日吉大社で神猿探し!美しい石積みが残る里坊の町“比叡山坂本”

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霊峰・比叡山の東麓、琵琶湖の南西岸に面した大津市坂本は、水運の要衝としてだけでなく、古くから最澄が開創した比叡山延暦寺の台所を預かる町として、また日吉大社の門前町として栄えてきた風情漂う町です。穴太衆と呼ばれる石工のふる里と伝えられ、彼らの手による石積みが施された町並みや元々は延暦寺の僧侶の隠居所だった里坊が並ぶ町並みが独特の景観をつくり出しています。歴史深い神使「神猿」の日吉大社を中心に里坊と穴太衆積みの町の探訪へ出かけてみませんか。

伝教大師最澄が開創した比叡山延暦寺の東の玄関、日吉大社の門前町として栄えてきた美しい石積みが残る延暦寺の里坊の町が坂本です。今回は、京阪電車・比叡山横断チケットを使い里坊のある門前町「比叡山坂本と日吉大社」へ。京阪坂本駅から比叡山系の八王子山をあおぎつつ緩やかな坂を上って鎮守の森に抱かれた日吉大社の聖域へ向かいます。「日吉馬場」と呼ばれるメインストリートである真直ぐの幅広い参道は、中央の車道の両側に緑地帯があり、比叡山から流れるせせらぎが心地よい音をたてるすぐ横の土の道沿いに、自然のままの石積みが続きます。

美しい石積みは、里坊すなわち延暦寺で永年の修行を終えた老僧たちの隠居坊を囲む石の垣根です。坂本には50余りの里坊があり、表通りだけでなく、横丁へはいった裏通りにも穴太衆積みに格調ある土塀をめぐらした里坊がびっしり並んで門前町のおもかげを残しています。江戸中期に整ったそうで、それは仏教界の持つ力を恐れた信長が比叡山をまるごと麓まで焼き討ちをした後の復興であり、以来300余年、不変です。

穴太衆積み」とは、「穴太衆」と呼ばれる坂本の穴太地区に古来から住み、比叡山の土木営繕的な御用を勤めていた石積み職人集団の手によるものです。さまざまな形の大きな自然石の隙間にいくつもの小石が混ざり、「品」の字型に積み、石の奥行きが長いのがポイントです。写真の旧白豪院(現芙蓉園本館)の庭先にある穴太積みの洞窟入口は、映画「プリンセス トヨトミ」の冒頭のシーンに登場した抜け穴です。

最澄の生誕地とされ、12歳で出家するまで過ごしたという生源寺の交差点を左折し、昔ながらの町屋が軒を並べる「作り道」を曲がると、穴太衆積みの堂々たる石積みに囲まれた美しい御殿馬場の道にでます。この突き当り正面にあるのが、坂本随一とされる石垣がある「滋賀院門跡」です。元和元年(1615)慈眼大師・天海が後陽成天皇より京都北白川の法勝寺の高閣を賜り建立されたものです。江戸時代まで、延暦寺の最高位僧職である天台座主となった法親王代々の居所であっただけに、高い格式を誇り、穴太衆積みの石垣もひときわ高く、石垣の上に白壁をめぐらした御成門は優雅な構えです。

滋賀院門跡の境内をぐるりと回ると、道は自然と隣の「慈眼堂」へと続き、木々も深くなります。ここは江戸幕府に仕えた慈眼大師・天海を祀る廟所で境内には十三体石仏群や多数の石塔が並んでいます。これらの中には、桓武天皇、徳川家康、紫式部、清少納言、和泉式部などの供養塔が並んでいますよ。【境内見学自由】

苔むした石の供養塔や石仏の間を抜け、権現馬場を上ると「日吉東照宮」に通じます。桁行三間、梁間三間、一重、入母屋造、銅瓦葺の本殿と、その前面にあたる桁行五間、梁間二間、一重、入母屋造、銅瓦葺の拝殿とが、桁行三間、梁間一間、一重、両下造、銅板葺の石の間(相の間)によってつながれた建物で、権現造という形式の典型です。本殿と拝殿を石の間で繋ぐいわゆる「権現造り」の発祥はここ日吉東照宮といわれています。

