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日本の紅葉名所百選」に選定されている滋賀県「湖東三山」とは、湖東平野を望む鈴鹿山脈西麓の山裾に直線距離にしてわずか7kmの間に佇む天台宗の3つの寺院、百済寺・金剛輪寺・西明寺の総称です。貴重な仏像や四季折々の花で彩られた庭園を有する名刹で、いずれも秋にはその鮮やかな色合いから“血染めの紅葉”と称されるほど燃えるような楓に包まれます。また近くにはこれも紅葉で知られる日本遺産の禅寺・永源寺も。秋の近江を代表する名刹を巡り目も覚めるような美しい情景に会いに行きます。いずれも山の清らかな空気に満ちた個性豊かなお寺ばかり。3つとも巡るもよし、お気に入りのお寺でじっくり過ごすのもよしです。

湖東三山はともに、平安時代以前に遡る歴史を持ち、かつては天台信仰の拠点として大いに寺勢を誇りました。現在は往時の盛大さを偲ぶ、山門から本堂へと至る長い参道が広大な寺域を今に伝えています。こうした長い参道はまた、山岳密教の天台寺院の特色のひとつで、参拝者はその道をたどりながら、心身を整えていく。長い道のりといっても静謐な空気を吸い込み、参道の紅葉に目をやりながら歩くと、時の経過を忘れていまいます。特に湖東三山を染め上げる楓は色鮮やで、目も覚めるような美しい光景に出合い、身も心も穏やかな気持ちになれます。

また平安期に目覚ましい隆盛を遂げただけに、各寺には貴重な文化財が残り、優れた仏教美術に触れるのも古刹巡りの愉しみといえるでしょう。

名神高速道路湖東三山スマートICを出て目指すは湖東三山で最も北に位置する甲良町の「龍應山 西明寺」。惣門をくぐり表参道から本堂への石段を上っていくと、色とりどりのモミジが二天門と重なって見えて優美。境内には350年以上の樹齢を誇る古木もある約1000本ものカエデが豪華絢爛な秋の装いを見せてくれますし、360度背の高いモミジに覆われた、苔生す大地の絶景が目に入ります。上を見あげると赤や黄色に染められた空、下を見下ろすと緑の絨毯で美しい日本の秋を感じます。2015年5月米CNNのWeb特集で「日本の美しい場所31選」に選ばれたのもうなずけます。

平安時代初期の承和元年(834)三修上人が仁明天皇の勅願により開創され、 「日本100の古寺」の中に選ばれた天台宗の古刹です。最盛期の平安時代には、17の堂と300の僧坊を数えたといわれる。織田信長によって焼討ちされましたが、国宝第一号指定の本堂や飛騨の匠が釘を一本も使用しないで建てた総檜造りの三重塔、 室町時代初期建立の二天門が火難を逃れ現存していてます。歴史を今に伝える貴重な建築物と、紅葉が織り成す絶景はじっくり見ておきたいものです。

浮かび上がるような楓の葉に彩られた二天門をくぐると、鎌倉時代の代表的な宮殿建築のような典雅な檜皮葺き本堂が現れます。梁の上の蟇股や格子模様に当時の様式が見られます。

内陣には、大きな厨子があり、秘仏で本尊の薬師如来を安置。釈迦如来やカヤの一木で彫り出された不動明王、その左右にじは、蓮華を持つ矜羯羅童子と棍棒を地につく制多迦童子が配され、数々の仏像が居並ぶ様は壮観です。裏堂に並ぶ頭に干支の動物の顔を乗せた十二神将は、ユーモラスな親しみやすさが特徴で「えと寺」としても有名です。しかし写真撮影禁止ですので紅葉と同様しっかり目に焼き付けておきます。

そんな本堂の勇壮さもさることながら、西明寺の芸術の神髄といえばやはり三重塔です。本堂と同く飛騨の匠による純和様、総桧造りの塔の中に進むと、一面に巨勢派の画家による極採色の宝相華や法華経変相図といった極楽世界が描かれた壁画の圧倒的な美の世界に目を奪われます。

西明寺の紅葉を楽しむなら国指定の名勝にも指定されている「西明寺本坊庭園」別名「蓬莱庭」がおすすめです。山の傾斜を利用した池泉観賞式庭園は、江戸時代中期に望月越中守友閑によって造られたものです。折り鶴の鶴島と亀島がある心字池を囲む美しく刈り込まれた木々は雲を表し、薬師の浄瑠璃浄土を具現化し、本堂に祀る仏像を立石群で表した庭園に紅葉の美しさが加わった景色を楽しむことができます。秋、冬、春と咲き続ける樹齢250年の不断桜と一緒に紅葉が楽しめます。

湖東三山まん中のお寺が愛荘町にある「松峯山 金剛輪寺」です。今から1200年以上の昔、聖武天皇の勅願によって行基菩薩により天平13年(741)に開山された天台の巨刹です。 秋はヤマモミジやイロハカエデを中心に全山が色鮮やかに紅葉し「血染めのもみじ」と呼ばれるほどに深紅に染まります。

