秩父に春の訪れ、芝桜の園・羊山公園へ!ジオパーク秩父を走る

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約2億年前のプレートの移動により誕生した秩父は「日本の地質学発祥の地」でもあり、ジオ的景勝地が豊富で、日本ジオパークに認定されています。そして秩父の春は芝桜で始まります。秩父のシンボル武甲山の麓、羊山公園に秩父の春の名所「芝桜の丘」があります。春色重なる花空間、とことこ歩く散歩道。春風にのって甘い香りが漂います。春の桜が散る頃、一斉に先始める芝桜を見るべくジオパーク秩父へ春のドライブに出かけます。

関越道花園ICから秩父に向かう国道140号はかつては休日ともなると大渋滞が発生していました。2005年に荒川を渡る末野大橋が完成して皆野寄居有料道路が開通し、さらに皆野秩父バイパスが開通したことにより、寄居から秩父中心地まで観光名所が点在する国道は走りやすくなりました。まずは金運アップを願いにジオサイト和銅遺跡と聖神社を目指します。

皆野大塚ICで降り、国道140号を秩父方面に走ると秩父鉄道「和銅黒谷駅」近く、和銅(自然銅ニギアカガネ)がここ黒谷で発見され、奈良の都に献上されたのが慶雲5年(708)1月11日のこと。このことを大変喜ばれた元明天皇は年号を和銅と改め「和銅開珎」を発行したのです。

この和銅遺跡の近くに和銅開珎のゆかりの神社である銭神様としても有名な「聖神社」があります。朝廷は和銅元年(708)祝典のために勅使を派遣し、和銅沢上流の「祝山」に自然銅をご神体として金山彦命を祀っていたお宮を、祝山から銅洗堀を隔てて、蓑山を背にした清浄の地である今の地に移し「聖神社」と称して創建されたのが同年の2月13日でしたのでゆうに1300年以上の歴史があります。和銅石13個をご神宝として祀り、また和銅開珎ゆかりの神社ということもあり金運アップのご利益があるとされています。

社殿は、一間社流造りの本殿と入母屋造りの礼拝殿からなり、江戸中期宝永6~7年(1709~10)の建築で、大宮郷の工匠大曾根与兵衛によって建立されました。彫刻は桃山期の遺風をわずかに残しています。社殿の右側には和銅開珎のモニュメントがあり、とても金運アップのご利益がありそうな雰囲気があります。

文化4年(1807)8月再建の旧本殿は脇に移され、大国主命を祀る和銅出雲神社として奉斎されています。

絵馬も和銅開珎のお金の形をした絵馬もあり、やはり金運アップを願う人が多いのだと実感します。

聖神社から約600m離れたところに、実際に銅が採掘されていた和銅遺跡があります。坂道を歩くこと約15分ですが車でも和銅遺跡入口近くまで車で行くことができます。駐車スペースが5台程度しかないので注意が必要ですが。聖神社から蓑山(美の山)へ続く坂道を上っていくと、まもなく街なかの喧騒から離れ、棚田が広がる山里風景が目に飛び込んできます。

和銅遺跡入口の看板から5分ほど舗装されていない道を歩くと高さが3mくらいありそうな和銅開珎のモニュメントが見えてきます。

さらに「和銅露天掘り跡」へと続く急斜面の木々の間の道登っていく見学路があり、3分程度で削りとられた跡がはっきりわかる場所に着きます。不思議な羽をもつ家来の助けで飛ぶ鳥よりも速く毎日都へ和銅を送り届けた『羊太夫の伝説』が残されていることもあってまるで時代が昔に戻ったような錯覚を覚えます。

和銅遺跡は、和銅沢の左岸に見られ、写真は和銅採掘露天堀跡と伝えられている場所です。露天掘跡と言われる溝状の地形は、地質学的には写真左、外秩父山地を形成する岩石(約2億万年前)と写真右、秩父盆地を形成する新第三紀の地層(約1500万年前)との境となっている「出牛-黒谷断層」の破砕帯です。

聖神社と和銅遺跡を併せて訪れたことで金運アップ間違いなしと感じながら車を走らせること15分、羊山公園へ。秩父のシンボルである標高1304mの武甲山の麓、県立武甲自然公園の西北部の高台に位置する羊山公園は、荒川がつくった中位段丘上にあるジオパーク秩父のジオサイトです。

市街地と尾田蒔丘陵(高位段丘)、奥秩父の山並みを見渡せる「見晴らしの丘」や羊を飼うふれあい牧場などもある広大な公園は、「日本公園の父」本多静六博士の設計によって整備されました。「羊山」の名は戦前に県の綿羊種畜場が設けられていたことによります。飼育場が熊谷に移転したのを機に公園として開放、その一角、園の南側のブロックに芝桜の丘があります。

