八ヶ岳の清泉と渓谷美を歩く山梨県清里「川俣川東沢渓谷」

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八ヶ岳の主峰赤岳を源とする清流川俣川は、東沢と西沢に分れていますが、川の上流域に広がる東沢渓谷には、大小の美しい滝や奇岩、澄んだ空気の森林浴、そして八ヶ岳の南麓に広がる標高1400mの清里高原が待っています。木々の間から射す木漏れ日を受けて大自然を歩く3時間半のトレッキングにでかけます。

標高1475m、赤いアーチ橋・東沢大橋のたもとを出発する「川俣川東沢渓谷コース」は、八ヶ岳山麓の渓谷美を存分に楽しみながら吐竜の滝へと至ります。緑の中に時おり出会う涼やかな清泉を愉しみながらの自然散策にはぴったりです。このコースは本来八ヶ岳南麓の天女山と美森山の間を流れる川俣川の東沢の渓流沿いに整備された約2.8㎞ほどの遊歩道なのですが、現在一部が通行止めになっているため「清泉寮」へと迂回するコース設定になっています。やや距離は長くなるものの清里のランドマーク清泉寮で一休みすれば、小腹も満たせるし、広大な景色と気持ちのいい高原の風にあたることができリフレッシュできるというものです。

せっかく清里に出かけるのならば素敵なモーニングをいただきたいと評判のRestaurant&Bakery Meganeを訪れます。清里萌木の村の先、ともにこの森にむかって国道141号線を左折、あいの原通りをさらに奥へと進んだ先にある駐車場の奥にお店はあります。牧歌的風景の中にジブリの世界から抜け出したように佇んでいます。

開店は8時半というのにみかかわらずすでに先着の車が数台、予約をしてきている方たちです。なんとか滑り込みでカウンターに席を用意していただけました。

メニューはA厚切りトースト Bソフトバケットのブルーチーズとハムのサンド  C BLTの中から選び、ドリンク(コーヒーを選択)とスープ(この日はカボチャのスープ)がつきます。

BLTのベーコンは厚く3枚、シャキシャキのレタスと隠れてみえませんがトマトとでボリューム満載です。ナイフとフォークを使わず大きく口を開けてほおばります。ベーコンの脂をレタスとトマトが中和し、食べごたえのある大満足のモーニングでした。

美味しいものをいただいて「ともに」「にこ」っと笑顔でいたいとの思いで運営される「ともにこの森」に立ち寄り。地元・清里産の原料を中心に作られる4つのフード・ファクトリー・ショップ「清里ミルクプラント」「清里高原だいずや」「パティスリーアン・グーテ・ア・ラ・カンパーニュ」と訪れた「清里ジャム」が集まるモールです。

北杜市産ブルーベリーやルバーブ、自社農園のカシスやカラントなどの小果樹をペクチンなどの添加物を使わず国産ピート糖のみを加え甘さ控えめ糖度37度のみずみずしい「超低糖度ジャム」に仕上げています。お土産の柚子ジャムをひとつ購入。

土日祝日であればJR清里駅から運行されている「清里ピクニックバス」を利用して東沢大橋バス停で下車し、吐竜の滝入口バス停から戻るコースが採れるのですが生憎今日は金曜日でバスの運休日、清泉寮に車を置いてスタート地点の「東沢大橋」までの1.1km、約17分軽い上り坂を歩いていきます。清泉寮は、「清里開拓の父」と呼ばれたポール・ラッシュ博士がキリスト教研修施設として昭和13年(1938)に建設したもので、現在はその意思を受け継いだキープ(Kiyosato Educational Experiment Project)協会が、広大な敷地に氏を偲ぶ記念館や宿泊施設、レストラン、牧場などを展開しています。赤いとんがり屋根が清里のランドマークです。※清泉寮は旧清里村と旧大泉村の間に位置することから一文字ずつとって名付けられました。

川俣川東沢渓谷地獄谷にかかる長さ90m、高さ48.9mの赤いアーチ橋m東沢大橋は通称「赤い橋」でお馴染みです。東沢大橋駐車場からは八ヶ岳連峰(正面に赤岳)をバックに真っ赤な橋脚が映える東沢大橋をカメラに収めて案内板を頼りに階段を下りて遊歩道に向かいます。

しばらくは天然のミズナラやコナラが生い茂る緩やかな下り坂が続きます。陽射しが遮られ、爽やかな空気が体を包んでくれ、急な丸太の階段もテンポよく軽やかに下っていくことができ、やがて視線の先には木々の間に渓谷が見えてきます。

渓流沿いの遊歩道にでると仰ぐような「屏風岩」が現れ、これからの散策の期待値があがります。

スタート地点から歩くこと20分、渓谷沿いで最初に出会う「魚止滝」は小さいながらも迫力があります。

渓谷沿いには名もなき風変りな巨岩もあちこちにあり、苔むした岩々の脇をすり抜けたりと散策を飽きさせません。大きな岩々を縫うように流れる渓流を眺めながらさらに歩いていきます。

ばらくすると上流に「天狗岩橋」が見えてきます。※現在は通行止めになっています。

橋の袂には「天狗岩」の標識があり、振り返って頭上を見上げると大きな鼻のように見える奇岩がこちらを向いているかのように目前に迫ります。

時にはロープとチェーンを伝って梯子を下りたりもします。安全だけど意外とスリリングです。

前半2つ目の滝「乙女滝」は女性的な美しい流れ。

川俣渓谷東沢は、その流程のほとんどが深い渓谷。特に東沢大橋から吐竜の滝までの区間は100m近いV字谷を形成し、その険しさから八ヶ岳では珍しいブナの大木やサワグルミの巨木を見ることができます。

