阿寺川の清流と伝説の淵とで織りなす“阿寺ブルー”の阿寺渓谷

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信州木曽の数多くある景勝地のひとつである阿寺渓谷は、木曽川の支流で深い木曽五木や広葉樹に覆われた阿寺川沿いに約6km続く緑豊かな美しい渓谷。雨が降っても濁らないとされるエメラルドグリーンの水面が輝き、その透明感と美しさから“阿寺ブルー”と呼ばれ目を奪われます。抜群の透明度を誇る阿寺川清流や数々の伝説を持つ淵々や岩が織りなす圧巻の渓谷美を間近で見るべくトッレキングに出かけます。

野尻駅より西方1.5km、阿寺橋を渡ると阿寺渓谷入口です。砂小屋山に源を発する全長約15kmある清流阿寺川に架かる阿寺橋は、全長145mのアーチ橋です。左奥に架かる橋は阿寺川橋。

澄み切った水が巨石の間を流れるこの渓谷は、大小いくつもの滝や淵など、四季折々に美しく訪れる人を魅了します。阿寺川は見た目以上に流れは急ですが、随所に淵をつくり木曽川へと注いでいく。天然フィルターでろ過された透明感抜群の水は“阿寺ブルー”と称される正真正銘のエメラルドグリーン。渓谷はここから森林管理局の林道を北西へ1kmほど入った地点から本格的となります。

渓谷入口近くには、明治34年(1901)に施設された日本初となる森林鉄道(阿寺軽便鉄道)、通称林鉄記念碑が建ち、「六十余年の輝かしい歴史を有する森林鉄道との訣別、誠に感無量なり」と当時の営林署長の言葉が刻まれています。

山間を深く分け入ると、大自然の造り出す見事な景観が現れます。大きな岩壁の「千畳岩」。この岩の下に立って耳を澄ますと谷川のせせらぎが反響し、全身の感覚が研ぎ澄まされたように感じられ、あたかも頭上に渓流がほとばっしているような錯覚を受けます。別名「瀬音岩」といいます。阿寺渓谷入口から1.4km

阿寺渓谷では「木曽のナー中乗りさん」で知られる「木曽式伐木運材法」は、大正4年(1915)に森林鉄道による運材に変わりました。往時はボードウィン製のミニSLが、玉葱型の煙突からモクモクと煙をはいて、台車で材木を運搬しました。この林鉄も自動車道の開通に伴い昭和41年(1966)に廃止されました。千畳岩の先に阿寺川に架かる第一阿寺川橋梁は大正12年(1923)に完成し、昭和43年(1968)まで木材を運搬していた森林鉄道跡である。阿寺ブルーの川の色が神秘的な雰囲気を漂わせています。

第一阿寺川橋梁の先、遠方に雨現の滝が見えます。阿寺川右岸の岩肌に雨が降ると現れる滝です。

少し先にヒノキ美林が。明治27年日清戦争の頃に植えられた樹齢100年以上のヒノキが展示林としてほごされています。

ヒノキ美林の先に尾張藩の上級武士たちの屋敷があったと言われている「古屋敷の跡」と呼ばれる場所があります。江戸時代木曽は主に尾張藩の直轄であり、藩の役人が阿寺渓谷内にも駐在していたと考えられます。阿寺渓谷は日本遺産「木曽物語り 木曽路はすべて山の中~山を守り 山に生きる~」の構成文化財の一つです。木曽谷の約9割が森林で占められ、限られた耕作地と農作物では領民を養うことができず、豊臣秀吉の時代から米年貢の代わりに木年貢が課せられ、領民には米が配給されるなど、豊かな森林資源が木曽の暮らしを支えていました。この木曽檜の危機が訪れたのは、江戸城、駿府城、名古屋城など、城郭や城下町造営用として膨大に伐り出された江戸時代初期の頃でした。木曽谷を所轄する尾張藩は、木曽檜をはじめ「木曽五木」の伐採を禁止するなど山林の保護政策に乗り出しました。“檜一本首ひとつ 枝一本腕ひとつ”とまでいわれた規制は、木材で生計を立てていた領民にとって厳しい経済統制となりました。渓谷を形成する阿寺山は、江戸時代中期には全てが留山となるなど、伐採制限が行われ、現在も木曽郡下で有数の森林を保っています。

ヒノキ美林を挟んで、狐ヶ淵狸ヶ淵があります。昔、この渓谷に色々な動物が棲んでいたことから、渓谷内にはそれぞれ動物の名が冠した淵があり、狐ヶ淵と狸ヶ淵は、その水面の透明さから、狐や狸が「化身」の出来栄えを鏡代わりに水面に映し見たことから名付けられたとされています。写真は手前の狐ヶ淵

千畳岩から1.1kmのとろにある写真の狸ヶ淵。ピーンと張りつめた渓谷の深い淵を見ればまさに鏡のようです。

渓谷はヒノキやサワラ、カエデなどが両側に迫り、その間に、青々とした静かな淵があれば、巨岩や奇岩の間をしぶきをあげて駆け抜ける急流や、浅瀬のせせらぎもある、というぐあいに、目を移すたび、場所を変えるたび、次々新鮮な景色を見せてくれます。

亀の頭によく似た岩が、阿寺川の清流から突き出しているように見える亀石を過ぎ、橋の上から犬帰りの淵を見下ろします。里に住む猟師たちは、しばしば犬を連れてこの谷に分け入り猟をしていました。しかし、この淵まで来ると険しい断崖絶壁のため犬は恐れて渡ることが出来ず、仕方なく引き返したと語り継がれることから、この名が生まれたといわれます。

