2017年「忍びの里 伊賀・甲賀-リアル忍者を求めて」というストーリーが日本遺産に認定されました。今日、“Ninjya”は世界中の人々に知られていますが、その本当の姿はあまり知られていません。忍者列車に乗り、忍者ゆかりの伊賀の地をめぐり、リアル忍者のルーツを探す旅にでます。見ても、食べても、体験しても、まさに忍者つくし!忍び足ではなく、ゆったり足でしっかり足跡を残します。
忍者発祥の地と知られる三重県の伊賀市は、京都、奈良に近く、軍事的要衛であり、深い山に囲まれたこの地域は、どこも同じような里山風景が続き、道に迷い、方向感覚を失い易い隠れ里のようでした。またこの地に「忍術」が発生した理由としては、良材を産する東大寺領の杣山や、飯道山・岩尾山・庚申山といった宗教的な霊山があり、薬学や卜占に通じた山伏がこれらの山々で修練を積み、忍術が生まれたと感がられています。彼らは主に諜報活動や謀略活動を任務とし、敵の情報を収集する立役者として暗躍した隠密集団です。戦国時代になると本格的に歴史の裏舞台に関わるようになり、江戸幕府に仕えた服部半蔵は伊賀をルーツとする人物として知られています。
忍びの里に築かれた戦国時代の城館跡や古社、修験道の行場など、今も残る史跡を巡れば、戦乱の世を生きた忍者の英知と自存自衛の術を垣間見ることができます。
JR関西本線伊賀上野駅から伊賀鉄道伊賀線に乗り換えます。上野盆地の城下町伊賀市中心部を走り、JR関西本線伊賀上野駅と近鉄大阪線伊賀神戸駅までを結ぶ伊賀鉄道「伊賀線」は、沿線が忍者の里であることから“忍者鉄道”と呼ばれています。
忍者鉄道を走る列車は「銀河鉄道999」などで有名な松本零士さんがデザインしたインパクトのある外観の「忍者列車」が走ります。青色・ピンク色・緑色の3編成があり、青色・ピンク色(くノ一)忍者列車が平成21年12月から登場しました。忍者列車に乗っ伊賀忍者探索の旅に出発です。電車はスロースピードで田園風景、無人駅を超え、ゆったりと上野市駅(忍者市駅)に滑り込みます。
カーテンには手裏剣柄のデザインが施され、網棚には忍者のマネキン人形が設置されています。
扉は開閉するたびに忍者が見え隠れするように描かれています。
平成24年3月より加わった緑忍者列車は「木育トレイン」と言われ、社内のあちこちに三重県産の木材が使われています。カエデやヒノキ、スギなど、5種類の木材が社内の壁や吊り輪などに使われています。木材が使うことが難しいドアや床には木目調のシートが貼られています。
扉の上部には伊賀上野の文字とシンボルの上野城と忍者の焼き印が施された木のプレートが飾られています。特に特徴的なのが「吊り輪」で、丸型のほかにユニークな「手裏剣型」もあります。座席はロングシートとクロスシートを併用し、オレンジのクロスシートが車内を明るく感じさせてくれます。
到着した上野市駅は2019年2月22日の忍者の日に「忍者市宣言」し、上野市駅の駅舎には「忍者市駅」の看板が掲げられました。大正6年(1917)に建てられたハイカラな大正モダンな駅舎は、大阪の建築業者「ハイカラ屋」が設計建築した豊川鉄道の吉田駅の駅舎のデザインをそのまま使って「ハイカラ屋」が建てたものです。屋根は、フランスの建築家マンサードが考案した形状が特徴的なマンサード屋根(フランス屋根)と呼ばれ、その庇の上に乗った忍者を発見するのも旅を盛り上げてくれます。
駅構内にはフォトスポットとして忍者と手裏剣のご当地名標が置かれています。
改札口を出ると駅前ロータリーには「銀河鉄道999」のキャラクター「鉄郎・メーテルブロンズ像」が置かれています。
