クライマー憧れ、“魔の山”谷川岳一ノ倉沢の絶壁を見に行く

※この記事で紹介する内容にはPR・広告が含まれています。

剱岳、穂高岳と並び日本三大岩場のひとつで“魔の山”と称される群馬県みなかみ町にある谷川岳の東麓「一ノ倉沢」、何万年もの歳月をかけて造り出された氷河の爪痕です。剱岳、穂高岳は上級登山者でないとその麓までさえも行けませんが、一ノ倉沢は、登らずに眺めるだけなら初心者でも行けます。クライマーのあこがれ、美しくもあり、恐ろしくもある自然の力によってつくり上げられた一ノ倉沢の絶壁を見に行きます。山登りには自信がないけれど、谷川岳の魅力を存分に味わいたい人にぴったりのコースです。

大河・利根川の最初の一滴が流れ出す群馬県みなかみ町は、2017年6月14日に自然と人間が共存するモデル地域として、ユネスコエコパークに登録されています。その核心地域となる谷川岳一ノ倉沢を望むコースが「一の倉沢トレッキングコース」です。谷川岳ロープウエイ土合口駅でもある「谷川岳ベースプラザ」からブナの原生林を抜け、川辺と山際の林道を歩く気持ちがいいトレッキングコース。途中に危険な場所もなく平坦なルートなので、水さえ持っていけば十分なぐらい装備もほとんど必要なく、スニーカーでも大丈夫です。のんびりとした気分で清々しい自然を堪能できます。

谷川岳ロープウェーの駐車場に駐車料金500円で車を停めます。谷川岳ベースプラザの玄関口から左手に国道291号を100mほど少し歩いて上がると、「谷川岳山岳資料館」、さらに少し上るとそこには「谷川岳登山指導センター」があります。登山届やルート案内図などがあるので、ハイキングコースに入る前に一度立ち寄っておきましょう。湧水もあるので水の補給も忘れないようにしておきます。国道291号でもあるコースは、この先からマイカー乗り入れ禁止になっていて、国道の真ん中を堂々と歩いていけます。

最初は少し上り坂ですが、その後はアップダウンもほとんどない平坦な道は、舗装されて歩きやすく、またコース内の道の両側にはブナの原生森が生い茂り日陰を作ってくれています。ユネスコエコパークにも指定された豊かな自然を満喫しつつ、心地よく歩けて気持ちいいです。

登山口から「マチガ沢出合」まで約30分。途中には休憩ポイントとしてベンチが置かれ、行程の距離も書かれています。「休憩ポイントP1」までは登山口から1350m。ここからマチガ沢出合まであと350mです。

標高835mのところにあるマチガ沢には、その昔は三軒程宿があったため、畑や墓跡が残っています。清水峠を越えて越後から山道を夕暮れ時に疲れて下ってきた人が、このあたりで灯火を目にして「ああ、町が見える」と喜んで発した言葉がマチガ沢の由来と言われています。

谷川岳山頂が望めるここからの登攀もクライマーたちに人気で景観も素敵です。マチガ沢の標柱にある「マイナスイオン値9230個/平方センチメートル リフレッシュ度特A」という表記に納得しますよ。

さらに林道を1.6km、約25分進むと「一ノ倉沢出会」に到着しますが、その途中いきなり目の前に高さ1000mの岩壁が立ちはだかります。マチガ沢と一ノ倉沢を含むこのエリアの谷には、雪崩によって谷底に多量の雪が堆積し、かつてはここにその雪で形成された氷河があったといわれるほどで、急峻かつ鋭く厳しい雰囲気を感じさせてくれます。

一ノ倉沢出会のちょっと手前、写真の左手から汗ばんだ体に突然「氷河のといき」といわれる不思議な冷気を感じます。昔、氷河で削り取られた岩石や土砂などが堆積した地層の空間の多くある地盤の中を冷たい雪解け水が流れ、それに冷やされた空気が岩の隙間から、漏れ出しているのです。ちょっと吹き出し口を探してみてみると、疲れた身体をやさしくつつみこんでくれる涼風となって癒してくれます。

歩き始めて約1時間で一ノ倉沢出合に到着します。谷川岳の東麓、一ノ倉沢を見上げれば「おお!」と叫び声をあげたくなります。そのスケールといったら下から見上げるだけでも足がすくむほどで、今も昔もクライマーの憧れであり多くの命を奪ってきた大岩壁だけに、岸壁を登る者を拒むようような荘厳さと神々しさとともに恐ろしさも感じます。一方で遠巻きに見ると残雪と青空の美しさ、筋骨隆々とした岩の荒々しさとが同居した組み合わせがとても美しい。

