6月、奥日光中禅寺湖周辺は初夏に歩きたい花景色があります。特に中禅寺湖千手ヶ浜はクリンソウの群生地ということで奥日光へと出かけたのですが、どうも奥日光は前回の戦場ヶ原といい雨にたたられるのです。千手ヶ浜は一般車両の通行は禁じられていて、交通手段は徒歩か低公害バス、または遊覧船になります。本当は中禅寺湖遊覧も兼ねて船で行きたいところですが、千手ヶ浜に寄港する船は午後からしかなく、ということで早朝8:10の赤沼車庫発の低公害バス(片道300円)に乗り千手ヶ浜を目指します。
中禅寺湖の西端に2kmにわたって砂浜が広がる「千手ヶ浜」は、日光開山の祖・勝道上人が中禅寺湖で船禅定を行っていた際、千手観音の姿を見たと千手観音堂を建てたと伝わる場所で、湖水は透明感あふれ、対岸には勝道上人が山頂をきわめた男体山の雄姿が望める(はずでした)。湖岸を南にあるいていくと200年以上のミズナラやハルニレなどが深い樹林をなす千手ヶ原の森が広がっています。小さな吊り橋を渡ると仙人庵と呼ばれる民家が見えてきます。
この一帯が千手ヶ浜の新緑に囲まれて咲くクリンソウの群生地です。群生地は約1万㎡あり、5月末から咲き出して1ヵ月間楽しめます。
クリンソウはサクラソウ科の多年草で湿地を好み、せせらぎの淵や苔むした倒木の傍らに数限りなく咲き連なっています。赤、白、ピンク色のクリンソウの花が、清冽な湧き水が輝くあふれる渕に映るさまは、初夏の風物詩です。日本産のサクラソウの中では最も大型で、高さは50cmほどにもなるので満開時には明かりを灯したように晴れやかです。
本来なら千手ヶ浜から西ノ湖、小田代原とトレッキングをして赤沼に戻りたいところでしたが雨には勝てずそのまま低公害バスで30分、赤沼車庫まで戻ってきました。このバスはフリー乗降制なので体力と時間の余裕があれば途中下車してみるのもいいです。バス道路沿いの草加市自然の家近くにも小規模ながらクリンソウの群生地があります。
この時期奥日光の随所で見ることができるのがレンゲツツジで、竜頭滝の入口にも多くの花を咲かせていました。
湯ノ湖から流れ出た湯川が、中禅寺湖に注ぐ手前にある210mにわたって流れ落ちる渓流瀑が「竜頭滝」です。勝道上人の遺骨はこの滝の近くに分骨されたといいます。名前の由来は、滝つぼ近くが大きな岩によって二分され。その様子が竜の頭に似ていることや、岩を縫って流れる様子が天に昇る竜を思わせることなどからちいいます。滝の両側にはトウゴクミツバツツジが竜の頭に載るかんざしのように彩りを添えています。
滝壺の目の前に「龍頭之茶屋」があり、滝壺へ落ちる水の流れを見ながらひと息つけます。天保8年(1837)刊の『日光山志』に記された地獄茶屋から続くのが龍頭ノ滝前の茶屋です。多くの人に安らぎを与えるという施無畏者(観音菩薩)の名をつけ参拝客に振る舞った施無畏だんご400円は、おぐらとみたらしがあり、だんごの柔らかさと甘みで疲れがほどけます。
「神話や伝承が息づく奥日光の自然に接する戦場ヶ原ハイキング」はこちらhttps://wakuwakutrip.com/archives/297