群馬アドベンチャーマウンテン「妙義山」!石門コースを歩く

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群馬県を代表する山といえば「上毛三山」すなわち赤城山、榛名山、そして群馬県南西部、昔は西上州と呼ばれた山域のシンボルともいえる妙義山です。白雲山、金洞山、金鶏山の三山からなり、過去に火山活動の記録はないものの山体は火砕岩の一種のもろく浸食されやすい凝灰角礫岩で、山容は非常に厳しい。裾野の広がりが少なく、そそり立つ峰々の鋭く尖ったゴツゴツとした山姿のみならず、大絶壁や石門群、大砲岩等、奇岩奇石が林立するのが特徴で、日本三大奇勝(耶馬渓・寒霞渓・妙義山)の一つとされ、“日本のドロミテ”とも呼ばれる大自然の造形美は見事です。三千年前縄文人が神の山と崇めた信仰の山で、まるで中国の水墨画のような姿と深い森、そして自然の営みを感じさせる妙義山の代表的なモニュメント「石門」があり、岩肌がはっきり見える姿に圧倒されます。

妙義山の主峰である白雲山と金洞山を結ぶ縦走路は、難易度が高いことで知られます。尾根道は身の幅しかなく、ほぼ垂直に近い長い鎖場の連続、もちろん登山初心者が登れるような場所ではありません。しかしこのたけだけしい山塊の中に、初心者でも楽しめるトレッキングコースがあり、それが「石門めぐりコース」です。

妙義山の中腹に摩訶不思議な景観の石門群と呼ばれる大きな浸食穴をもつ岩が4つ点在します。その桁外れの大きさの石門を巡る登山道が魅力で、表妙義の妙義神社から中之嶽神社まで結んで妙義山の山腹を横切る「中間道」と呼ばれるトレッキングルートがあります。登山道の途中には、鎖場や鉄階段、石の庇なども登場します。両手両足をフルに使って登山道をつき進んでいく感覚は、日常から解放され、その懐に飛び込むために神経が研ぎ澄まされ、大冒険をしている気分に酔いしれる楽しいものです。ルートはきちんと整備されていて、初心者でも楽しめ、ただ歩くだけではないちょっとスリリングな冒険心をくすぐるアドベンチャーマウンテン妙義山に挑戦です。今回は中間道のうち、本読みの僧の先、タルワキ沢入口と妙義神社方面へ第二見晴の間が崩落しており全長約2.5km、標高差200m、所要時間2時間ほどの「石門めぐりコース」を歩きます。

ご当地かるたの上毛かるたでは“も”は『紅葉に映える妙義山』と詠まれています。上信越道で最寄の松井田妙義ICで下り、上毛三山パノラマ街道(県道196)を走っていきます。漫画『頭文字(イニシャル)D』のモデルにもなったクネクネした峠道です。

出発地の中之嶽神社の入口前にある県立妙義公園駐車場(トイレも完備し400台駐車可能)に車をとめます。標高720m、ここから前方を見上げるとさっそく荒々しい岩山が眼前に迫ってきます。飲料水の自動販売機もあり、トレッキングの準備をしっかりしていきます。ここは「県立森林公園 さくらの里」の駐車場でもあり、さくらのシーズンには紅葉シーズンとはまた違った華やかな雰囲気になります。

駐車場から400m、5分ほど県道196号を下った左手(山側)先に「名勝 石門群登山道」と書かれた階段の入口が見えてきます。この妙義登山道入口から本格的な登山道へと出発します。(入口前にあるさくらの里駐車場は9時から開門になります) 道路沿いでわかりやすくここから約2時間のアドベンチャーへ出発です。案内図で石門の位置をチェックしておきます。

道路の反対側には金鶏山のピークのひとつ筆頭山が望めます。妙義を作る火山の吹き出し口だったとされ、この岩山に1912年イギリスの登山家ウォルター・ウェステンがザイルを使って初めて登頂したことから妙義山は近代登山発祥の地といわれています。(現在では筆頭山へは登れません)

石段の登山道を歩き始めてすぐに高さ3mほどの鎖場に慣れるためなのか「カニのこてしらべ」というスポットに出会います。身長より少し高いぐらいの鎖場で、軽くウォーミングアップ程度ですが、冒険心をくすぐります。初めてであれば少しびっくりしますが、実際に鎖につかまって登れば、勇ましくなった気がします。岩を上る足の置き場には窪みがあり初心者でも難なく登れます。ぜひかにからの挑戦を受けてたちましょう。無理な人には横から迂回ルートもあるので安心です。全身を使い鎖場を登り切り、岩上にでます。