この地方の方言で岩や岸壁のことを「クラ」と呼んでいます。世界でも最も登攀の困難な岸壁のひとつに数えられ(グレード6級)、剱岳、穂高岳とともの日本三大岩場として知られていて、谷川連峰随一の岩場であることから「一ノ倉」と名付けられています。ここにはトイレもあり、昼食休憩には丁度いいです。

青空の下、緑濃い森の先に陰影を帯びたゴツゴツとした岩壁がそびえ立ち、中腹に見える白い固まりは雪渓です。そして足元には地中をくぐりぬけた清らかな雪解け水が勢いよく流れています。手をつけてみるとその冷たさにびっくりしますよ。白い飛沫を上げる利根川源流に、残雪と青空の美しさと筋骨隆々とした岩の荒々しさが同居した組み合わせが見事な風景です。

舗装路は一ノ倉沢出合までで終わり、ここから先は未舗装道路になるのでここから来たコースを戻るのもいいです。因みにハイキングとは別に一ノ倉沢出合まで環境に優しい電気ガイドバス(500円)が運行されているので歩くのが苦手な人は利用してみてください。   一ノ倉沢トレッキングコースはここから湯桧曽川方向に下っていくのですが、まだ体力、時間的に余裕のある方は、1km先の幽ノ沢やさらにその先の芝倉沢方面へのハイキングコースを歩いていくこともできます。

この清水峠越街道は、みなかみ町湯桧曽川に沿って谷川岳、茂倉岳等の谷川連峰の東麓を縫い、上越国境の清水峠を越えて新潟県南魚沼郡清水に至る道で古くから上州と越後を結ぶ最短コースとして清水越往還あるいわ直越(すぐごえ)とも呼ばれていた重要な道でした。戦国時代には上杉謙信が永禄3年(1560)関東進出を図った際清水越を通ったことを示す記述が古文書に見られます。その後明治14年に工事を着手し現在は国道291号となっています。

未舗装道路の岩肌には、岩壁にアタックして亡くなった登山者を追悼するプレートがいくつもはめ込まれています。15分程急な山道を下り、湯桧曽川沿いの清水峠越新道に出ます。渓流脇の涼しい道を歩いていきますが、一ノ倉沢出合(新道)へは沢を渡ることになり、夏場の大雨の時に鉄砲水が発生する場合があるので注意が必要です。

ブナ林がここから続き、急な階段を下ることになります。

一ノ倉沢出合(新道)からはブナ林が続く平坦な道ですが、マチガ沢出合(新道)には一本橋が渡されていたりします。

ここからは未舗装の車道になっている歴史古道清水越を湯桧曽川に沿って歩きます。あとは谷川岳ベースプラザに到着すれば往復約2時間半の登りらしい登りのほとんどない楽々「一ノ倉沢トレッキングコース」の終了です。

丁度11時お昼時、以前より訪れたいと思っていた評判のそばや「そば処 角彌」でいただきます。越後・長岡にて1764年の創業260年、戦後、湯桧曽温泉街そして平成元年(1989)みなかみに移転して今にいたります。

名物は「へぎそば」です。へぎそば発祥の十日町に近い新潟長岡で創業だからでしょうか。“へぎ”とはそばを載せる板状の容器のことですが、十日町ではつなぎに“布海苔”を使いますが、ここでは小麦の二八そばになります。石臼挽きのそば粉でていねいに打ち上げた蕎麦を店舗裏の湧水でさらし、すばやく人数分のへぎに「直盛り」しています。盛り方には2種類あり、十日町では主にへぎに人数分のそばを数口分ごとに丸めて盛り付ける「玉盛り」が主流です。鰹節でだしをとった薄口(色が淡い)のつゆは二八の滑らかなそばをどんどん咽ごしよく運んでくれます。

トレッキングの疲れは温泉で癒すのが定番です。関越自動車道水上IC近くの「仏岩温泉 鈴森の湯」へ向かいます。グリーンハウスという岩魚釣りやBBQ場を併設していて入口まではすこしどうかな?という感じでしたが、受付で下足キーと交換に入浴料(800円)を払って中に入ると木のぬくもりが感じられる綺麗に整備された温泉施設です。

おおよそ1500万年から2000万年前の太古の地層から湧き出す源泉はカルシウム硫酸塩泉でPH8.2の美肌の湯です。檜造り内風呂は2つの浴槽に分かれ、どちらも源泉かけ流しですが、広い方が「加温湯」、狭いながらも110cmと深く、腰かけ棚もあるのが源泉温度そのままの35℃の「ぬる湯」です。交互浴が楽しめます。窓には外の緑が映しだされ、まるで森林浴をしているようにリラックス効果があります。

露天風呂は眼下を流れる「阿能川」の音を聞きながら、また滝になって落ちる水の流れる姿に癒されながら、緑の木立に囲まれた開放感たっぷりの湯に浸かれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おすすめの記事