この社殿は、寛永11年(1634)天海僧正によって日光東照宮の雛型として造られたもので、前面の3間の向拝には軒唐破風がつき、その後方に千鳥破風がつき、蟇股の彫刻は精巧にできています。また内外の装飾がきわめて華やかで美しく、関西の日光として広く知られています。

正面入口の四脚唐門と周囲に巡らされた透塀も美しく、社殿とよく調和しています。まさに江戸情緒たっぷりの建造物を堪能した後、300m程歩いて日吉大社に向かいます。

途中休憩を兼ね、天正20年(1592)に里坊として建立された旧竹林院で、苔むした中を清流が流れる庭園に身を置き、しっとりした風情を楽しみます。旧竹林院には八王子山を借景にした1000坪の回遊式庭園が広がり、地形をうまく利用した滝組や築山が見事です。母屋から眺めると赤いじゅうたんと緑の庭木のコントラストが鮮やかです。

都の魔除け・火難除けを祈って鬼門を守り、比叡山延暦寺ができてからは天台宗の護法神として支えた、猿が神使の神社「日吉大社」は、全国3800余りの分霊社(日吉、日枝、山王神社)の総本宮です。日枝の山から現在に境内にうつし祀って2000年、40万㎡からの膨大な境内には老樹が茂み、特に約3000本のもみじが彩る県内随一の紅葉の名所として知られています。

日枝の山(比叡山)は古くから神の宿る山として崇敬されてきた霊山で、古事記上巻に「日枝の山に坐す大山咋の大神」と記されていて、日吉大社は神代に創建されたことがうかがえます。その八王子山の地主神・大山咋神を東本宮に、大津宮遷都時に奈良の大神神社から勧請した大己貴神を西本宮に祀ります。両本殿ともに日吉造という独特の形で国宝に指定されています。最盛期には「山王百八社」と称されるほど多くの社4があったといいます。

途中には求法寺走井元三大師堂があります。求法寺は、延暦寺登山口の本坂脇に位置し、由緒には、18世天台座主慈恵大師良源大僧正(元三大師)が、初登山時ここで入山修行の決意を固めたことから求法寺と称されとあります。この建物は、元亀2年(1571)に焼失後、正徳4年(1714)に上棟されたものです。平面は元三大師を祀る正堂(内陣)前面に、参詣の場である礼堂(外陣)が接続し、凸型になっています。正堂は間口三間、奥行き三間、屋根は入母屋造です。礼堂は間口五間、奥行き三間で、中央部の三間×一間を内陣に取り込み、屋根は入母屋造、正面の軒唐破風を付け、全体を杮葺としている。走井元三大師堂は、建築年次が明確な江戸時代中期の建築で、礼堂は、内部を広くするため柱を省略し、虹梁、太瓶にするなど、豪快な架構は近世の社寺建築のなかでも技術的に優れています。これは近くの西教寺本堂(1739年建立)のも共通する流派的特色で、棟梁中島次郎左衛門の技量のほどが良くうかがえます。

比叡山からの清流、大宮川に架かる日本最古の石橋、苔むした「大宮橋」から入ります。ここからはるか向こうの西本宮まで「総合の坂」といわれる参道が続きます。最も上流にある橋で上流から順に大宮橋、「走井橋」、「二宮橋」の3つの橋を「日吉三橋」と呼ばれています。大宮橋は寛文9年(1699)に木造から石橋に架け替えられたとあり、西本宮を昔は大宮と呼んでいたことからこの名があります。高麗付きの美しい反り橋で、日本百名橋に選定されています。ここは映画「るろうに剣心」京都大火編で、主人公緋村剣心の旅が始まるシーンが撮影された場所です。右に走井橋が平行してあり、二宮橋は下流の東本宮への道の傍にあります。もともとは、幼名を日吉丸といった豊臣秀吉の信仰を受け、天正年間に木橋を寄進されたのだが、江戸時代になってから石橋に架け替えられて現在に至っています。石橋としては日本で最大、最古とされています。

