大正時代の石油開発で温泉が湧出したことから始まる開湯100年、のどかな田園地帯に湧く「月岡温泉」は、全国屈指の硫黄含有量を誇り、“美人の湯”として名高い。この地で広大な庭園を擁する湯宿に泊まり、豊かな自然に触れながら、極上の湯浴みを楽しみたに出かけます。宿泊先はエメラルドグリーンに輝く美人の湯の「白玉の湯 華鳳」。2024年「第49回プロが選ぶホテル・旅館100選」で総合4位の温泉宿です。
開湯100年、飯豊山脈の麓、大正4年(1915)写真の石碑付近の石油開発中の井戸から温泉が湧出し、本間周三郎氏がそこに共同浴場を建てたことから始まり、広大な田園の中に突如現れたこともあって、のどかな雰囲気が魅力になっている「月岡温泉」。源泉の温度は51度、泉質は「含硫黄-ナトリウム-塩化物泉」でエメラルドグリーンに輝く湯は、肌がスベスベになると評判の「美人になれる温泉」と言われます。傍らにある翡翠色の龍が群を成し天に昇る姿に見立てて命名された月岡昇龍石。風水では龍は「富貴吉祥」、究極の幸福のシンボルとされ、大地の全てのエネルギーの源であると考えられています。手湯で御手を清めて昇龍石を筋撫ですることで、愛情運・財産運を呼び込み、あらゆる運気を開運の導いてくれるとのことです。
まちづくりにも力を入れていて旅館街も見越しの松や格子、板壁、おそろいののれん、舗装も茶色のブロックを敷き、趣のある雰囲気をつくり出しています。温泉街を歩いていると硫黄の香りが漂い、蒸しあげた月岡饅頭の湯気が辺りに立ち込め、いやがおうにも温泉情緒を高めてくれます。
お散歩が楽しい月岡温泉の町歩きは、月岡温泉発祥の地であり、美肌とご縁を祈願するパワースポット「源泉の杜」を起点にめぐります。「月岡温泉発祥の地」の石碑付近の石油掘削中の井戸から50度を越える湯が湧き出し、本間周三郎氏がそこに共同浴場を建てたのが始まりです。まずは温泉のお湯で手を清めてから湯かけご縁像に源泉をかけて、美肌と良縁を祈願します。さらに「日本一まずい温泉」と自称する全国的に珍しい硫黄泉の飲泉も楽しめます。なんとも言えないクセがあり、これも旅の思い出作りです。
温泉街には空き店舗を利用した「食のスポット」がいくつかあります。新潟県内全酒蔵のプレミアムラインの地酒から100銘柄をセレクトした『蔵』。
レジにて600円でおはじき3個を購入し、地酒の番号を言っておはじき1個~3個と引き換えにおちょこに注いでもらって試飲します。おはじきの必要数が多いほどプレミアムなお酒です。
県産の干物や海産物、さらに味噌、漬物などの発酵食品をあつあつの白米と一緒に試食できる『旨』
せんべいの手焼き体験のできる『田』
そして新潟の香る飲み物を集めた『香』では、新潟北限の村上茶や紅茶、棒茶、雪室コーヒーの4種類を無料で試飲でき、岩の原葡萄園のプレミアムワインも有料600円で試飲できる。
その他にも米粉を使った商品を扱う『米』、スムージーやジェラートがいただける『実』、新潟ショコラの『甘』、和菓子専門店『和』などと、そんな温泉だけでない楽しみが満載の月岡の街歩きです。
2018年秋に誕生した観光庭園が「月あかりの庭」です。日本庭園の間を縫うように道が整備されていて、回廊に沿って連なる円柱オブジェの行灯には、様々な風物の和柄がデザインされていて楽しめます。ぜひ奥まで歩いて色とりどりの円柱オブジェをいろいろな角度から見たり、写真を撮ったりして楽しみましょう。夜になると色とりどりの行灯が辺りを照らし幻想的な世界が広がる場所です。