大きな岩を敷き詰めた石畳の道をすこし進むと下の分岐に出会います。本来のルートは、ここを左手にとり第一石門、そして第二石門へと向かいます。第一石門の先、第二石門は石門巡り一番の難関なので自信がない人、特に腕力に自信のない人は、第一石門を見てここまで戻り、右手方向へ第四石門・大砲岩への近道に向かい鎖場を迂回することができます。

目に入ってくるのが「第一石門」です。巨大なアーチ状の岩の門がまるで登山者を迎え入れてくれるかのようです。高さ約30m、横幅約15mの大空間を見上げると地面が見えなくなる程の大きさに驚かされます。その下はくぐれるようになっていて真下まで来ると鳥の鳴き声が岩肌に反響しています。アーチの向こうに大きな空と遠く街並みがかすんで見えます。石門の下を整備された登山道が続いています。足元はつるつるの大きな岩が幾つも重なり段差も大きく、この山がさまざまな岩の塊でできているのを実感します。

石門の奥には昭和29年(1954)7月に柴垣はるさんという人がこの付近の土地を県に寄付したことから県立公園として妙義山が整備されたという経緯を説明した石碑があります。

驚きが醒めぬまま整備された登山道を進むと上部にそそり立った岩に縦に細長く穴が開いた第二石門が見えます。「カニのよこばい」「たてばり」「つるべさがり」と呼ばれる鎖場は「第二石門」をくぐるためのこのコース最大の難所です。切り立った地形ゆえに高度感はあるものの足場も鎖もきちんと整備されているので、実は難なく通過することができます。

まずは第二石門下の「カニのよこばい」は、10mほどトラバース(横移動)していきます。鎖を握り締め、岩のくぼみに足を載せて慎重にかにのように横歩きで進みます。谷側の傾斜も緩く、足を置くところにはほとんど窪みがつけられていて、足跡を辿っていけばすんなり通過できます。

「カニのよこばい」終了地点から一番の難所「たてばり」が始まります。樋状になった中央に鎖が設置されていて、樋をまたいで上っていきます。左右の岩に足を架けるところがたくさんあるのでちょっと腕力が必要ですが、しっかり鎖をもって足を岩に引っ掛けて一歩ずつ確実に上っていきます。鎖場を登る際には三点支持(両手両足のうち1点のみ動かし、残りの3点を動かさないようにして体をしっかり支える)が基本です。ここまで第一石門から10分で到着です。

石門から見える景色はまるで額縁のようで、ローソク岩が綺麗にそのシルエットを浮かび上がらせています。

第二石門をくぐれば、上りがあれば下りがあるように約8mの鎖場「つるべさがり」と呼ばれる下り斜面が待っています。しっかりと鎖を持って、足から下りていきます。ほとんど鎖にぶら下がった状態でゆっくり真下に下りていきます。

鎖場のポイントは両手両足を使い必ず全身でバランスを取ることです。急に見える鎖場もふと下を見て怖くなっても慌てずに必ず鎖を持って片足をどこかに引っ掛けていれば大丈夫です。二通りのルートがあり、トラバースしながらの下降とそのまま直に下降するルートがありますが、後者(左の壁側)のほうがやや楽なように感じられます。写真は反対側から見たもので、第二石門をくぐり振り返ると小さな穴が縦に割れているのが見えます。

さらに「片手さがり」をおります。写真だとわかりづらいですが結構な高さがありスリリングです。足の置場が狭い岩の階段があるので片手だけで下れそうですが実際はしっかりと両手で鎖を持って足場を確保しながら慎重に下りていきます。

少し歩くと上の分岐という、これまでの難所を通らずに行ける下の分岐からの迂回路と合流します。

大砲岩方面に向かって登っていくと見えてくるのが石門群の中でも目玉とも言える「第四石門」です。途中「第三石門」へ向かう「上の分岐」があり、左手に20m、3分ほど奥に行った先に第三石門がありますが、その先は崖になっていて行き止まりですので一見したら戻ってきます。途中鎖場のトラバースがありますが問題ありません。

上の分岐から2、3分の急傾斜を歩くと視界が開け、陽光に輝く巨大なアーチ「第四石門」が現れます。「第四石門」は、細長くアーチ状になっていて、大きな穴の向こうには、まるで宙に向けられた大砲のような形の、その名も「大砲岩」が見えます。

本当に大砲そっくりで、自然が作りだした造形にこれが妙義山かと見入ってしまいます。石門や大砲岩は、江戸時代の書物にも書かれていて、古くから信仰と観光を兼ねた『妙義詣で』で人を集めた山でした。麓からは決してその全容が見えない石門や奇岩の連続する妙義山は、その懐に奇妙かつ美しい造形を秘めていました。だからこそこうして歩いて登って見に来る価値があります。大砲岩に登っている人影が見えますがこれからそこを目指します。