大宮橋の隣に、お祓いの儀式に使われる5列の長い石板が並んだだけで、欄干のない「走井橋」があります。長さ13.8m、幅4.6mの石造り反橋で、橋の近くに「走井」という清めの泉があったことからこの名前が付けられました。2025年NHK朝の連続テレビ小説「ばけばけ」で、トキとヘブン先生が小豆とぎ橋を渡るシーンが撮影されました。

参道の両脇からもみじが迫り、朱色の「山王鳥居」が映えます。この鳥居の上には山が付いていますが、この山はもちろん比叡山、神と仏が調和した神仏習合の信仰を表す独特の形で、両手を合わせ合掌しているように見えるので合掌鳥居とも呼ばれます。山王(山王権現)とは神仏習合における日吉大神のことで、日吉大社に祀られている神々の総称です。

その手前には「猿塚」と呼ばれる大きな石組があります。これは古墳の石室の蓋が露出したものです。この古墳の穴は唐崎(琵琶湖岸)まで通じているとか、神猿さんが年老いて自身の死期を悟ったときに自ら猿塚の中へ入っていくといった伝説があります。

総合の坂を上りきったところが西本宮です。西本宮の楼門は、天正14年(1586)頃の造営と考えられる三間一戸、入母屋造、檜皮葺の建物で、東本宮の楼門と比べると規模は大きく、壮麗です。木部は丹塗を主としたもので、上下の釣り合いがよく、樹の緑によく映えます。四隅には猿の彫刻、前後に極彩色の蟇股があります。

重要文化財に指定されている西本宮楼門の軒裏四隅には、目を凝らすとそれぞれ違ったポーズの木造の神猿さんがいます。「棟持ち猿」といって屋根を支え、お参りに訪れる方々を見守っていますよ。日吉大社は猿を神の使いとして迎え、その猿の名は神猿(まさる)といい、大切に扱われるようになりました。もともと比叡山に多数生息していた猿が、いつのまにか魔除けの象徴として扱われるようになったとのこと。まさるは「魔が去る」「何よりも勝る」ということでつけられた名で、「神猿」を「まさる」と読むのは、もともと日吉大社に仕える猿を「真」の字の代りに「神」の字を当てたところから「神猿」で「まさる」と読むようになったとされている。“棟持ち猿”以外にも猿に因んだ見所が多いので参拝しながら探してみて下さい。

天智天皇が都を大津に遷都された翌年の668年、奈良・三輪山の大神神社から大己貴神を勧請し、国家鎮護の神として日吉社に祀られたのが、日吉大社一古い国宝の現在の「西本宮」です。平安京遷都の折りには、この地が都の表鬼門にあたることから都の魔除・災難除を祈る社として、また伝教大最澄は日吉大社を天台宗の守護神社として崇拝しました。本殿は桁行五間、梁間三間、日吉造、檜皮葺の建物で天正14年(1586)に復興され、慶長2年(1597)に改造されています。日吉造は一名聖帝造ともいい、日吉大社だけに見られる特殊な構造です。三間・二間の身舎の前面、両側面の三方に廂がめぐらされた形で、側面や背面にそも特色を見せています。また正面には一間の向拝と浜床をつけ、縁高欄がまわりをめぐっています。本殿には大きな狛犬と唐獅子が守護し、床下にはかつて仏事を営んだ下殿と呼ばれる部屋があります。

西本宮拝殿は方三間(桁行三間、梁間三間)、一重、入母屋造、檜皮葺、妻入りの建物です。柱間は四方とも開け放して、屋根の妻飾りは木連格子、回り縁は高欄が付き、天井部が一段高くなった折上小組格天井となっています。日吉大社の他の同じ形の拝殿のうちでは、一番手の込んだ構造となっていて、天正14年(1586)本殿と同時に建てられたものです。

