南信州・伊那谷を薄桃色に染めアルプスを彩る名桜をめぐる

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東は赤石山脈(南アルプス)、西は木曽山脈(中央アルプス)、東西をアルプスに抱かれた天竜川流域に広がる信州伊那谷は風光明媚な地です。山々の雪解け水が天竜川を満たす頃、その自然の恵みを受けて見事な桜が咲き誇ります。名城を埋め尽くす天下第一の桜「高遠城址公園」に一本桜の古桜と、南信州に訪れた春を感じながらアルプスの山々を借景に咲き誇り彩る名桜をめぐる南信州・伊那谷の旅に出かけます。

中央自動車道伊北ICを下りてまずは箕輪町中曽根のエドヒガンザクラを訪れます。中曽根公民館の北にある樹齢1000年といわれる見事な一本桜の老木で、その深みのある枯淡な佇まいはまさに威風堂々。木の根に熊野権現が祀られていることから「中曽根の権現桜」とも呼ばれています。

樹高約13m、根元の周囲約8mの大木で、薄紅色の小さめの花が盛んに咲き誇ります。根元から2つの大枝が東西に分かれていて、夫婦桜とも言われ、開花時期のずれからか一方は紅色、他方は白っぽく花の色が違っているようにも見えます。晴れていれば中央アルプスの雄姿とともに美穂とに枝を広げるその姿を眺められます。

伊那市西の段丘上にあるのが、戦国時代の春日城址をそのまま公園にした「春日公園」です。城は天文10年(1541)に織田信忠軍によって焼け落ち、現在は城の堀や石垣を彩る薄紅色の約420本のソメイヨシノとコヒガンザクラが植えられています。

伊那市街や残雪の南アルプスを一望しながらの花見は南信州ならではの趣があり、高遠城址の人ごみを避けて桜を愛でるならまさに穴場といえます。毎年4月上旬から下旬に開催される桜まつりでは、伊那谷新酒まつりが催されていて、夜明け前や今錦等5種がグラスこみ1000円で試飲ができるのです。

国道361で高遠方面に向かい、笠原の信号を左折してしばらく走ると池の堤の周りを囲むように桜が咲き乱れ水面に映る姿が美しい「六道の堤」が現れます。江戸時代の末期、嘉永元年(1848)高遠藩主内藤頼寧が窮乏する藩財政を打開すべく新田開発を命じ、藤沢川から引水し嘉永4年(1851)に堤は完成。堤の広さは約16000㎡、現在も六道原に広がる水田33.5haを潤しています。

春になれば水面に映るタカトウコヒガンザクラやソメイヨシノなど120本が咲き誇り、東西の南アルプス、中央アルプスの白い雪と美しいコントラストを見せてくれるカメラマンにも大変人気の穴場スポットです。

「たかとほは 山裾のまち 古きまち ゆきあう子等の うつくしき町」と明治の文学者・田山花袋が謳った高遠は、700有余年の歴史文化に支えられた城下町です。日本さくら名所100選に選ばれ「天下第一の桜」ともいわれる信州屈指の桜の名所「高遠城址公園」があり、園内には約1500本ものタカトウコヒガンザクラが大きく枝を広げ、天空を覆い尽くさんばかりに咲き誇っています。

桜色が濃く、鮮やかな濃いピンクが風にそよぎ、満開の頃ともなるとその壮観さに圧倒されます。雪を残した中央アルプスを背に、鮮やかに咲き誇る“桜の森”は言葉にならない迫力と美しさを持っています。

南ゲートを出、三峰川にかかる白山橋を渡ってさらに三峯川を遡り、白山トンネルを抜けた先が勝間集落です。集落の上方、小高い丘の一角に立つのが勝間薬師堂で、お堂をすっぽりと包み込むようにほんのり染めるのが、両脇に咲き誇る樹齢150年の2本のシダレザクラです。

大瀑布のしぶきのようにしだれ、周辺にも何本かの桜の木があり、ひなびた里山の景観を一転、あでやかな錦絵巻に変えています。ひと枝ひと枝に力強さが感じられ、静かな山里とともに生き続ける桜を見ながらゆっくりとした時間が過ごせます。高遠城址公園の天下第一の桜を見たあとは、なおさらひっそりと咲く風情に心が洗われます。

勝間薬師堂からは、手前にエメラルドグリーンの高遠湖の湖畔、桜に囲まれる高遠ホテル、そしてその奥にはタカトウコヒガンザクラの雲海に囲まれた高遠閣の赤い屋根が遠望できます。

国道153号を南下して駒ヶ根ICから車で約3分。平安時代前期、貞観2年(860)に不動明王を本尊とし本聖上人によって開かれた南信州随一の祈願霊場が、天台宗の別格本山「宝積山光前寺」です。境内は杉林に包まれ樹齢数百年の巨木も多く、光苔や早太郎伝説で彩られた古寺の風格は申し分ありません。秘仏である不動明王は、7年に一度の御開帳で拝顔することができます。

平安時代前期、貞観2年(860)に本聖上人によって開かれた南信州随一の祈願霊場・天台宗「宝積山光前寺」。境内は杉林に包まれ樹齢数百年の巨木も多い。本堂は入母屋唐破風造りこけら葺きの建築様式で、江戸時代後期に再建されています。

