桜と菜の花の競演!葦の原を行く舟遊び・近江八幡水郷めぐり

※この記事で紹介する内容にはPR・広告が含まれています。

琵琶湖東岸の中ほどに位置する近江八幡市。琵琶湖国定公園の自然が楽しめ、豊臣秀吉の甥、豊臣秀次が城を築き、楽市楽座を実施して繁栄させた城下町。琵琶湖からの水路がひかれて栄え、近江商人の町としても名を馳せています。手こぎの和船から水辺の景色を楽しみ、おいしいバームクーヘンの代名詞「クラブハリエ」や名だたる近江牛に舌づつみを打つ、そんなのんびりとした旅にでかけてみます。

近江八幡は水と歴史の町。琵琶湖に隣接した西の湖を中心に、よしの生い茂る湖沼、水路が交わり、広がります。「水郷めぐり」の歴史は古く、今からおよそ450年前、この地を開いた豊臣秀次が宮中の雅な舟遊びを真似て、戦国の武将達とともに舟中で句を作り、謡の会、茶の湯を催し、その労を癒したのが始まりといわれています。長閑な田園とヨシの群生地帯に囲まれた迷路のように続く水路は、四季折々の風情にあふれ、季節を問わず多くの観光客が体験に訪れます。現在は市内にある手こぎ船の「近江八幡和船観光共同組合」「水郷のさと まるやま」、エンジン船の「びわ湖観光株式会社」「島真珠水郷観光船部」の計4社で体験することができます。事前にコースを確認して予約するのがおすすめです。

今回乗船したのは水郷めぐり発祥の地である「豊年橋」を発着する手こぎ舟、元祖「近江八幡水郷めぐり」の「近江八幡和船観光共同組合」さんです。4社ある施設の中で一番古く、約40年の歴史があり、司馬遼太郎作『街道をゆく』にも登場しています。近江八幡の開町以来の歴史と伝統を守り、また水を浄化する「よし地帯」保護のため、あくまでも手こぎ舟にこだわる本物の水郷めぐりで、水と緑に恵まれた近江八幡の春を楽しみます。実は写真によく掲載される“桜と菜の花の競演”は、近江八幡和船観光共同組合の水郷めぐりコースでしか見れないのです。

まずは近江八幡和船観光共同組合の、豊年橋の舟乗り場で受付を済ませ、担当の船頭さんから名前を呼ばれると順番に乗船開始です。茅葺き屋根の待合場所は、もともとヨシの保管場所になっていた建物です。足元に気を付けながらわくわくしながら乗り込み、船頭さんが船のバランスを考えて指示する場所に座っていきます。

こちらの船は昔ながらの屋形船スタイル。それを船頭さんが櫓一本で漕いで“日本一遅い乗り物”がモットーの手こぎ船は、近江八幡の水郷を80分くらいでひと回りしてくれます。※船頭さんの体力次第なので疲れている後発の便は100分程かかります。

近江八幡市の水運の玄関口として栄えた「水郷めぐり発祥の地」である豊年橋をくぐって出発します。

北の庄沢の迷路のようなヨシの群生地を古風な手こぎ舟でゆっくり進んでいき、四季の表情を映す水面に波紋がのんびりと拡がります。バンという水鳥が気持ちよく泳いでいます。

「ヨシ」は「葦(アシ)」とも呼ばれるイネ科の植物。水郷地帯の美しい景観を生み、夏には4mまで青々と茂り、秋になると葉を落とし黄金色に変化します。西の湖周辺のヨシは、ヨシ細工の円山として有名で、昔から葦簀等に使われてきました。水を浄化する機能を持ち、浄化された水は水辺に生息する鳥や魚たちにとって“命の水”となっています。琵琶湖の自然は固有種の湖魚を使った佃煮や鮒ずしなど、独特の食文化を育んできました。カルガモやカイツブリなどの水鳥の姿に癒されます。

舟の行く手に見えるのは、カワヤナギの古木。途中、ウナギの筒が仕掛けてあったり、桜並木の水路を通ったり様々な景色に出会えます。

木の上部には宿り木のモコモコした塊を見ることができます。その名の通り樹木に寄生する植物です。

桜はコースのあちらこちらにありますが、このコースのメインとなる“桜と菜の花の競演”は、最初のヨシの群生を抜けて二つ目の橋・兼平橋をくぐって通称さくら堀という掘割りに入ったところから約40本のソメイヨシノが200mに渡り、頭の上に覆いかぶさるように咲いています。そしてその根元と土手には黄色い菜の花が彩を添えています。乗船せずに写真だけ撮るなら米塚橋が撮影スポットです。

掘割りに架かる三つ目の橋・米塚橋、4つ目5つ目の閘門橋をくぐり、狭い水路を抜け湖沼に出ると、今までの景色とはうって変わったように、雄大な水面が広がり、一気に視界が開けます。ここは琵琶湖最大の内海「西の湖」の南西端にあたる。西の湖を中心とした水郷地帯は「近江八幡の水郷」として国の重要文化的景観に選定されています。

櫓だくでなく竿も巧に操る船頭さん。時代劇のロケ地など、見どころを教えてくれるのも楽しい。写真の6つ目橋のもどり橋は必殺仕事人などの時代劇のロケ地になる木橋です。コンクリートの橋脚はコンピューター処理で消されているらしいのですが。