写真は西本宮拝殿に掛る円山応挙の高弟、長沢芦雪が描き、寛政4年(1792)に日吉大社へ奉納された親子の「猿図」の絵馬です。

境内には魔除け、厄除けの「神猿みくじ」があり、金色の猿は金運も占います。かわいいおみくじやお守りもあり、「神猿みくじ」300円は家の鬼門や玄関に飾るといいですよ。

東本宮本殿の社殿は文禄4年(1595)に西本宮本殿に引き続いて復興された日吉造の代表建築です。桁行五間、梁間三間、檜皮葺で、西本宮殿とほぼ同様の造りですが、背面の三間の床が一段高くなっているのが異なるところです。

同境内に摂社には大山咋神と御夫婦の鴨玉依姫神を祀る樹下宮があります。文禄4年(1595)に建てられた三間社流造、檜皮葺の建物で、後方三間・二間が身舎、その前方一間通しの廂が前室となっています。数ある流造の中でも比較的大型のもので、床下が日吉造と共通した方式であることや向拝階段前に吹寄格子の障壁をたてているのは、この本殿の特色です。細部の洋式もこの時代の特色をよく示し、格子や破風、懸魚などに打った飾り金具は豪華なものです。本殿下に霊泉が湧く「十禅師宮」とも呼ばれる聖地です。

東本宮左手には、石の柵に囲われた亀甲型の井戸「亀井霊水」があります。井戸の周りには、神聖なものと不浄との境を示す注連縄が張られ、紙垂という白い紙も付いていて聖域を示しています。ここには昔、池があり伝教大師最澄が参拝の折に霊亀が現れて、この水を占うと「仏様に捧げる水を汲む井戸となすべし」というお告げから、亀井と名付けられたといいます。

東本宮の楼門を出て坂を下る途中には振hり替えればお猿さんのような石「猿の霊石」がお見送りをしてくれています。正面から見た凹凸がしゃがみこんだお猿さんの形にそっくりです。奥に見える東本宮楼門は、天正~文禄2年(1573~1593)頃に建てられたもので、三間一戸楼門形式、入母屋造、檜皮葺、縁付きの建物で、斗栱は上下層とも三手先となっています。西本宮楼門とは、やや違った比例を持ち、どちらかといえば一階部分が高く、二階部分が低いので、すらりとした均整のとれた建物です。

再びかつて里坊であった「旧竹林院」や「旧白豪院・現芙蓉園本館」のある日吉馬場に戻り、「作り道」と呼ばれる今も古い町屋が立ち並び門前町の雰囲気を色濃く伝えている町屋の通りに一軒の蕎麦屋があります。「そばは一番、電話は二番、店は角より三軒目」のお店が坂本名物 本家 「鶴喜蕎麦」。比叡山麓、石畳の寺町風情が残る坂本エリアに来たなら必ず立ち寄りたい人気の老舗そば屋で、鶴屋喜八が享保元年に店を開いた創業およそ300年もの歴史あるお店で、品格のある建物は国の登録有形文化財に指定された築約120年、入母屋造です。

昔から延暦寺ともゆかりが深く、今でも延暦寺にそばの仕出しを行っています。また断食の行を終えた修行僧達は弱った胃をならすため、まずそばを食べたといいます。店内で、ひきたて、打ち立て、ゆがきたてのこだわりの蕎麦がいただけます。

少し黒目の蕎麦は中細の麺で、つゆは返しの効いた熟成させたまろやかな風味で少し甘めのように感じるがキリっとしている。そして山葵もしっかりと丹念にすられたものです。この三つが口の中にはいると、蕎麦の甘味が引き立ち、まさしく美味いそばでした。

叡山鉄道坂本ケーブル坂本駅から比叡山に上ることもでき、また比叡山からケーブルで坂本に下りてくることもできます。「ケーブル坂本駅」は大正14年に建設された、洋風木造二階建ての駅舎でモダンな洋風建築である。

西教寺へ歩いて向かいます。「明智光秀ゆかりの大津市坂本「西教寺」で真白猿と出会う」はこちらhttps://wakuwakutrip.com/?p=4093&preview=true

 

 

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