お散歩の最後は演舞場「月見台」を囲むように配置された一度に30人は入れる回廊型の足湯「あしゆ湯足美」でのんびりします。月岡温泉の湯を100%源泉かけ流しで気軽に楽しめる足湯施設です。誰でも無料で利用することができ、足を浸かれば疲れがほぐれて気分も身体もリフレッシュします。タオルはすぐ隣の情報館「ふらっと」で一枚100円で販売されていますし、飲み物の自動販売機もあり時間を忘れてゆっくりできます。夜は演舞場に飾られた色鮮やかな和傘を使ったアートが明るく華やかにライトアップされ幻想的な空間が広がります。
足湯から徒歩10秒の場所にあるクラフトビール醸造所「月岡ブルワリー」で湯上りビールはいかがですか。
月岡ブルワリーおすすめの4種を飲み比べ。それぞれは約90㎖ですが90×4で360㎖となり缶ビー一本分になります。アルコール度数が低く苦みの少ないものから順に試飲していきます。最初は月岡エメラルドエール(マスカット)。月岡温泉の湯の色に因んだエメラルドグリーンの色とマスカットの爽やかな香りが特徴。アルコール度数も4度と低めでビール初心者にお勧めの素材から見た目までこだわったビールです。次に月岡ヴァイツェン ナチュラル。小麦を半分使用したドイツの伝統的ビール。ヴァイツェン酵母で造ったまろやかな味わいでフルーティで芳醇な香りが特徴の小麦のビールです。3番目は月岡温泉 湯上りペ-ルエール。アメリカンホップを代表する品種を使用。苦みが抑えめ、香りも程よくスッキリした味わいで湯上りにぜひとも飲んでいただきたいクーっとくるビールです。最後は月岡IPA。とにかくホップでホップの味、苦み、香りを楽しめるビール。アルコール度数6度で苦みが特徴的な大人の味わい。
そんな温泉街の最奥にあるのが今夜の宿「白玉の湯 華鳳」です。2024年旅行新聞新社主催が主催する「第49回プロが選ぶホテル・旅館100選」で総合4位の温泉宿です。同賞は「もてなし/8位」「料理/6位」「施設/4位」「企画/4位」の4部門で競われます。※1位は和倉温泉加賀屋。華鳳門をくぐり上っていくと丘の上に立つ10階建ての大旅館が聳えています。
館内に入ると施設の豪華さに圧倒されます。ロビーラウンジの正面、窓の向こうには約6000坪の大庭園。庭園は池のほとりに芝生と白砂が敷かれ、池の奥に緑豊かな雑木林が続きます。
園内は野鳥の集まる「実の成る木」、清流が流れる「水辺の森」、舞台・月姫第を設けた「鎮守の森」などに分かれ、遊歩道が整備され歩くたびに新しい発見を見つけながらのんびりと散策が楽しめる。
地上10階までの吹き抜け天井で、清水を引いた池にはカラフルな錦鯉が泳ぎ、その脇から階ごとに展示された見事な絵画や屛風を見ながらエレベーターであがります。
大庭園を望む和室スタンダードでも12.5畳の本間に広縁と着替えの間が付くゆったりとした造りになっている。どの部屋もルームキーが2本用意されていたり、タオルが乾燥しやすいように専用ヒーターを設置したりと細やかな配慮が随所に見られる。
今回は、硫黄成分濃度の高さが日本有数という自家源泉「白玉の湯」が目当て。建材が数年で劣化することもあるほどで、そのため露天風呂は源泉かけ流しですが、天井の放射状垂木が豪快な内湯には真湯を使っています。脱衣所の成分表の隣に書いていましたが気付かないで入っている人もいるのでは。
広大な田園風景を楽しみつつ、エメラルドグリーンの湯で満たされた回遊式露天風呂は檜風呂、大岩風呂、寝湯、腰掛け湯がウッドデッキで結ばれ、湯めぐりが楽しめる趣向です。高い硫黄含有量を誇る湯に身を浸せば、体の芯まで温まり、肌がつるつるになり時間を忘れて堪能します。エメラルドグリーンの湯が満々にはられている広い露天風呂は知らない人が見たら池と思うかもしれません。
腰掛湯、寝湯から見た庭園露天風呂。
こちらは檜風呂
