栃木県北東部に位置し、関東と東北を画するように横たわる那須連山。その南麓に広がる那須高原は、古くからいで湯の里で知られていましたが、那須の華やかな避暑地としてのイメージは、華族による開拓や別荘建設に加え、大正15年(1926)に那須御用邸が設置されたことが大きい。昭和天皇がことのほかご愛着を抱かれ、皇室の方々が夏を過ごしてきたゆかりの深いロイヤルリゾートとしても人気の高い行楽地といえます。豊かな自然に恵まれた那須高原には、厳選された小麦や水、地元食材、焼き方など、こだわりをもつ実力派ベーカリーが数多く点在する激戦区です。別荘族に愛されるパン屋、瀟洒なカフェを巡って人気の避暑地・那須高原の恵みに浸り、味わい、ロイヤルリゾートの心の贅沢を満喫する旅に出かけます。
那須といえば女性ならパン屋さんとお洒落なCafeです。朝食を求めて那須高原のパンのいえ「クーロンヌ」に到着です。ここは朝の6時半から営業している茨城県南部で展開する人気ブーランジェリーの県外初店舗です。
こんな静かな森の中にと思うところに佇むお店にはパン職人が作った焼き立てパンの香ばしい香りとともにクロワッサンやバゲット、クーロンヌ等たくさんの種類のパンが出来たてで並んでいます。美味しさの秘訣は、ライ麦から起こした自家製の天然酵母でたっぷりのフルーツがのったデニッシュや外はパリパリ、中はしっとりとやわらかいフランスパンは最高です。
人気No1のソルティドッグとコーヒーを注文して店内のイートイン席で待っていると、お待ちかねのソルティドッグは長さ15cmほどのドッグパンに直径2cmほどのハーブソーセージを挟んだもので岩塩とレモンが効いた歯切れのよいパンで、ソーセージの味もしっかり楽しめ美味しいです。晴れた日にはテラス席でいただくのもよりいっそう美味しく感じること間違いなし。
さらに北に進むと自然の森の中に囲まれたベーカリー「ペニーレイン」(営業時間8:00~17:00)があります。大のビートルズ好きのオーナーが営むレストランや宿泊施設も併設されたお店は、硬度0のイオン水で発酵させたふっくらとしたパン生地が人気のベーカリー&カフェで、焼き立てパンの香りとビートルズの世界観に包まれています。
シックで落ち着いたデザインの建物の中へ入ると1960年代のイギリスにタイムスリップしたかのようにダークブラウンに統一された店内には雰囲気のある酒瓶がところ狭しと並んだカウンターや総革製のソファそして同じくダークブラウン色の棚に並ぶ美味しそうなベーカリーが素敵です。
「帰れマンデーの行列ができるお店」で紹介されたり「TVチャンピオン」で優勝を勝ち取った“ブルーベリーブレッド”は、ブルーベリーをふんだんに使用した当店No1ブレッド。生地はもちろん一斤に130g前後のシロップ漬けのブルーベリーとオリジナルブルーベリージャムを巻き込んでいます。他にも“リンゴスター”や“HELP”といったユニークな」名前のパンが並び、ハード系から菓子パンまで約60種のパンが幅広く揃います。パンの美味しさはもちろんですが建物の雰囲気やビートルズにまつわる装飾類も楽しむことができます。
またビートルズのレアグッズを見ることができる店としてビートルズファンにも人気です。店の表には1969年に発売された12枚目のアルバム『アビーロード』のジャケット写真のイラストが写真に忠実に再現されています。イラストの前にはアビーロード風の横断歩道まで描かれていて、記念写真スポットです。
ベーカリーの奥にはレストランがあり、店内席とテラス席が準備されていて、天気の良い日は断然テラス席が人気です。那須の美しい緑に囲まれ、開放的なスペースでいただくパンは最高です。
お昼は那須街道からかなり奥まったところに林に囲まれ小川のせせらぎが聞こえる「古民家のカフェ 夢屋」に向かいます。築150年の古民家を南会津から移築したカフェで、天井は高く、囲炉裏や炬燵の部屋があり、所狭しと古道具や草木染め織物が置いてあります。
猫のいるカフェでガレットがいただけるお店で今回はスパイシーなキーマカレーのはいったガレット・エスニックをいただきましたがそのボリュームに驚きです。サラダもついていましたが地元産有機栽培野菜は新鮮シャキシャキで美味しかったです。猫は炬燵で寝ていたり、お店を歩いていたり、帰りにはアメショーの「おかみさん」が見送ってくれました。
3軒目のパン屋さんは県道17号那須街道沿いの「パン香房ベル・フルール」です。今上天皇も皇太子時代御一家でお忍びでこられたというイタリアレストラン「ジョイア・ミ-ア」で出されるパンが美味しいと評判になったことがきっかけとなり、2000年4月同じ敷地内にオープンしたヨーロピアンな外観のパン屋さんです。広い売り場の棚に約80種並ぶパンは、合成保存料や着色料等の添加物を使用しない無添加と地産地消にこだわっていて、地元の方や別荘族か愛されてているお店です。