ここから先、「黄金の砦」「蘭庭」方面へは行けず天狗岩橋まで引き返したら、今度は急な木の階段をひたすら上って「清泉寮」の敷地内に整備された自然歩道へむかいます。ルート上には要所要所に道標が設置されているので道に迷う心配はなさそうです。

少しだけ息があがりますが、すぐにクマザサに覆われた平坦な森林に出られ、やがて清泉寮の施設のひとつ「ポール・ラッシュ記念館」が見えてきます。博士が実際に住んでいた住居を保存、公開し、その生涯と業績を伝えています。天狗岩橋から35分ほど、スタートしてから1時間半ほどの行程です。

清泉寮まで戻ってくれば、ここで必ず食べたいのがソフトクリーム。敷地内の牧場で育てたジャージー牛のミルクが美味しさの秘訣で、本館に近い「清泉寮ジャージーハット」でいただけます。牧草地を見下ろす絶景のテラス席からは、左手に金峰山、右手に鳳凰三山を見、天気が良ければ富士山を望むことができます。澄んだ空気の中、まずはソフトクリームで涼を取ります。ほどよい甘さとさっぱりとした酸味のバランスが良く、疲れも吹き飛びます。清泉寮本館前にあったポール・ラッシュの銅像は富士山を見つめています。

休憩を終えて再び吐竜の滝を目指して出発です。清泉寮前に広がる牧草地の脇、清泉寮新館の裏手を通り自然歩道から地図の等高線に沿って渓谷沿いの道へと約15分下っていきます。

しばらくすると川俣川に架かる真新しい吊り橋を発見します。2017年4月に完成したこの獅子岩橋を渡って対岸へ。ここからルート後半戦です。

橋を渡ってすぐにライオンの顔に見える獅子岩を発見。確か獅子岩橋の手前にもライオンが横たわるように見える岩があったのですが、どれを指すのか悩んでしまいます。

渓谷にぴったりと寄り添うコースだけに、道幅が狭く、片側が崖という箇所もあるので、足元に注意しながら進んでいきます。

蘭庭曲水は、緑に覆われた岩肌から清水が白い筋となって曲折しながら糸を引くかのように流れ、水と岩と苔が織り成す美しい一枚の絵画のようです。

遊歩道の対岸に現れる岩壁はかつて僧侶・覚円が修行したと伝わる覚円峰(獅子岩から約10分)。マグマ等ガ冷却固結する際や地殻変動の際に生じる発達した規則性のある板状の割れ目「板状節理」が見られます。流れようとする溶岩と地面との摩擦で生ずるひずみによって割れ目ができます。

丸太梯子を伝って沢へ降りていきます。慣れてくるとアップダウンもまた楽しく思え冒険心をくすぐります。

御座石(九段の瀬)はまた少し上った地点から木々の間を通して眺めます。

今度は鉄製の階段を下りて沢に近づき砂地や岩つたいに歩いていきます。アップダウンも激しいのですが、その分変化に富んだ水の流れや岩々の表情が間近に見られたり、河原に出てエメラルドグリーンに輝く川面を眺めたりと水辺ならではの気持ちの良さが存分に体感できます。

磨光の瀬岩(千枚淵)の岩の上では、岩間から勢いよく流れる清水、その水しぶきや川面に吹き渡る風の心地良さといったら言葉になりません。

やがて後半スタートしてから約1時間、コース最大の見どころ、「吐竜の滝」がようやく目の前に現れます。滝の上に川がなく、八ヶ岳地層の伏流水が岩肌から噴き出てそのまま滝となって落ちてくるものです。落差10m、幅15m、緑に覆われた岩間から絹糸のように流れ落ちる神秘さから「竜の吐く滝」と名付けられました。ルート上で出会った激しい水の流れからは想像がつかないほど苔むした岩肌を段々に流れ落ちていく姿が繊細で美しく、和の趣を醸し、壮大な日本庭園のようで思わず見入ってしまうほどです。

散策コースはここから10分ほどの吐竜の滝駐車場でゴールを迎え、土日祝日ならさらに15ほど歩き清里高原道路沿いの吐竜の滝入口バス停から清里ピクニックバスで清里駅まで戻りますが、今回は束の間の休憩をはさんで来た道を清泉寮まで戻ります。木や岩肌に赤いペイントでルートが示されていますが吐竜の滝からの方が印が見つけやすいので疲れた足にも安心です。

忘れてはならないのがポール・ラッシュ博士によって開拓民たちの集う場所として昭和23年(1948)に建てられた「清里聖アンデレ教会」です。川俣川の石を積み上げて建設された教会は、赤い木壁の洋風建築ながら、黒い瓦屋根、内部は全国でも珍しい障子に畳敷きという造りが独特の雰囲気を加味しだしている礼拝堂です。清里らしい素朴な教会で旅の感謝を祈ります。

疲れた体を癒してくれるのが温泉です。清里から八千穂ICに向かう国道141号の途中にある海ノ口温泉・和泉館で立ち寄り湯を楽しみます。かつては千曲川が堰き止められてできた巨大湖の千曲川の入口付近であったため、この名が付いたという海ノ口。昭和6年(1931)に発見された歴史ある静かな環境は湯治に最適です。泉質はナトリウム-マグネシウム-炭酸水素塩-塩化物泉で泉温は35.3度です。

和泉館のお風呂は内湯が3つ、露天が1つで源泉は湯が流れ出ている右奥の浴槽です。出てくるお湯は透明ですが、時間が経つと茶色くなり湯の花が浮いています。鉄の味で周りも茶色く変色しています。中は注がれているお湯よりもかなり冷たく感じます。左奥は源泉を加熱した湯が循環されていますので源泉の浴槽と交互に入るか、中央の白湯と源泉と交互にはいるのか楽しめます。

露天風呂は緑がかった湯ですが温泉かどうかは不明です。

 

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