地)でザラザラと滑りやすい砂利道なので早めに慣れておきます。茶臼岳は火山なので山頂付近は砂礫に覆われていて、背の高い樹木が育たないので見晴らしがよい。登山道はよく整備されていて岩につけられた黄色のペンキが登山道の目印になっていて道に迷うことはありません。

山頂駅から25分ほどで登山用語で「ガレ場」と呼ばれる大きさの異なる岩がゴロゴロと折り重なって歩きにくい斜面にさしかかります。眼下には色づいた那須野ヶ原がどこまでも広がっているのが見渡せます。これも火山の流出が生んだ大地です。

茶臼岳は今から約3万年前に火山活動を開始して今でも噴煙をあげる活火山で、山頂までの途中には、まさに火山活動によって運ばれてきたであろう八間岩のような巨大な岩がポツンと出現します。

慎重に足場を探して前進。15分ほどでガレ場を抜けると緩やかになり、10分ほどで山頂の那須岳神社の木の鳥居が見えてきます。

標高1915mの茶臼岳到着です。山上部分は非常に広く、今日は風の強い生憎の天気でしたが、晴れれば2000m近い山頂から360度に視界が開け、ダイナミックな大パノラマが広がる様子を見ることができます。西から北にかけて安達太良山など福島県の山々が顔を見せていますし、東から南にかけては、関東平野に続く那須野が原に那須塩原の市街が美しく広がっているのを眼下に一望できます。

岩の上に立つ小さな石の祠は那須岳神社で、山麓にある那須温泉神社の奥宮です。ロープウェイで簡単に登れる今では、信仰登山をする人はほとんどいませんが、かつての那須岳は山岳信仰の山でした。奈良時代、弘法大師が那須岳の3か所に三大権現を勧請したと伝わり、江戸から明治にかけて盛況をきわめました。毎年5月8日に行われる開山祭で、白装束姿が見られるのはその名残です。

山頂周辺は簡単に火口を一周できるように登山道が整備されています。写真ではちょっと分かりづらいですが、すり鉢状の火口全体を眺めることができ、その大きさに驚かされます。

ぐるりと火口を一周し終わると続いて峰の茶屋跡避難小屋をめざして茶臼岳の北東側を巻くように下ります。山頂の祠が小さく見えます。

ゆっくり歩いて30分ほどで茶臼岳の向かいにそびえる朝日岳を眺めるポイントにたどり着きます。ところどころ段差の大きな岩場を通ることになり油断は禁物ですが、ルート自体に危険な場所はないのでスムーズに進んでいけます。

峰の茶屋跡避難小屋が眺められるところからは、手前に剣ヶ峰(1799m)、一番奥に朝日岳(1896m)の鋭い岩肌が見えます。茶臼岳の北隣にある朝日岳は、峨々たる岩山で槍のような峰が天を突き、那須穂高との別名もあるほどです。ここから朝日岳山頂へは45分ほどですが今回は行きません。茶臼岳と朝日岳の鞍部にあたる峰の茶屋跡避難小屋は、「風の通り道」で知られます。

小屋前にはベンチもあり、休憩するにはちょうどよく朝日岳の男らしい岩壁を見ながら昼食をとるのもいいです。あくまで峰の茶屋跡ですので避難小屋があるだけで茶屋や売店はないので、弁当や飲み物は事前に用意しておく必要があります。

峰の茶屋跡避難小屋へ下る手前の分岐まで戻り、牛ヶ首方面に向かう無限地獄と呼ばれる噴気口を通るルートへ進みます。

「無限地獄」というぐらいなのでどれほど恐ろしい光景だろうとドキドキしながら進むと、風に混じって硫黄臭が感じられてきます。溶岩が固まってできたような岩とその間からガスがところどころ噴出していて、遠目からは異様な光景に出合います。3万年前に火山活動を開始し、昭和38年(1963)に小さな爆発を起こして以来、穏やかな状態が続いているといいますが、やはり活火山なのです。昭和23年(1948)ごろまでは硫黄鉱山として栄えていました。

溶岩が固まってできたようなゴロゴロとした岩や緑に変色した岩肌の間から今までみたことのないほどの量のガスが勢いよく噴出しているところにやってくると、ボボッというジェットエンジンのようなガスの噴出音まではっきりと聞こえ、地球の息吹を感じさせてくれます。茶臼岳には12カ所の噴煙地帯があり、ここはその最大級です。もちろんガスは有毒で風が強い日は人体への影響は少ないですが、無風の時は空気より重いので、窪地にたまりやすく、足早に通り抜けたほうがいいでしょう。

無限地獄の風景に圧倒されたことを考えながら歩いているうちに牛ヶ首にに到着します。ここから見上げる山頂は。たしかに牛の首に見えなくもありません。首ねっこあたりでもくもく噴煙をあげるのが応永15年(1408)の噴火口「無限地獄」です。

眼下には森をくりぬいたような広場に、ドウダンの赤、ダケカンバの黄、クマザサの緑などが小さな塊になって交じり合い、“陸のサンゴ礁”と称される美しい姥ヶ平が広がっています。茶臼岳一の紅葉の名所です。

ここで日の出平方面へのルートと合流するので順路をロープウェイ方面へ向かいます。間違えると反対方向(板室方面)へ下りてしまうので要注意です。見上げると雲が流れていく青い空をバックにゴツゴツとした牛ヶ首が男らしくそびえていますよ。

山腹を巻くほぼ水平な「鉢巻き道」を10分程歩くとカルスト台地のような雄大に広がる景色に目を奪われ、さらに20分ロープウェイ乗り場を目指します。

ロープウェイが見えてきたら今回のルートは終了です。砂礫の下りは足が滑りやすいのでここも御用心。あっという間に2時間(登り50分)は過ぎ、茶臼岳を一周しました。足にそれほど自信がなくても構えることなく行けて、ここまで簡単に楽しめる数少ない日本百名山です。

那須高原線(県道17号線)を下り登山の疲れを癒すべく那須温泉を目指します。途中標高1048mのところにある那須高原展望台は、天気の良い日には八溝山系も見渡せる大パノラマが広がります。一転夜は夜景が美しく2010年(平成22年)全国で100番目の『恋人の聖地』として登録さています。

麓に下りれば火山活動の恩恵であり、7世紀前半、約1380年ほど前の第34代舒明天皇の御世に開かれ、那須で最も古い温泉と伝わる那須湯本温泉が待っています。

湯煙に漂う芭蕉の息吹。肌磨く1300年の古湯・那須湯本温泉」はこちらhttps://wakuwakutrip.com/archives/314

 

 

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