岩手・龍泉洞はドラゴンブルーの地底湖が待つ、神秘の鍾乳洞

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洞窟は地球に残された数少ないフロンティアの一つ。日本最大級の石灰岩地帯がある岩手県・岩泉町には、日本三大鍾乳洞の一つ龍泉洞や安家洞をはじめ110本を超える数多くの洞窟が確認されています。岩泉の旅の始まりは、太古の神秘に包まれる龍泉洞へ。気の遠くなるような時間をかけて成長した鍾乳石、奇妙な姿の生き物たち、世界有数の透明度を誇る地底湖・・・と洞窟は何百万年という悠久の時が作り上げた地球の芸術作品です。龍の水神様が守る青く透明な地底湖目指し、自然の造形美に癒される鍾乳洞の冒険にでかけます。

岩手県の県都・盛岡から車で約2時間。岩泉町は、岩手県中央部から東部に位置し、東を太平洋に接する下閉伊郡の町です。本州で最も面積が広い町であり、安家洞、氷渡洞など巨大な洞窟が多くあります。2014年7月19日NIKKEIプラス1「夏はひんやり鍾乳洞探検」で第2位龍泉洞もその一つで、山口県の秋芳洞、高知県の龍河洞とともに日本三大鍾乳洞ともいわれ、洞窟の奥でドラゴンブルーと称される世界有数の透明度を誇る地底湖が待ち受けています。観光コースとして700mが公開されており、洞窟の全長は現在確認されているだけでも4088mに及びます。全体では推定5000m以上あるとみられ、今なお調査が進められています。

龍泉洞入口は岩泉町の中心部にあるアイヌ語で霧のかかる山を意味する宇霊羅山の東山麓にあり、古くから信仰の対象として、そして豊かな水源として地元の人々に親しまれていました。龍河洞の起源伝説には、はるか昔、あるときいきなり宇霊羅山の麓の辺りからシュー、シュー、シューと変な音が聞こえだし、最後にシューッ、シューッ、シューウウウウッと特別の大きな音とともに岩山を割って、大きな龍蛇がとびぬけてきました。龍蛇はたちまち天に駆け上って見えなくなりました。すると龍蛇のとび抜けたあとから、美しい泉がこんこんと湧きだしました。泉は冷たい水で、飲んでみると、とってもおいしくみんあが喜びました。こうして龍河洞ができたとのことです。

崖下の入り口から早速、鍾乳洞の足を踏み入れます。たちまち中は暗くなり、気温はぐっと下がる。入口からすぐ、地下水の流れが集まる淵が「長命の淵」です。通路の横を川のように流れる地下水の透明度にいきなり驚き、龍泉洞が水の鍾乳洞であることを実感します。

現在の入り口は人工的に開けたもので、左右に曲がるトンネルを歩き、最初に到着した場所が、切り立った岩壁が左右に迫る「摩天楼」です。天井の高さは10m強あり、4,5階建てのビルがすっぽり収まる高さにも目を見張りましたが、そにまま洞窟がまっすぐに続いているのにも驚かされます。

幅数mの細長い裂け目がぽっかり口を開けていて、龍が通った道とも言われる細長く続く空間を、ところどころに照明があるおかげで先まで見通せる。石灰岩の中の洞窟は、水が集まりやすい断層に沿って形成され、一定方向に延びる性質があるため見事に一直線で、この直線部分は「百間廊下」と名付けられています。

百閒廊下の板床の脇には水がとうとうと流れ、暗い廊下を進むにつれて轟音が大きくなってきます。下に水の流れを感じながら洞窟の奥へと進みます。百閒廊下の終点には板張りの足下から、轟音を立てて流れ出る「玉響の滝」と名付けられた地下水の小さな堰がある。それにしても水量が豊富で、洞口付近から毎秒1100~1599ℓもの地下水が湧き出ています。ここで道は二手に分かれますが順路に従って直進します。

ここからは先一段あがりさらに奥へ、だいぶ狭くなった場所「竜宮の門」を抜けると、いきなり視界が開けます。

月宮殿のスタート地点には鍾乳石がビーナスの像のように見えるスポット「洞穴ビーナス」。

水の流れから離れてしんと静まり返ったせいもあるのか、ことさら広く感じられる「月宮殿」と名付けられたこのホールにはさまざまな形の鍾乳石が並び、その岩肌が、LED照明で幻想的な月の世界を演出しています。

なかでも目に止まった「音無滝」は、まるで鍾乳石が壁面を壁一面を流れているかのようで、このタイプの鍾乳石は「流れ石」といって、水に含まれた石灰分が壁を伝わる間に再結晶してできたものです。