ゲートを入ると、幕が切って落とされるようにいきなり世界が開けます。正面に日本二百名山、武甲山の三角形のシルエットが見え、1万7600㎡の敷地に「紅音」「スカーレットフレーム」など10種・40万株以上の芝桜が、ゆるやかにうねる丘を被い尽くしています。模様を描くようにピンクの濃淡から紫のグラデーションの中にアクセントカラーの白がまぶしく、遠方にそびえる雄々しい武甲山と可憐な花との対比が美しい花畑の中に散策路がめぐります。

芝桜とは、北アメリカ原産の多年草。花の形がサクラに似て、芝のように地面をはって広がることから芝桜と呼ばれています。日当たりと水はけのよい場所を好み、耐寒性が強いのが特徴です。赤系は芝桜を代表する可憐で細身の真っ赤な花が印象的な「スカーレットフレーム」や定番の紫に近い濃い色で存在感のある「オータムローズ」、柔らかいピンクが可憐な「マックダニエルクッション」白系では定番の明るい黄緑色の茎が特徴的な「モンブラン」さらに一回り小さい花を咲かせる清楚な印象」の「リトルドット」。白色にピンクの縞が入った「多摩の流れ」、白を基調とする花びらの中心にピンク色のアクセントが入っている「アメージンググレース」ブルー系は大輪の花を咲かせる「エメラルドクッション」に涼しげな「オーキントンブルーアイ」です。

様々な色の芝桜を組み合わせて植栽されていて、文字通りの「花のパッチワーク」です。その圧巻のグラディ―ションは、東側から眺めた斜面に、ユネスコ世界文化遺産に登録された秩父夜祭のクライマックス、屋台が団子坂を曳き上がり秩父神社の女神様が武甲山の男神に会いに行く・・・芝桜の流れるようなデザインは、屋台や、笠鉾に乗る囃子手の襦袢模様と躍動感を表現しています。冬の始まりを告げる夜祭の熱気と、長い冬を乗り越えたふわりとした春の心の高揚が、武甲山が見守る丘の上で響き合うようです。アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』や『心が叫びたがってるんだ。』の聖地でもあります。見ごろは例年4月中旬~5月上旬です。

ひとつ、ひとつは小さな花ですが、一斉に咲き誇るその様は秩父夜祭の喧騒のごとく、人の心をわきたてる。さあ目を閉じて、 聞こえますか?芝桜の香りの中で、大空に響き渡る、秩父屋台ばやしが・・・ シバザクラデザイナー 西 喜恵子

中央部分が谷になり手前と奥方面がなだらかな斜面になっているので立体的に花の風景を見ることができます。両斜面には、観賞用のベンチや芝生の広場があり、のんびりと芝桜を楽しむことができます。一角には「ポテくまくん」の家があります。「ポテきまくん」は秩父市のイメージキャラクターであり、秩父市宣伝部長という肩書を持つくまの妖精です。秩父のソウルフード「みそポテト」が大好きで味噌ポテトを食べ過ぎて、頭から味噌がにじみ出てしまっています。

※開園は8時からですが、一般公園なのでいつでも入園できます。芝桜開園期間は駐車料金や入園料がかかりますが、8時前なら駐車料金はかからず、入園料300円を芝桜整備基金としてBOXに入れておきます。

高台にある公園をあとにして彩甲斐街道さいかいのみち(国道140号)を南西へ進みます。森が深くなった頃、国道を離れて県道73号へ、さらにすれ違い不可能な細道を荒川の支流、橋立川に沿った道を進みます。この道は武甲山への裏参道(西参道)で、坂道と石段を上ると、武甲山の石灰岩体の西の端、高さ75mの大岩壁の下に秩父28番札所橋立堂が建ち、境内に県内で唯一の観光洞であり、国内でも珍しい竪穴型の鍾乳洞のジオサイト「橋立鍾乳洞」があります。宮沢賢治も立ち寄っています。

武甲山は、約2億年前、5000km以上も離れた南洋で、ハワイのような火山島として誕生しました。火山島の周りに成長しサンゴ礁が、海洋プレートとともに移動し、海溝で大陸プレートに押し付けられ付加体となりました。その後次々に付け加わる付加体によって押し上げられて、石灰岩と緑石岩からなる武甲山が形成されました。橋立堂の納経所が鍾乳洞の入口で入場料200円を払います。

洞内に入るとひんやりとした空気が身体を包みます。全長140m、3分の2が竪穴型で高低差約33m、坑道は迷路のように曲がりくねっています。天井が低いところもあれば、はしごを上る所もあり、通路は狭くなかなかハードな探索になります。鍾乳石、石柱、石筍などが見られる洞内は広くはないが、その分、この自然の造形が昔から「胎内くぐり」の霊場として信仰されてきたことを実感できます。「弘法大師の後姿」「上り龍の背」「下り龍の頭」などと名付けられた鍾乳石が見ものですが、洞内は撮影禁止とのことで残念です。