忍者市に来たら忍者に変身して楽しむことができます。市内の店舗・ホテルで忍者衣装をレンタルできますが、上野城近くのだんじり会館が近くて便利かも。館内は上野天神祭の楼車が3基展示されていて、祭の雰囲気を再現するセットやムービーが圧巻です。ぷち忍者変身「忍者なりきり処」でレンタルできますが、入館者のみ20分間限定300円で忍者衣装がレンタルできるサービスがあるので、まずは試しにレンタルしてみてはどうでしょうか。
横づけされている宣伝車でしょうか車の屋根にも忍者がいます。
平楽寺跡(伊賀上野城)は、上野公園にあった寺院で、伊賀衆の結集の場であったと伝えられており、織田軍と伊賀衆が二度にわたって戦った侍と忍びが直接対決した戦国唯一の戦い、天正伊賀の乱の際には、ここ平楽寺で伊賀惣国一揆の評定軍議が開かれました。2017年には映画「忍びの国」が公開されています。平楽寺跡に伊賀上野城が築城され、城代家老であった藤堂采女は、伊賀地侍の名族服部家の出自です。城壁に登る姿を写真に撮ってみるものいかがでしょうか。
上野公園にある伊賀流忍者博物館では、謎に包まれた伊賀流忍者の世界を垣間見ることができます。「忍者屋敷」「忍術体験館」「忍者伝承館」「忍術ひろば」からなる伊賀流忍術の殿堂。伊賀市高山にあった江戸時代末期の土豪屋敷を昭和39年(1964)に移築して復元された忍者の住まいです。まずはくノ一の案内で屋敷の探検へ。忍者が室内に仕掛けられた「どんでん返し」「抜け道」「刀隠し」といった数々のからくりを実演で案内してくれます。目にとまらぬ速さで壁の裏側に潜み、床を蹴って武器を取り出し・・・と、その素早い動きと巧妙な仕掛けは、生で見ると感動もひとしおです。
忍術体験館では、忍者の代表的な武器である「手裏剣」などを展示、忍術伝承館では、忍者の古文書が解き明かされ、暗・九字法・人相学など現代で役に立つ忍術が紹介されています。忍術ひろばでは、伊賀忍者特殊軍団 阿修羅による手裏剣、刀、鎖鎌を使用した迫力満点の忍者ショーが開催されています。手裏剣の壁を打つ音がドスンと力強いことに驚きます。写真の標札の上にも忍者がいます。
博物館を出た後は、街中へ。伊賀の城下町には忍び衆が住んだ町名が今も残り、昔ながらの町割りが当時のまま受け継がれ、古くから続く寺社や商家なども驚くほど多い。「うまいもん」「みやげもん」や「まちなか」にも忍者がひっそりと潜んでいます。忍者モチーフのものがたくさんあるので、いくつ見つけられるか探しながらの散策も楽しみです。「まちなか」の通りにある「忍者にまつわるもん」には、これまでの写真のほかにも、忍者スポットがたくさんあります。忍者をモチーフにしたマンホールやオブジェがあり、街全体が忍者一色です。それらに思わずカメラを向けつつ、お店からお店へぶらりと歩きます。
伊賀自慢の豆腐をおしゃれにアレンジするカフェ、忍者グッズを専門に扱う土産物店などをみながら、途中、中之立町通りにある明治42年(1909)創業のお茶屋さん「むらい萬香園」に立ち寄ります。伊賀茶を扱う老舗茶屋ですが、先々代が伊賀流忍者を研究し、忍者塾を開いていた縁で、店内には忍者コーナーもあります。お店の看板の横には、伊賀市のゆるキャラ「にん太」が描かれています。
店内にあふれる骨董品と昭和を感じさせる雑多な佇まいがいい雰囲気を出している店内の一角にある甘味処では、忍者にちなんだ「うまいもん」お茶スイーツが味わえます。写真は「忍者パフェ(小)」で、高級抹茶を贅沢に使った抹茶ソフトに白玉団子や手裏剣製の伊賀名物の堅焼きのトッピングが楽しい。小でもボリューム満点です。
伊賀には歴史と共に歩んだ忍者の文化が今もなお息づき、その世界を体感しようと多くの人で賑わいをみせています。また忍者だったのではという噂もある俳聖・松尾芭蕉生誕の地でもあり、「芭蕉さん」にあふれている街でもあります。
「芭蕉の面影が今も残る生誕の地で芭蕉に出会う伊賀上野歩き」はこちらhttps://wakuwakutrip.com/archives/10103