カフェの聖地と呼ばれるのが少し南に走った県道17号那須街道沿いにある「NASU SHOZO CAFE」です。1988年カフェブームに先んじてオーナー菊池省三さんが黒磯のアパートの2階でオープンした「1988 CAFE SHOZO」が始まりです。オシャレ、心地よい、美味しいと素敵なカフェの要素をすべて兼ね備えたカフェで、高原に佇む美術館のような黒を基調とした外観もオシャレです。入口を入ってすぐ、アンティーク調家具が設けられた空間、ケーキの陳列棚、に販売商品の陳列棚、観葉植物等細部にこだわって落ち着いたレトロ感漂う雰囲気で統一しています。
古い建材や数々の天然素材を使った手作りの空間デザインで、店づくりへのこだわりは、どの席に座っても平等に気持ちよく過ごせるような空間づくりです。店内の椅子やインテリアはバラバラですが、不思議と全体の統一感があります。暖かなライトやアンティークシェルフに飾られた書物、大きな窓等、全てのインテリアが調和し、全ての家具の配置がゆったりとしていて、席にゆとりのあるスペースを与えていてくつろげます。
客席はアンティーク調の家具で囲まれた店内、窓から光が差し込む白いエリアのサンルーム席、そしてテラス席と雰囲気の異なる3つのエリアからなります。晴れた日は木漏れ日が柔らかい開放的なテラス席です。
評判のスコーンは食べるべき一品です。あたたかいスコーンには、ラズベリーのジャムとクロテッドクリームが添えられ、外はサクっと中はふんわりです。私がこれまで食べた、三重・青蓮寺湖畔のイングルサイドカフェや日光の旧英国大使館別荘のスコーンに負けず劣らずの美味さです。6種あるケーキで一番人気のシフォンケーキは、スポンジのしっとり食感が魅力。どちらも深煎りコーヒー“森のブレンド”と一緒にぜひ。
県道17号那須街道からりんどうラインに入ってすぐのところに「バターのいとこ」があるGOODNEWSなる一角があります。「有吉・マツコのかりそめ天国」で、仁支川峰子が紹介していた那須のおみやげバターのいとこは、那須の牧場主と二人三脚で開発したお菓子で、バターを作るときにできる副産物のスキムミルク(脱脂乳)を生かそうと開発されました。スキムミルクから作った香り高いミルクジャムをフワっとしたゴーフル生地でサンドしたハーモニーが新感覚の食感と話題が呼び、那須の新名物になっています。お土産探しに最適です。
県道30号線いわゆる横断道路沿いにあるハード系パン屋「NAOZO」。店内中央に置かれた石窯で焼く、こだわりのパンは予約必須のお店です。
県道30号を西へ向かい県道369号板室街道を道の駅「明治の森 黒磯」方面へ向かう途中に「チーズ工房 那須の森」はあります。2008年からチーズに適したスイス原産の乳牛・ブラウンスイスにほれ込み、那須ならではのチーズ作りに力を注いでいる工房です。日本では少数しかいないブラウンスイスは頑固でマイペースなベージュ色の乳牛で、ミルクの量はホルスタインより少ないですが、タンパク質などの乳成分が高くチーズ生産に適しています。
NIKKEIプラス1(2019/10/19)秋の夜長の国産チーズで第1位に選ばれたのが、“森のチーズ(長熟)”チーズ工房 那須の森です。自然のカビや菌・酵母の力で熟成したセミハードタイプのチーズで、長熟タイプは濃厚で深いコクがあり、風味が香ばしいのが特徴です。赤ワインやビールのおつまみに、味が濃いのでチーズフォンデュに加えたりスライスして野菜と一緒にサンドイッチにしても美味しい。ハード系のパンによくあいます。
パンとチーズを調達すれば大人のグルメ旅を締めくくるのは130年を超える歴史を持つワイナリー「渡邊葡萄園醸造(那須ワイン)」。創業は明治17年(1884)、明治時代初め、那須野ヶ原黒磯地区の開墾の際にブドウの木を植えたのが始まりで、国内で最も古いワイナリーの一つです。乃木希典も愛飲したと伝えられています。
ここに寄ったのは漫画神の雫最終章『マリアージュ』に那須ワインメルロー2005が載っていたからですが、ワイナリーでは試飲もでき創業当時からのクラッシクなラベルを貼ったワインや値のはるワインは飲めなかったのでNasuWineの赤白を試飲しましたがそのポテンシャルは分からずじまいでした。
美味しいパンに舌鼓をうち、お洒落なCafeで優雅な時間を過ごし、別荘族御用達のパン屋さんでバゲットと地元の恵みのチーズとワインを買って帰る。ちょっとロイヤルリゾートを満喫したドライブです。