懐かしのロマンスカーで行く長野電鉄・北信濃ワインバレー列車

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2016年末の登場以来、ワイン好きを虜にする北信濃ワインバレー列車。長野電鉄の赤白の列車に乗り、地元の赤白ワインを謳歌する“飲み鉄”の旅へ。特製弁当を彩る北信の恵みと車窓に流れる北信の山並みに乾杯です。

急峻な山に囲まれ、水はけがよく、ミネラル分を多く含んだ土壌。降雨量が少なく、日照時間が長く、昼夜の寒暖差大きい気候。長野県はワイン用ぶどうの栽培に適していて、日本有数のワイン用ぶどう生産量を誇ります。そのぶどうの力を引き出して良質なワインを醸すワイナリーが県内各地にあり、それぞれが高い評価を受けています。

県内には4つのワイナリー集積地があり、それぞれを「桔梗ヶ原ワインバレー」「千曲川ワインバレー」「天竜川ワインバレー」「日本アルプスワインバレー」としています。特に千曲川ワインバレーの下流域では、土地ごとの個性あるワインをつくる小さなワイナリーが集まって、さらに観光や飲食とも結びついて、それぞれの産地の魅力を発信しています。

長野駅と温泉で有名な湯田中駅を結ぶ長野電鉄には、ちょっと懐かしい特急、元小田急ロマンスカーの「特急ゆけむり」が走っていますが、土休日限定で運行する特別列車が「北信濃ワインバレー列車」です。通常の「ゆけむり」が長野~湯田中間を45分で走るところ、1時間24分かけていきます。日本一ゆっくり走る特急列車に乗って、おいしい長野県産ワインを飲みながら車窓を楽しみ、のんびり、ほろ酔いの旅に出かけます。

長野駅の発車は午後13時8分。待ち構えていた乗客たちから「おー、ロマンスカーだ!」と歓声があがります。小田急電鉄で1987年から2012年まで活躍したHiSEで、10年前のロマンスカーになります。

「おいでなし隊」のネームプレートを付けたアテンダントさんに迎えられて乗車すると、指定席にはすでに窓際にワイングラス2つあり、ひとつはウェルカムドリンク(たかやしろファームの白)が注がれています。テーブルには湯田中の人気店「Japanese Dining GOEN」によるオリジナル「特別箱膳」がセットされていました。ワインバレー専用車両は、全席指定のボックス席になり、ヘッドレストの生地もワインレッドで統一され、高級感が感じられます。

車両の中央にあるワインカウンターには、須坂市・中野市・飯綱町・高山村など北信濃のワイナリーから厳選された赤、白のワインが揃います。乗車して約80分間、飲み放題で楽しめ、初めは何から飲もうか、出発前からワクワクします。専用乗務員の方がスタンバイしたら、グラスを持ってお目当てのワインの名前を告げます。銘柄は、座席に配られている「本日のワインリスト」で確認できますが、ワイナリーや銘柄は季節によって異なります。この日のワインリストは、須坂市にある「楠ワイナリー」の『楠R』(赤)と『ソーヴィニヨンブラン』(白)、中野市にある「たかやしろファーム」の『カベルネソーヴィニヨン&メルロー』(赤)と『ソーヴィニヨンブラン』(白)、飯綱町にある「サンクゼール」の『長野ルージュ』(赤)と『シオン』(白)、高山村にある「カンティーナ リエゾー」の『チャオチャオロッソ』(赤)の7種類でした。

少しワイナリーの紹介をすると、須坂にある楠ワイナリーは、楠茂幸さんが大型航空機の国際リースビジネスに携わった20余年間の会社員生活の後、オーストラリアのアデレード大学大学院でワイン醸造学とブドウ栽培学を学び、平成16年(2004)に故郷である須坂。日滝原で新規就農、平成23年(2011)自社醸造を開始しました。和食によく合う優しく上品なワインを醸しています。

中野市にあるたかやしろファームは、「たかやしろ」の愛称を持つ高社山の南麓に自社畑を持つ巨峰農家4軒が出資して平成16年(2004)に会社を立ち上げました(※現在は3軒)。栽培のプロたちが品種ごとに土地や気象条件との相性を鑑みながら、畑に根差したワインづくりを行っています。

飯綱町にあるサンクゼールの本店のあるフランスの田園地帯を思わせる丘には、平成2年(1990)設立のワーナリ―のほか、ぶどう畑やレストラン、ジャム工場、チャペルが点在します。豊かな農村文化から上質なワインを生み、りんごの産地らしく、地場産りんごのシードルも秀逸です。

カンティーナ リエゾーは、「日本で最も美しい村」に加盟している高山村に、サンクゼールで栽培、醸造に携わった湯本康之さんが地元で平成19年(2007)から栽培を開始、平成27年(2015)に村内初となるワイナリーを完成させました。日本では珍しいベルバーラというイタリアで多く作られている品種などを栽培する家族で営む小さなワイナリーです。