阿寺渓谷入口から約2.8km、赤彦歌碑駐車場があり、夏期はフォレスパ木曽 あてら荘前からのシャトルバスが運行され、ここが乗降場所になります。四阿屋やトイレもありここを起点に散策するひとも多いです。夏期以外は車で移動しながらポイントごとに停まって眺めるのもいいし、歩くながらでもいい。いずれにしても車道から川まではすぐです。四阿屋近くから眺めることができる樽ヶ沢の滝は、橋の真下から沢水が螺旋状に滝壺へ流れ落ちる様子が見れます。

ここから林道を進んでゴールの阿寺渓谷キャンプ場を目指すこともできますが、約1周1時間の遊歩道が整備されていますので島木赤彦歌碑の脇から遊歩道に入ります。島木赤彦は、上諏訪村の生まれの歌人であり教育者。正岡子規の弟子・伊藤佐千夫の来遊を乞い、子弟関係を結びさらに親交をふかめました。明治40年6月には、かつて正岡子規の歩いた木曽街道を佐千夫は中津川、赤彦は塩尻から歩き、途中阿寺渓谷にて出会います。五木の茂る中、碧玉の水が淵を洗う明浄幽遠の場所に感激し、神にささげる気持ちで詠うとして四首連作した最初の一首が歌碑に刻まれた「山深く分け入るままに谷川の水きはまりて家ひとつあり」。阿寺渓谷での連作は秀作です。

対岸へ渡る島木赤彦歌碑近くの赤彦吊り橋。元々は森林管理用の吊り橋でしたが改修され、上流の中八丁の吊り橋までの森林浴が満喫できる森の散歩道へと続きます。吊り橋へ向かう道中には、川の色が際立つ淵が点在し、水の流れを緩やかに受けながら佇んでいます。

吊り橋を渡る途中で眼下を見下ろす爽快感。

遊歩道は舗装されていないので、傾斜の急なところや、木の根道など注意しながら歩きます。5分ほどで分岐を六段の滝へ向かいます。ほ90mほど下ると6段続きの滝があります。間近で豪快な滝音と阿寺川のせせらぎとを聞きながら、マイナスイオンを体に受けます。

分岐まで戻ってさらに200mほど進とむとウナリ島への道と林道にでる中八丁吊り橋への道との分岐に出ます。ウナリ島はその昔、許されぬ恋仲」の二人がここに「駆け落ち」して人目を忍んで住んでいましたが、ある日女が毒キノコを食べて亡くなってしまいます。その後雨で増水した夜には苦しみに悶えた女のウナリ声と男の泣き声がこの島から聞こえると言われたことから名付けられました。川沿いに3分ほど下流に向うのですが、この先の梯子がかけられた崖を登ったところで島ではありません。

赤彦の吊り橋から続く遊歩道のゴールの中八丁の吊り橋は、元々森林管理用の吊り橋でしたが、渓谷に架かる吊り橋の景観を守るため改修されました。再び林道からゴールを目指します。

ここからゴールの阿寺渓谷キャンプ場までの約2.5kmの間に阿寺渓谷のメインスポットである熊ヶ淵と牛ヶ淵が続きます。熊ヶ淵のあたりには熊の出没が多く、時には子連れでこの淵に入り、水浴びを楽しんでいたのをよく見かけたと言われます。そんなところから誰言うとなく、熊ヶ淵と呼ばれています。美しい淵の上に立って透き通った水をじっと見つめていると、中に吸い込まれていくような錯覚に陥ります。

700mほど離れて牛ヶ淵があります。牛の姿に似ているところから名付けられたといわれます。この渓谷一番の深淵で10mもの深みになるといい、澄み切った流れが深い淵に注ぎ込みます。底石まで見える透明度抜群の水は青く神秘的です。

ゴール手前700mの阿寺川越しに吉報の滝が望めます。この渓谷に泊まり込みで働いていた江戸時代の山人達には、里の様子が中々伝わってきませんでした。しかしこの滝の音がよく聞こえる日は里から「良い知らせ」が届き、せせらぎの音と共に単調な山人達の生活の慰めとなりました。そんなところからこの名が付けられました。

ゴール地点の阿寺渓谷キャンプ場にあるのが砂小屋の美顔水。江戸時代この阿寺山を管理するために遠く尾張藩から派遣された山役人たちの奥方がこの清水で朝夕洗顔したところ、皆、見違えるほど色白の美人になって帰ったことから名前がついたと言われます。森林の奥の岩間から湧き出るこの清水は谷の中でも一番きれいで冷たい。平成22年1月「信州の名水・秘水」に選定されています。

阿寺橋まで戻る途中、往路では森林遊歩道を歩いた場所を林道から対岸の林の中に六段の滝が望めます。

阿寺橋に着けば往復約12.6kmのトレッキンギの完歩です。後は手前の阿寺川橋を渡り1.5kmほど先のフィレスパ木曽 あてら荘に向かいます。中央アルプスを一望する木曽川畔にアウトドア気分を盛り込みながら展開する森と水と温泉のリゾート、フォレスパ木曽に佇む閑静な温泉宿があてら荘です。木造の施設はどこか懐かしく、ノスタルジックな装い。温泉に浸かってトレッキングの疲れを癒します。

手前には大桑村農家のおばちゃん達が作る素朴な郷土の味が楽しめる「おらが村の味処 いなほ」があります。

特製のタレを使った五平餅や手打ちそばが人気。セットでいただけます。

 

 

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