北信濃屈指の須坂の花見処・臥龍公園と里の一本桜にようこそ

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ぽかぽか陽気に誘われてほころぶ桜の花、4月中旬蔵の町として知られる信州須坂のお花見シーズンがやってきます。江戸時代、須坂藩13代藩主堀直虎によって桜花図『叒譜(じゃくふ)』がまとめられ、その歴史が脈々と流れる桜の町です。さくら名所100選の「臥龍公園」で竜ヶ池を囲む桜を愛で、郊外の豊丘地区に点在する昔ながらの里山の風景に溶け込む隠れた名木「豊丘五大桜」をめぐる桜ウォーキングを楽しみに出かけます。「すざかでさがす春」出発です。

毎年20万人以上が訪れる「臥龍公園さくらまつり」。信州須坂市の中央に位置する全国でも珍しい市街中心部に位置する「自然園」として親しまれ、日本のさくら名所100選に選ばれている臥龍公園は、古墳や城址があり竜が伏せた形に似ていることから臥龍山と呼ばれる小山を背景に竜ヶ池を囲むように里山の自然を生かした遊歩道が整備された市民の憩いの広場です。公園の設計は、日比谷公園などを設計した日本の「公園の父」と呼ばれた林学博士・本多静六が担当し、昭和6年(1931)に市民の健康第一を掲げる自然園をコンセプトに造られました。

広い竜ヶ池を囲むようにどこまでも続く200本の桜並木、公園全体では24品種800本の桜が咲きます。見頃の時期は露天が並び、休日は朝からシートを持った地元の花見客でにぎわいます。

竜ヶ池に浮かぶ弁天島に架かる弁天橋の朱色の橋と桜ののコントラストが美しい。

臥竜橋に向かって鮮やかに開く桜の花が湖面に反射し、シンメトリーの幻想的な桜並木の風景が映しだされ、北信濃・須坂の春を彩ります。

昼間の水面に映る桜並木を見ながらの散策も心地よいですが、さくらまつりの間の満開の期間中のみ日没とともにライトアップが始まります。水面に映し出される夜の桜もまた格別、漆黒のうるしを流したような水面に桜が浮かび上がり、妖艶な美しさに心惹きつけられます。

歩き疲れたら桜の花びらが浮かぶ池でのんびりとボートに揺られて桜を眺めてみては如何でしょう。水の上から見る桜は陸とはまた違う趣が感じられます。

臥龍公園に併設された須坂市立博物館には、元和2年(1616)の初代藩主堀直重から明治4年(1871)の14代堀直明まで260年にわたって続いた歴代須坂藩主が描いた日本画や詠んだ俳句、親しんだという茶道具などが飾られています。数ある所蔵品の中から毎年桜の時期にのみ公開されているのが、『叒譜』です。「叒」とは神木の意で、日本人にとって古来から馴染みのある桜を、神木ととらえた桜の図譜です。江戸時代の桜の自生種・園芸種をほとんど網羅した図譜で、文久元年(1861)13代須坂藩主堀直虎が序文を書き、まとめたものです。写本とされる2冊は国立国会図書館が所蔵していますが元本の一冊は須坂市立博物館が所蔵しています。本物は貴重なため触れることはできませんが複製は手にとって見ることができます。(写真は複製)

当時江戸市中でみられた250の桜花図が綿密に描かれ、桜の品種の数は187種にもなり、桜研究の貴重な資料となっています。展示期間中、『叒譜』に描かれた250の桜花図がずらりと並びます。

臥竜公園から百々川を渡った先に、ブドウ畑の中に佇む隠れ家的な蕎麦屋、戸隠手打そば処「たけの春」があります。戸隠の名店「よつかど」で修行された店主が営むお店で、戸隠から仕入れる粉を使う蕎麦は戸隠スタイルのぼっち盛りで、水を切らずに提供されるこだわりのお蕎麦屋さんです。店内はテーブル席と小上がりがり落ち着きた雰囲気です。お店の真ん中にストーブが置かれ信州ぽさがあります。蕎麦は瑞々しく適度な弾力があって香り豊かです。鰹がしっかり効いた蕎麦汁との相性も良く、キリっとした味わいになります。薬味はネギ、大根おろし、わさびの三種をお好みでいただきます。須坂で戸隠そばがいただける良いお店です。

かつてこの地を治めた13代須坂藩主堀直虎が無類の桜好きだっやことと関係しているかどうかわからないが、須坂市内には、昔ながらの里山の風景に溶け込み、堂々たる銘木が点在しています。臥龍公園から県道346号五味池高原線で奈良川に沿ったのどかな山里である豊丘地区には、そこかしこに一本桜があり訪れる人の目を楽しませてくれます。特に須坂市指定天然記念物でもある「豊丘五大桜」は信州高山村の五大桜にも負けない美しさです。