ワイン列車では、「のんびり弁当」として湯田中の人気店「Japanese Dining GOEN」のオリジナル「特別箱膳」が味わえます。ワインの用意ができたののでお弁当を開けてみると、中にはヘルシーでワインとのペアリングも好相性のおつまみが見た目も美しく並び、食欲をそそられます。。本日のお品書きは、自家製信州福味鶏のハム~信州野菜を添えて~、GOEN特製ロール寿司、ホタテと海老のチーズグラタン、白身魚の唐揚げ、~信州産キノコと姫竹のあんかけ~、自家製ピクルス、季節食材のゼリー寄せ、のり巻きチーズ豆腐とモッツァレラチーズの7品です。この食材にはこのワインが合う、合わないといいながらワイン談義に花が咲きます。

「いつもより、頑張って、のんびり運転あいます」という運転士からのアナンスとともにガタゴトと走り出した列車は朝陽駅から単線になり、しばらく走ると千曲川の上の鉄橋で減速し景色を楽しませてくれます。長野市と須坂市との間に架かる村山橋は、長野電鉄長野線国道406号とが共用する珍しい鉄道道路併用橋ですぐ横を車が走りぬけて行きます。全長837.8m、車道幅3.25mの4車線、、歩道幅3.5mで両側歩道、鉄道幅4.8mのロングレール、ワーレントラス橋と桁橋の組み合わせになっています。

ワイン列車のもう一つの魅力は、車窓の景色です。北信濃の田園風景、ゆったりと流れる千曲川の川の水は澄み、ぶどうやリンゴの畑が広がる盆地の先に険しい峰を連ねているのは飯縄山、戸隠山、黒姫山、妙高山といった北信五岳と呼ばれる山々で、見飽きることがありません。そんなぜいたくな車窓の景色を眺めながら沿線ワイナリーのワインが飲み放題。超低速で走る列車は、揺れも少なく、ほろ酔い気分の車窓の旅にはぴったりです。

日本一遅く走る特急列車、のんびり号では、車掌さんによる沿線の観光案内や、歴史にまつわるエピソードに加え車掌さんの生歌が聞けます。この日は長野県歌「信濃の国」の一番、♪信濃の国は十州に~境連らぬる国にしてと、昔の国名を説明していました。途中の小布施駅では20分ほど停車します。列車内にトイレがないのでこちらで利用しておきます。

小布施駅を出発してからも楽しいワインバレー列車の旅は続きます。楠ワイナリーの白もたかやしろファームの白も「ソーヴィニヨンブラン」という品種ですが前者は青リンゴのような風味と香り、スッキリとした飲み口で、後者はウェルカムドリンクにぴったりの食前酒おすすめの飲みやすい味です。サンクゼールの白はシャルドネ種でステンレスタンクで醸したフレッシュ感のある爽やかな飲み口でした。

赤ではカンティーナ リエゾーのチャオチャオロッソは、柔らかめの軽い飲み口で食中酒におすすめ。楠ワイナリーの楠R、たかやしろファームの赤、サンクゼールの長野ルージュはともにメルローとカベルネのアッサンブラージュですが、少し時間を置くと渋みも消え果実味も感じられます。ワイナリーの飲み比べができるのもワインバレー列車の楽しみです。

終点に近づくにつれ、北信濃の山々が大きく迫ってきます。進行方向左前方にひときわ雄大に見えるのは高社山。標高こそ1351mですが、広くなだらかな裾野は「高井富士」の別名にふさわしい。山裾にはブドウ畑が広がり、たかやしろワイナリーのワインの源はあの辺なのかと想像を膨らませます。

信州中野から終点の湯田中までは、最高40パーミルの急勾配、列車はラストスパート、乗客もワインを飲みつくそうとラストスパートをかけます。楽しい夢のような時間は過ぎ、出発から1時間24分、あっという間に終点の湯田中駅に14時32分到着です。列車を降りると、冷たい空気がワインで火照った体に心地良い。

駅の改札を出ると、線路の反対側、使われなくなったホーム側の駅舎を改装した湯田中温泉駅前温泉「楓の湯」があります。平成15年にオープンした日帰り温泉施設で、屋外の広場に足湯もあります。名前の由来は足湯の脇にある樹齢400年とも言われる楓の大木に因んで名付けられました。入浴料は300円、帰りの電車の待ち時間に気軽に利用できます。掛け流しの天然温泉が楽しめます。

お風呂は横に長い内湯と露天風呂のシンプルな造りで、泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉、無色透明の柔らかめのお湯は、湯冷めしにくくポカポカと体を芯から温めてくれます。源泉は約98℃と高温なので加水はしていますが、内湯は少し熱めなので、先に露天風呂に入ると体が馴染みます。

帰りは特急「スノーモンキー」で長野駅へ。スノーモンキーは御存知、JR東日本で成田エクスプレスとして運用されていた車両で、地獄谷野猿公苑の「雪景色の中、温泉に入る猿」にちなんで命名され、ロゴマークも制定されました。行きに乗車した元小田急ロマンスカーとともに引退した車両が長野で元気に走っています。

長野電鉄のワイン列車は、ワインが飲み放題という、ワイン好き飲兵衛にはありがたい列車です。北信濃の雄大な景色を眺めながら、美味しいお弁当とおいしいワインをいただきつつ楽しい時間が過ごせます。そして行く先の温泉地、湯田中でゆったりと寛ぐという、こんな贅沢な列車旅に感謝です。

 

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