江戸時代に流行した『観音霊異記』には、「昔、この村の領主の郡司が悪竜になって人や馬を喰うので、村人が橋立堂に祈願したところ、御堂の中から白馬が出てきて、この竜に呑まれ、ついにその悪竜は悟りを得て、洞内の石となった」と書かれています。鍾乳洞内の洞窟生成物を、昔の人は石になった竜の姿に重ねたのでしょう。

鍾乳洞を出ると、額に汗が浮かんでいました。そんな時に最適なのが、境内に隣接する「ジュリンズ“ジオ”」です。なんともオシャレな隠れ家のようなカフェで、世界最高峰のコーヒーコンテストであるCOE「カップ・オブ・エクセレンス」受賞農園の豆を使ったコーヒーがいただけます。

店内の雰囲気もよく開けた窓から日光が入り、店内を風がスッと通り抜けていくような造りになっていて、とても落ち着いた雰囲気です。雑貨などもセンスよく丁寧にディスプレイされていて、細部へのこだわりを感じます。またお店の方のコックコート姿にも料理へのクオリティの高さを期待させてくれます。しゃらしゃらとした簾がかかった右手の個室のような座敷席は特等席感満載です。

まずはフレンチブレスで抽出されるおまかせのオススメAAコーヒーで極上の味を楽しみます。スタッフさんが声をかけてくれるまで暫く待ちます。3分くらいしてプレスしてお飲みくださいと声をかけてもらえます。香りも甘味も優しく、それでいてコクもあり美味しいです。

かき氷とアイスコーヒーが楽しめる「淡雪」はこだわりの一品。さとうきびシロップをかけていただくミニかき氷その後のカップに注いで飲むアイスコーヒーは格別の美味さです。

メニューに描かれた絵がかわいらしく、絵の通りの美味しいパンケーキでした。

※橋立堂には無料駐車場(8時開場)があります、手前に有料駐車場(500円)がありますが必ず奥の方まで進んでいきます。

体の内側をカフェで冷やしたら国道299号からジオサイト「秩父ミューズパーク」を目指します。秩父ミューズパークがある尾田蒔丘陵(長尾根)は、秩父盆地の西側、荒川がつくった河岸段丘のうち一番古く、約50万年前に形成された高位段丘です。尾田蒔丘陵も羊山丘陵も頂部が平坦になっているのは、かつて荒川の河床だったからです。南北約3.3kmに延びる面積271.3ha、東京ドーム58個分もある広大な園内には、さまざまな花が咲きます。見所も盛だくさんで全部は回りきれないので、狙いを定めておくのがよさそうです。

今回はちょっとユニークなカフェを訪れることにしました。秩父は日本でも数少ない産地の一つ、自生しているカエデの木から樹液を採取する取り組みが行われていて、カエデの樹液やメープルシロップなどを使った商品が生まれています。秩父ミューズパーク内のMAPLE BASE(メープルベース)は秩父メープルのブランド発信拠点。ここでは日本初のシュガーハウスとして、メープルシロップの製造機械をカナダから導入。珍しい国産のメープルシロップを製造、提供しており、カエデの樹液やメープルシロップといった豊かな森の恵みを味わうためのカフェを併設しています。

メープルシロップの原料「カエデの樹液」が採れるのは2~3月の雪解けの頃だけで、ほんのり甘いさらさらの水です。葉を落としたカエデの木は、春をひかえた一時、芽吹きの準備のために猛烈な勢いで水を吸い上げます。その時に樹皮に小さな穴を開け、樹液を採取します。秩父の山の2月は雪の中。カエデは水が凍らぬよう樹に蓄えた栄養を糖に変えて溶かし込みます。冬季から目覚めるための生命の水、その樹液を様々に加工して届ける秩父の森の贈り物です。パンケーキとともにいただきます。

黒糖のような和の風味を感じられる秩父産のシロップは、採取した樹液を40分の1に煮詰めて作った貴重なものです。通常、各種パンケーキにはカナダ産のメープルシロップが付きますが、オプションで注文できるので、ぜひ味わってみてください。

見どころが多く、美味しいグルメのおかげで、楽しい気分でハンドルを握れましたが、秩父は宝登山神社、秩父神社、三峯神社の秩父三社や秩父三十四所観音霊場の札所めぐりだけでなく、秩父銘仙ブランドで知られた商都の街でもあります。秩父の歴史をたどる旅にでかけてみてください。

秩父三社「三峯」「秩父」「宝登山」をめぐるパワーチャージの旅」はこちらhttps://wakuwakutrip.com/archives/286

 

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