ゆざわジオパーク巡りの終点は天狗伝説の泥湯温泉・奥山旅館

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県道310号に戻り秋の宮温泉郷方面に走り辿り着くのが、栗駒国定公園内に位置し、自然が色濃く残る山々に囲まれた小さな盆地にある秘湯が泥湯温泉です。湯治に来た病に苦しむ少女が、お湯が透明で恥ずかしがり入れずにいたところ、天狗がお湯を白く濁してくれたという天狗伝説の言い伝えのある藩政時代から続く伝統ある温泉です。開湯は約1200年前の平安時代とされ、江戸時代には「安楽泉」と呼ばれていた歴史ある湯治場で、一説には湯の花をたっぷり含む泥のように白濁した濁り湯であったことから「泥湯」と呼ばれるようになったとか。

泥湯は不思議な感じのする空間で秋の宮側から見下ろしたものがほとんどすべてで、人造物は2軒の旅館や食堂、民家らしきものが1、2軒あるきり。沈んだ茶色を統一基調にした建物たちがひなびた風情を守りながら、お客から従業員までこの一画にいる人は全員温泉にかかわる、秘湯のテーマパークのようです。

奥山旅館の創業は明治45年/大正元年(1912)で「日本秘湯を守る会」加盟の宿。平成31年(2019)4月にリニューアルオープンした古民家風の落ち着いた建物は、深山に佇む素朴な風情と相まって秘湯の雰囲気満点です。

湯沢市のこけしの産地・木地山とゆかりがあり、名工・小椋久太郎作の前だれ梅花こけしが玄関に佇んでいます。木地山こけしは頭と銅を一本の木でつくりボリュームがあります。大きいものは前垂姿の梅花模様で描き、小寸のものには簡単な菊を描いています。木地師たちが、江戸時代の末期により質のよい材料を求めて移住してきたのが木地山地区です。

ロビーなどの太い柱や梁、建具には秋田県内の古民家で使われていた古材を利用し、調度品にも湯沢市の木工芸がふんだんに使われ温泉情緒に溢れています。ロビーの椅子とテーブルは、曲木家具で知られる秋田木工のもの。1910年創業の曲木専門の家具工房で、ブナ材で作られた曲木のイスは思いのほか軽く、片手で持ち上げられます。

客室は和室8室に特別室1室の9部屋。大露天風呂のある山側の景観がたのしめる、板床の間に和ベッドを備えた客室「こごみ」が今宵のお部屋です。

お部屋にも木地山こけしがドンと据えられています。

単純硫黄温泉の天狗の湯(pH3.7)、単純硫黄温泉(硫化水素型)の川の湯(pH5.8)、単純泉の新湯(pH3.8)の異なる3つの源泉からそれぞれ泉質の異なる湯が引かれ、内湯や露天風呂をめぐるのが楽しい。湯船の底に成分が沈殿するほど濃い白濁湯に浸かるとトロリとした湯が身体に浸み込んでいきます。

ブナの原生林にぐるりと囲まれた山際にある大露天風呂にじっくり浸って疲れを癒します。この露天風呂の湯は源泉・新湯から引いています。壁を挟んで向こう側が女性用です。

男女別の専用内風呂から露天風呂へと続いていますが、男性内湯から続く露天風呂は川のせせらぎが聞こえる混浴露天風呂で湯船が2段に分けられていて木の浴槽小さめです。

内湯、混浴露天風呂ともに源泉は鉄分を含む酸性の天狗の湯を引いています。

しっとりとした雰囲気の女性専用内風呂にはきれいな石造りの湯船が設えていてことらにも天狗の湯が引かれています。内風呂から続く女性専用風呂は岩風呂で、源泉・川の湯が引かれ、川べりに迫る木々が四季折々に目を楽しませてくれます。

食事も魅力的で夕食は地元で採れた山菜や湯沢市特産の皆瀬牛など地元の旨いものが季節ごとの多彩な料理で堪能できます。食前酒が湯沢の酒蔵両関で、前菜に“いぶりがっこ クリームチーズ添え”“日本一高級な納豆屋の黒豆納豆やまかけ”“山蕗の煮物”“根曲がり竹の味噌煮”“みずのコブ松前漬け”“ぜんまい一本煮”“鯉の卵煮”の7品

“鯉の昆布〆”

“岩手鴨鍋”に“茶碗蒸し”

“本日の揚げ物”は、ししとう、オクラ、かぼちゃにみずのコブといった揚げたての山菜の天ぷらを藻塩でいただきます。

焼き物は“皆瀬牛リブロースステーキ”を藻塩かポン酢でいただきます。皆瀬牛は皆瀬で育った黒毛和牛で、皆瀬に一軒しかない牛肉肥育農家で育てられた希少なお肉です。

ヤマメの塩焼き”

名物・“湯沢市しゅんぞう堂 稲庭生うどん”や“佐々一さん家のあきたこまち”に味噌汁

最後にデザートは“ナガハマジェラート 男鹿塩マーレ トチ蜂蜜かけ”の全16種類もの品々がタイミングよく出来立てで運ばれてきます。ここまでの夕食の卓にはさりげなく敷かれたランチョンマットが料理を引き立てています。ほかにも箸や箸置きにも川連漆器を使用。川連漆器は鎌倉時代、武具に漆を塗ることから始まったとされます。

朝食もお膳には鮭の切り身や納豆、味噌汁、温泉卵、味噌ふろふき大根などが並び、生野菜サラダと相川ファームの忠さんちの米粉パンには手作りイチゴジャムとサクランボジャムが供されます。いぶりガッコのタルタルソースとサラダをはさんで食べるとよくあいます。

プロが選ぶ日本の小宿2021に選ばれた心と体が落ち着く心地よい旅館でした。

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