湯上り後には「湯涼み処」でエビの味噌汁やアイス、ドリンクを無料サービスしてくれるのがうれしい。
お待ちかねの夕食は、お食事処で料理の鉄人「和の鉄人」太田忠道さん監修の地産地消の食材を中心とした会石料理が味わえます。海も近く里山でもある新潟県月岡は食の宝庫、新潟県が誇る地元食材や旬の地場野菜の持ち味を大切に調理し、素敵な器に盛り付けられた珠玉の味が味わえます。一品ごとの量を抑えてあるのも女性や年配者にはありがたい。コシヒカリの本場であり、地元で美味しい日本酒もつくられています。日本酒は地元新発田の市島酒造の王紋「夢」を注文し、今回の宿泊「のどぐろと村上牛」が味わえプランにあわせてみます。テーブルの上には秋が感じられる松茸土瓶蒸しも。
まずは食前酒「ノンアルコール梅酒 紅茶のカクテル」で乾杯した後、小鉢をいただきます。萩豆腐 海老美味出汁 柿の素辛子浸し 三つ葉 自家製烏賊麹塩辛 長芋が月見の夜を表現した盆板の上に彩り鮮やかに並べられています。
秋の味覚 土瓶蒸しの後はお造り。紅葉鯛 中鮪 勘八 粒貝 南蛮海老 妻一式と新潟の海の幸が並んでいます。平成18年から新潟県産の農林水産物のブランド化が積極的に進められてきたその一つが「南蛮エビ」です。正式名称はホッコクアカエビといい、その鮮やかな赤色と形が赤唐辛子(新潟地方の方言で「南蛮」という)と呼ばれるようになりました。信濃川や阿賀野川など大きな河川から運ばれた養分が海に流れ込み、その沿岸で取れる南蛮エビは栄養分が豊富でサイズも大きく、甘みも強い。赤色は抗酸化作用をもつアスタキサンチンという天然色素によるもので、アンチェンジングなどに効果が期待できることが知られています。旬は秋から冬。淡麗辛口の日本酒がベストマッチです。
お凌ぎに海鮮茶碗蒸し 銀餡掛けをいただき、今回のメイン食材第一段「のど黒姿焼き 染卸し」の出番です。深海魚なので揚がると口が開いて、のどが黒いでっぷりと丸々太ったノドグロは、ピンと反ってみるからに新鮮。旬は秋から冬、大きい方が脂がのって旨い。身がホロリとほぐれ、口に入れると軽い脂がじわり、白身魚独特のうまみが濃厚に広がります。
焼魚の次は焜炉、メイン食材第2弾「村上牛ステーキ 彩り野菜を添えて 薬味パレット」です。新潟県内で育てられた黒毛和牛で格付等級A3以上のものを「にいがた和牛」と呼んでいますが、そのうち村上市および関川村ならびに胎内市で飼育されたA4またはA5ランクのみが「村上牛」よ呼ばれます。コシヒカリの麦わらで育てられた肉質は、色鮮やかで風味よく、サシが多く、甘みのあるとろけるような味わいの上質な脂が特徴です。
食事は松茸ごはんに香の物(自家製漬物三種盛り)と椀物、もちろんお米は五頭山麓の湧水で育てられた特別栽培米コシヒカリです。お米自体の持つ自然な甘みに松茸の香りそっと寄り添っています。そして最後のデザートは「抹茶プリンを秋の色にのせて」
夕食後の散歩に昼間散策した温泉街の「源泉の杜」
「板壁のライト」
「月あかり庭」
「あしゆ湯足美」のライトアップを楽しみます。写真に撮ればSNSで映えること間違いなしです。
宿に戻って鎮守の森
朝食は約80種のバイキングで、炊き立てのコシヒカリ、搾りたてのフレッシュジュース、新鮮な地元野菜のサラダバー、料理人が目の前で調理するだし巻きなど和洋食の前菜からデザートまで美しく並べられ、食欲をそそります。充実した朝食をいただくといい一日になりそうな予感がします。
帰路に月岡温泉から歩いても10分のところにある月岡カリオンパークへ。公園のシンボルとなっているカリオンタワーの柵に「:ラブロックキー」を掛ければ恋愛成就とか。
続きは越後月岡温泉「白玉の湯 華鳳」から出かける「ちか旅」阿賀北へ