本堂の左手前に南信州唯一、高さ17mの三重塔が建つ。均整のとれた美しい姿が特徴的で、全体に美しい彫刻が施されている。彫刻は江戸中期から後期に活躍した大工、立川和四郎の手によるもの。塔内には五智如来が安置されています。そして村人を苦しめていた遠州見附の怪物(老ヒヒ)を退治した寺の飼い犬・早太郎伝説が残されている霊犬早太郎の墓もあります。

霊犬早太郎伝説は今から約700年前、光前寺に早太郎という大変強い山犬が飼われていました。その頃遠州府中(静岡県磐田市)見付天神社では、毎年祭りの夜にひとりの子女を神前に人身御供として供える習わしがありました。これを救おうと社僧一実坊弁存は子女を攫う怪物が信州の早太郎を恐れていることを知り、子女の身代わりとなった早太郎の力によって怪物(老ヒヒ)は退治されたのです。

昭和42年(1967)「光前寺庭園」の名で、6.7haに及ぶ全域が国の名勝に指定されました。庭園を中心に門前や境内の約70本のシダレザクラが咲き誇り、晴れていれば残雪の駒ケ岳を借景に艶やかに彩ります。開花期間中の夜はライトアップされ幻想的な美しさですよ。

光前寺の桜に先駆けて花を付けることで知られるのが、駒ヶ根市中沢吉瀬にある「南吉瀬のしだれ桜」です。県道18号から東に150mほど入った中沢地区の里山に道路に覆いかぶさるように一本だけそびえ立っています。樹齢約100年の大樹は、訪れる人の少ない場所ですが、堂々と枝を伸ばす様は他の名桜にも劣りません。

近くの十王堂にも立派な一本桜があり見応えがありますので一緒に是非寄ってみてください。

天竜川が造り出した壮大な河岸段丘を眺めながらそのまま天竜川沿いに県道18号で中川村に向かいます。川べりから山肌までソメイヨシノの薄紅色に染まる坂戸峡は、南信州の早い春を告げる風物詩です。坂戸峡に架かる登録有形文化財の坂戸橋は全長77.8m、幅5.5m、高さ20mのアーチ型の橋で、昭和7年(1932)に建てられた当時、東洋一といわれました。橋の両側からもぎっしりと咲く桜のトンネルをくぐります。

国道から天竜川を渡った東岸にあるのが「大草城址公園」です。南北朝時代に後醍醐天皇の第八皇子である宗良親王を庇護した大鹿村の大河原城主香坂高宗の拠点の城で、10種類以上約200本の桜が咲き誇り、高台にあるため眺望が素晴らしく、残雪を冠した中央アルプスが目の前にそびえます。宗良親王は南朝の勢力を回復するために越後や越中に侵攻しましたが、その後うまくいかずに伊那谷に逃れて、30年間を同地で過ごしたといわれています。

さらに県道18号を南下し、渡場というところで今度は小渋川沿いに県道59号・松川インター大鹿線で小渋ダム方面に向かいます。小渋ダムでダムカードGETです。

そのまま県道59号松川インター大鹿線で大鹿村に。原田芳雄の映画「大鹿歌舞伎」で一躍有名になった村です。大鹿村役場からここにも桜で有名な「大西公園」があります。昭和36年(1961)の伊那谷集中豪雨による大水害の後、有志が大西山の崩壊地に桜を植えたのがはじまりで130種・約3000本が咲き乱れる南信州随一の桜の名所です。公園の端に立てば眼下に小渋川、仰げば残雪の赤石岳を望め、赤石岳を背にピンク色の桜の園が見渡す限り続きます。

遠くから見ると、まるでピンク色の島が浮かんでいるように錯覚します。

南信州を諏訪市から南下、高遠・長谷、そしてここ大鹿村を経て静岡県へ抜ける国道152号沿いは、古代から東西勢力の拮抗する分岐点となっていました。南北朝時代には後醍醐天皇の皇子・宗良親王が東奔西走し、戦国時代は武田信玄が戦道と利用するなど歴史の痕跡を数多くとどめている。かつては秋葉街道と呼ばれ、火伏せの神を祀る秋葉神社へ続く信仰の道でもありました。

国道152号線から小渋川沿いに県道253号赤石岳公園線の最奥に山腹にせり出すように立つ村営の保養施設が小渋温泉「赤石荘」です。宗良親王の家臣・渋谷三郎により室町時代に発見されたと伝わる温泉の泉質は塩化物炭酸水素塩冷鉱泉で慢性皮膚炎、リウマチ、飲用で糖尿病、胃腸病等に効用があります。南アルプスの主峰、赤石岳を眼前に仰ぎ、眼下に小渋川渓谷を望む切り立った山腹にせり出す露天風呂は「天空の湯殿」として絶景の一言に尽きる。明治25年(1892)には日本アルプスの父として知られるウエストンも訪れた記録があります。

信州伊那谷の一番のごちそうは南アルプス・中央アルプスの三千メートル級の山々から、天竜川・三峰川の扇状平野の間に広がる大パノラマの景観です。その伊那谷の景観の中に歴史を刻んだ名刹を彩る桜が咲き誇ります。

信州で最も早く開花する天竜峡から、伊那谷を通って南北約212km、東西約120㎞の信州を2週間以上かけて県内を北上する桜前線を追いかけてみませんか。花見に興じたり、写真に収めたりと、各地の桜を楽しむのはなんとも優雅な春の旅です。

天下第一の桜、高遠城址公園に詳細「見たかったのは天下第一の桜「高遠城址公園」艶やかな春景色」はこちらhttps://wakuwakutrip.com/archives/7186

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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