手前の広場には東屋やテーブルもあり休憩できるので、お弁当を広げるのにもいいです。また石門の右手の大岩からの景色は「日暮(ひぐらし)の景」と呼ばれ、一日みていても飽きないことからこう呼ばれています。その下は断崖絶壁で背筋がちょっとゾクゾクしますがここからのパノラマは文句なしに素晴らしい。

石門をくぐり「大砲岩」への分岐に出ます。ここからは本来のハイキングコースではなく、鎖場の連続で岩場つたいになりますので滑落しないように十分に気を付けて無理をせず進んでいきます。

鉄柵やロープをつたって短い痩せ尾根を進みます。

鎖場で5mほど真下に一旦下ります。しっかり鎖を持ち足場を確保してゆっくり下りて行きます。

鞍部からは第二石門と同様に斜面を急な岩場に付けられた鎖を頼りにトラバースしていきます。足跡がついた窪みがあるので鎖を持っていれば大丈夫ですが油断は禁物です。

さらに少し先の鎖場から5mほど岩場をよじ登っていきます。高度感が半端ではないので無理はしないようにします。登りきったところがテラス(といっても両側は崖です)になったところで一息つけます。

登りきったところから見る景色は、大砲岩が目前にあり、その奥にはゆるぎ岩がそびえたっています。

大砲岩へ登ることができますが、無理をせず砲台から「第四石門」が見下ろすことにします。

正面には「天狗のひょうてい」と呼ばれる展望台のような岩が見えます。かなり細い岩場道を進んだ先の3mほどの垂直の岩壁を登るこの鎖場は難易度が高い所です。無理は禁物です。

岩上からの眺めは絶景で大砲岩やゆるぎ岩などが目前に見えますよ。

白雲山方面もバッチリです。

また左手には「胎内くぐり」があります。岩の真ん中に穴が開いていてくぐることができます。どちらも高度感が高いので無理は禁物です。

危険ゾーンから大砲岩との分岐まで戻り妙義神社を目指すトレッキングルートは山腹に沿って歩いていきます。全行程を辿る時間がない時は片手さがりの手前の上の分岐まで戻りそのまま下って出発地点に戻ります。石門をくぐる鎖場等は回避して楽に戻れます。

今回は途中道が遮断されていることもあり、帰りは違ったコースで下山ということで、第四石門の東屋まで戻り、中之嶽神社方面を目指し階段を上ります。ここから先は途中申し訳程度の鎖場もありますが道の整備状況が良く歩きやすくなっています。

出発して20分、260mほどで見晴台と書かれた案内板があります。

30mほど少し奥に入ると見晴台には2つの岩があります。

手前の岩は足場もあって上に登ることが可能で、奥の岩には小さな祠があります。

標高914m、コース最高地点は第四石門を見下ろす絶景ポイントです。手すりなどはないので恐る恐る登ってみると眼下にはまさしく絶景が広がっています。見下ろすと高度感が凄く、思わず気分が高揚しますが、岩場での行動は慎重にです。15分ほど歩くと中之嶽神社の裏手に出ます。

程なく丸みを帯びた大岩にすっぽり収まった神秘的な拝殿の脇に出ます。拝殿と幣殿のみで本殿を持たず巨石「轟岩」を御神体として祀る「中之嶽神社」です。1000年以上の歴史を持ち、幣殿が岩に突き刺さるように設けられています。妙義山を修行の場とした修験者は昔から多く、中でも中之嶽神社を再興したといわれる長清道士は、山中の洞窟で長寿の法を極め、江戸時代の延宝年間に148歳で往生したといいます。

拝殿からは145段、斜度40°の長い急な階段を神社に祀られている黄金色の大黒様を見ながら下りていきます。

一般的に大黒天は木槌を持っていることが多いのですが、高さ20m、重さ8.5tの巨大な黄金剣を持つ大国様が特徴的で、県立妙義公園駐車場からも鳥居の向こうにある黄金に輝く巨大な大黒天像は見つけやすく目印になります。

境内のそばにある食堂は昭和レトロな雰囲気が懐かしい。こんにゃくや味噌田楽やそばなど素朴なメニューが楽しめます。

赤い鳥居が石門めぐりコース(1時間半~2時間半コース)の終着点です。休憩時間を除けば約1時間半で一回りすることができる気軽に楽しめるコースです。(大砲岩方面の鎖場は除く)見どころも5~10分おきに次々と現れ、鎖場のように妙義山の険しさの一端も感じることができつつ、整備された道標に従って進めば鎖場を通らずに一回りすることもできるバランスのよいコースです。

冒険と非日常の絶景がコンパクトに詰まった妙義山の「石門巡りコース」を挑戦してよかったです。

 

 

 

 

 

 

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