温泉旅館「福寿荘」を過ぎた大日向バス停近くに最初にあるのが「大日向観音堂のしだれ桜」です。一対の桜が寄り添うように立ち「観音堂の夫婦桜」として親しまれています。推定樹齢250年ほどで、寛永元年(1624)に建立されたといわれる村人の素朴な信仰の観音堂を包むように弧を描いてほころんでいて、ひときわ濃い紅色と風情豊かなロケーションです。子しだれ、孫しだれもあり訪れる人を楽しませてくれています。見頃は4月中旬です。※2017年積雪により妻桜が倒木、現在は樹齢100年の子桜、樹齢10年の孫桜が父桜を見守っています。

樹高約20mから薄紅の滝となってしだれ落ちる枝と花は美しく、里山の原風景と言えるような場所です。黄土色の壁のお堂と背景の杉林が桜を一層映えさせています。観音堂には十一面観音、如意輪観音、岩船地蔵の石仏像が祀られ、桜の時期には自由に御詣りできます。前の道は旧三原道といい、かの国定忠治も歩いたといわれています。

県道346号沿い豊丘バス停近くにある青木山長玅寺と刻まれた石碑から参道を歩きます。石段を上り山門をくぐったところに現れるのが「長玅寺の桜」。裏山を背に本堂に寄り添うように咲く二本のしだれ桜の枝先まで咲きこぼれるその佇まいは、まるで薄紅色の傘のようです。

樹齢400年、樹高7.5mを超える桜樹の風格を下から見上げるのも素敵ですが山門の二階からも本堂とともに一望できます。須坂市指定天然記念物で見頃は4月中旬から下旬になります。


長玅寺から東へ400m程、民家の間の路地の奥まったところに「洞入観音堂の桜」があります。観音堂の右側の斜面に背の高いしだれ桜が迎えてくれます。

県道346号沿い豊丘小学校の向いにあるのが「延命地蔵堂の桜」です。旧園里学校近くにある市内最古最大の古木で、推定樹齢400年以上のエドヒガンザクラです。根周り約6m、樹高約10m、梢は東西南北に約15m広がり、支柱で支えられている古木とは思えないぐらい、淡い白ピンクの花をたっぷりとまとい、扇型に広がる枝ぶりは見事です。感動の古木の風格と母木のやさしさを漂わせる姿は須坂市指定天然記念物に指定されています。開花時期は4月中旬から下旬になります。

豊丘小学校から細い山道を上って行った先、梅ノ木地区の高台に咲く見事な一本桜がプロの写真家も認める美しいしだれ桜の「弁天さんのしだれ桜」です。標高730m、奈良山から北アルプスと須坂市街地を見渡す景勝地にある湧水池「弁天池」に姿を映して咲き誇るしだれ桜は、推定樹齢250年、幹周約4m、樹高は約7m。貫禄たっぷり、壮観なまでの美しい佇まいは一見の価値ありです。

この地は池の前の川中島合戦ゆかりの「謙信道」に沿って灰野峠を越えて高山村水中にぬける林道「月生線」が通り、戦国武士の隠れ里伝承を今も残す地で、ゆったりと枝を広げています。須坂市指定天然記念物の中で高台にあることから弁天さんのしだれ桜だけが一週間ほど遅れて満開になります。

臥竜公園さくらまつりにあわせて、臥龍公園の近くの施設では様々なイベントが行われています。中でも百々川沿いの“恋人の聖地”でもある須坂アートパーク内の「世界の民族人形博物館」では毎年須坂市名物の豪華絢爛な高さ6m「三十段飾り 千体雛祭り」が催されています。須坂版画美術館の2館でも展示されていて壮麗な姿は圧巻の一言です。

須坂藩の御用達を勤め、須坂藩を凌ぐほどの財力を誇ったといわれる「豪商の館 田中本家博物館」では、田中本家代々の雛人形や直虎等須坂藩主をもてなすために揃えられた品々が公開されています。もちろん邸内に樹齢200年余のシダレザクラの古木が3本あり、それぞれ屋敷に映えて風情豊かです。4月中旬頃が見ごろです。

元治元年(1864)創業の銘酒“渓流”で有名な「遠藤酒造場」は、須坂藩主の献上種の醸造元でもありました。さくらまつりにあわせて「花もだんごも蔵開き」と銘打って、蔵見学ツアーや利き酒、甘酒が味わえます。袋吊りしぼりのお酒を味わえるのも蔵開きだけなので車でない方は是非味わってみてください。

 

 

 

 


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