舟に揺られながら、遠くの景色を眺めていると、豊臣秀次がこの地を居城として選んだのにもうなずけます。ここは近江八景のひとつに数えられる景勝地『春色 安土八幡の水郷』です。水辺にはアオサギなどの鳥や、亀が生息しています。目の前には、泳ぐ水鳥の向こうに八幡山や安土山がそびえ、湖岸には広大なヨシ原が続いています。手前に見える山が安土山でかつて戦国の覇者・織田信長が築いた安土城があった場所です。信長が城から西に見えるので「西の湖」とつけたといいます。いにしえの近江に思いを馳せます。

秀次をはじめ、ここで舟遊びをした風流人達は、この青空に広がる山々など壮大な自然の景色を見て一体どんな句を詠んだのだろうか。誰しも詩人にしてしまう、そんな素晴らしい景色に心癒されます。

7つ目の橋・焼田橋をくぐって西の湖とお別れします。

船頭さんの巧みに操る和船に揺られ、再びヨシ地帯の細い水路に戻ると、小さなお社が見えてきます。

このお社には水郷の守り神「よしの大龍神」が祀られていて、船上から手をあわせてお参りしておきます。水が生命の源であることから無病息災、延命長寿のご利益があるそうです。

コースの途中にはいくつもの橋がかかり、その下をくぐるのも楽しい。いよいよ終盤に入り春のこの時期、満開の桜や風流な水柳が見れる水路を、櫓の音に耳を傾け、水面を滑るように進む舟に心地よく揺られていると、あっと言う間に8つ目のよし笛橋、9つ目の岩崎橋、10番目の幸田橋をくぐって終点です。

目に入るのは、水と空とヨシの群生だけ。聞こえるのは、鳥の声と風の音と水の音・・・。船頭さんの櫓さばきに身を委ねて、ちょっと子供のころに戻れる気がする、そんな小さな船旅でした。

県道20号線沿いの近江八幡和船観光共同組合の乗船乗り場と目と鼻の先にあるのが、和菓子の「たねや」と洋菓子の「クラブハリエ」を核とするたねやグループが2015年1月に八幡山を背景に水郷地帯を前にする北之庄の広大な敷地に“人と自然の共生”を謳うフラッグシップ店「ラ コリーナ近江八幡」をオープンした話題のスポットです。駐車場からウクライナにある愛のトンネルのような(かなり短いですが)木漏れ日さす木々のトンネルを通り抜ければ、眼の前にその斬新な建物が現れます。

コリーナはイタリア語で「丘」という意味。世界的な建築家・デザイナーであるミケーレ・デ・ルッキ氏がこの地を訪れ、小高い丘からの眺めに名付けられました。

広大な緑あふれる敷地にある屋根が芝で覆い尽くされたユニークなメインショップやカステラショップ、フ-ドガレージなどはの建築デザインを手掛けたのは、東京大学の名誉教授も務める世界的な建築史家で建築家の藤森照信氏。ちょっと他では出会えない独創的な空間はまるでテーマパークのようで心が弾みます。

メインショップの1階は和・洋菓子の販売、2階のカフェでは注文を受けてから職人が手掛ける“つくりたて”の「生どら」や「どらケーキ」がいただけます。※2023年5月10日オープン

敷地はなんと3万5000坪、甲子園球場のおよそ3個分の広大な敷地にな豊かね自然を囲むように建てられたショップ棟を回廊が弧を描くようにつないでいて、散策路のように歩けるようになっています。

建物の周囲には森、田畑、小川などが息づき、中庭には木の扉を開けられる土塔、滋賀県が発祥といわれる飛び出し坊や「とび太」くんのたねや&クラブハリエバージョンなど、フォトスポットもたくさんあります。

メインショップを正面に左回りに写真の右から栗の木を100本以上も使って建てられた「カステラショップ&カフェ」、ハットを被せたような本社オフィス、そしてその隣には2023年1月11日にオープンした「バームファクトリー」が建ちます。クラブハリエで最大規模を誇るバームクーヘンの新店舗は真上から見るとバームクーヘンの形になっているとのこと。建物は2階建てで1階がショップ、2階がバームファクトリーカフェになっています。

バームクーヘンをイメージした内装のバームファクトリーカフェでは焼き立てのバームクーヘンが味わえます。

おすすめは「焼き立てバームクーヘンminiセット」。焼き立てのバームクーヘンはふわふわ感とたまごの風味が際立っています。オリジナルブレンドのコーヒーも良くあいます。

メインショップの右手、左回りで歩いた最後には、おみやげ探しに2階建てロンドンバスがシンボルの「ギフトショップ」に立ち寄ります。おもちゃ箱をイメージしたというガレージにクラブハリエやたねやのスイーツがほかのお店と違ったかわいいパッケージで売られています。バスの中ではマカロンを販売しているので入ってみましょう。

フードコートやパンショップなどもあり、歩き疲れたら空気が澄んだ広い空の下で回廊に置かれたベンチに腰を下ろして、ひと休みするのもいいですよ。

この後夕食に近江牛を食べに行ったのは言うまでもありません。船に揺られてにんびりした一日でした。

 

おすすめの記事