音無滝辺りからまた道が狭くなり、ハート型に浮かび上がった岩壁が現れます。

階段を下るとやがて板張りの歩道に変わる。その先の光景はこれまで目にしたどんな風景よりも神秘的でした。水中ライトに照らし出された湖は、どこまでも透き通った目が覚めるほどの青色の水を湛えています。この透明な青色は、吸い込まれそうなほど透明な輝きから「ドラゴンブルー」と呼ばれ、底のほうまで見える深い水には龍の水神様が棲んでいそうな雰囲気です。昭和30年代の調査で発見された第一地底湖で水深は35mと書かれていましたが、透明度がとても高いおかげで、薄明りでも底の方まで見渡せる。おまけに周囲が暗いので、足下にコバルトブルーの水塊が浮かんでいるようにも見えます。今のところ龍泉洞には第八地底湖があることまでわかっていますが、一般のルートは第三地底湖までです。

第一地底湖から続いて第二地底湖は水深38m、昭和37年(1962)の潜水調査で発見された地底湖です。

観光コースの最終地点にある第三地底湖は水深98m、昭和42年(1967)の潜水調査で発見されました。ここまで所要時間30分。

ここからは地底湖水面からおよそ35mの観光コース最高地点の三原峠まで274段の階段を登っていきます。

峠を越えて下る途中にある第一地底湖展望台から第一地底湖を見下ろすと、岩肌にブルーの水面が神秘的に浮かび上がります。

月宮殿まで戻ってくると今度は左側を見ていると、獅子の横顔に見える「守り獅子

長年堆積して成長し鍾乳石の形がお地蔵様の姿に見える「地蔵岩

大きな亀に見える「亀岩」と大自然が造るかわいらしい造形が目を楽しませてくれます。

亀岩を左手にとり往路とは違う道を進みます。一口飲むと3年長生きするという伝説のある「長命の泉

蝙蝠穴」は、1つの洞窟に5種類の蝙蝠が生息する珍しい洞穴です。国の天然記念物に指定され、洞窟に棲む“キクガシラコウモリ”が良く見られるほか、越冬ために洞窟を訪れる“コキクガシラコウモリ”“ニホンウサギコウモリ”“テングコウモリ”“モモジロコウモリ”が確認されています。コウモリにドキドキしながら百閒廊下を戻り外に出ます。

昭和42年(1967)、県道の拡幅工事中に、清水川を挟んだ龍泉洞の対岸の斜面で新たな洞窟が見つかりました。その後の調査により、新しい洞窟はかつて龍泉洞とつながっていたことが判明。龍泉洞より小さいものの、さまざまなタイプの鍾乳石が見られ、土器や石器なども出土したことから、およそ200mの鍾乳洞が公開されている自然洞窟を使った「龍泉新洞科学館」として見学できます。

真っ直ぐなトンネルを下り、自然洞窟に入ってすぐ左手に「石灰岩とチャート」というコーナーがあります。石灰岩はサンゴや二枚貝などの生物の殻が堆積してできた岩石です。ただし、洞窟の洞窟の上部はチャートという硬い地層と交互に積み重なっているため、石灰岩が水によって溶かされることによって、溶けにくいチャートが表面に突出して残り、天井にはいかにも地層らしい縞模様が残っています。

順路はいったん上り坂になります。程なく両側に並んだ鍾乳石は圧巻です。天井から垂れ下がった「つらら石」・タケノコのように床から盛り上がった「石筍」。本物のストローと同じように細い、中空の「ストロー」は摩訶不思議。滑らかな鍾乳石はホワイトチョコとかアイスクリームみたいです。

高くなった順路が再び下がると、洞窟が水の流れによって造られることを示す地形が続く。洞窟の中断が水平方向にえぐられている「ノッチ」は、水流のあたる川の土手がくぼむのとと同じで、長期間にわたり水面がその辺りにあった証拠です。逆に棚板のように突き出ている「流礫棚」は、前に砂礫が堆積したところに「流れ石」が表面を固め、その後、水流によって下側の砂礫が削られたことによってできました。

順路が一番低くなったところまで来ると、相当な水量の泉が湧き出しています。この水は龍泉洞から清水川の下を50分かけて通って来ているとのこと。

洞窟の奥は学術的に貴重な資料として保護されています。

龍泉新洞の締めくくりは出口の直前、発見された縄文遺跡の暮らしをイメージしたジオラマ展示で終わっています。

洞窟を一通り歩いたら、さすがにのどが渇いて龍泉洞入口前に設置された水飲み場で、湧き出る名水・龍泉洞の水を頂きます。泉の湧く岩のある場所ー龍泉洞のある岩泉町は、そんな地名の由来を持つ町です。そのほとんどが豊かな森を育む山々で、降り注いだ雨や雪がこの森で濾過され地表に浸み込み、長い年月をかけ石灰岩の岩盤を通って洞内に湧き出ています。名水百選の地底湖が湛える豊かな水はカルシウム分の多い弱アルカリ性で、そのまま飲んでもおいしく、2019年モンドセレクションで「最高金賞」を受賞しています。

まだまだ~岩手でひんやり~洞窟探検にでかけましょう。

 

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