黒門とも呼ばれる江戸時代建立の単層の飾らない総門は、一間一戸、高麗門形式の桟瓦葺。くぐってすぐの境内の右手にあるお食事処「華楽坊」では精進料理がいただけますが、今日は左に白門から本坊の明寿院を覗きつつ、本堂までの300mの参道を駆け上がっていきます。写真正面には宝形の西谷堂、さらに通行はできませんが薬医門の赤門の前を通ります。

本堂まで300mはある長い参道がかなりの傾斜で続きますが、上っていく道のりは、さながら深山の趣です。

途中の参道脇には2000体ものかわいらしいお地蔵さん「千体地蔵」が並び、疲れを癒してくれますよ。

険しい石段の参道を登りきった先に二天門があります。向かって右に増長天、左に持国天をまつっています。三間一戸、入母屋造りの八脚門です。もとは2階がある楼門だったようですが、何らかの事情で上層を失い、現在単層の姿となっています。大きな草鞋は、七難即滅を願ってかけられているそうです。

その先には国宝の本堂が目に飛び込んできます。待っているのは真っ赤に色づく「血染めのもみじ」。心地よい風に吹かれて眺める景色は、長い参道を上ってきたご褒美のようで、心にしみます。国宝の本堂は「天平大悲閣」と呼ばれ簡素で飾り気のない鎌倉時代の代表的な建築様式を伝えています。元寇の戦勝記念として近江守護佐々木頼綱(六角頼綱)によって建立され、秘仏の本尊、聖観世音菩薩像のほか四天王立像をはじめ多くの仏像や寺宝が残っています。

血染めのもみじ」の言い伝えは、行基が一刀三礼で観音像を彫っていたところ、ある日、観音様の木肌から一筋の赤い血が流れ出し、彫るのをやめたということから「生身の観音」と称され、境内の紅葉はその血で染められたように紅く染まったとのことです。

この時期は日本最古の大黒天が特別公開されています。平安時代の作で頭上に冠を戴き、甲を着けて憤怒の相をしておられます。古式の大黒天で伝教大師のご請来とつたわります。もちろん金運の神様ということでお守りを購入します。

名勝 明寿院庭園へは白門をくぐります。様式は赤門と同様の一軒一戸、薬医門形式の切妻、桟瓦葺きです。巻斗を介して女梁を支えている唐獅子の彫刻が目に止まります。

書院を中心に三つの池庭が連続する池泉回遊式庭園で南庭は桃山時代、主庭をなす東庭は江戸時代初期、北庭は江戸時代中期の作と推定される三庭からなります。作者不詳ですが老杉蒼松の自然を背景に、灯籠泉石樹木の配置が素晴らしく紅葉がこの時期映えます。

書院の縁にこしかけて紅葉を心ゆくまで愛でれば、心の洗濯ができますよ。

湖東三山で一番南、東近江市にあるのが近江最古級の古刹「釈迦山 百済(ひゃくさい)」です。今から1410年程前の推古14年(606)に聖徳太子が「近江の仏教拠点」のひとつとして百済人の為に創建され、重厚な石垣に覆われた山城の趣きが漂う天台宗の寺院です。本尊「植木観音」は、韓国龍雲寺本尊と同木二体であったと伝わり、御堂は古代の朝鮮半島南西部にあった国家「百済国」の梵閣龍雲寺を模して造られています。

平安後期に天台宗の寺として再興された後、隆盛期を迎え、鎌倉時代には「天台別院」と称されるほどで、多くの僧兵を擁して中核部の僧坊300余坊を構え、威勢を放ったといいます。またルイス・フロイスが「地上の天国一千坊」と賞するほどの大寺院で、琵琶湖対岸の比叡山になぞられ「湖東の小叡山」と称されました。「赤門」と呼ばれる朱塗りの山門をくぐると旧本堂跡へと一直線に長い石段の参道が続きます。

やがて仁王門が見えてきます。仁王門正面には、約2.5mの大迫力の大草履が掛けられています。願いを込めて触れると身体健康、無病長寿のご利益があるとのこと。

「百寺巡礼」の作家・五木寛之氏が命名した「石垣にそびえる空中楼閣」の本堂で如意輪観音半跏思惟像と聖観音坐像は美仏の代表なので是非拝んでみたい仏さまです。傍らには織田信長の焼討時の猛火にも耐え、見事に蘇った強運厄除の樹「千年菩提樹」が佇んでいます。

参道脇の上に残された平らな土地はかつての「僧坊」跡です。天正元年(1573)4月11日の信長の焼討ちに遭い往時の姿は「石垣参道」、棚田のような 「坊跡遺構」からしか偲ぶことができませんが幾度もの兵火や火災をくぐり抜けてきた寺の境内を1300本のカエデが美しく彩ります。(今年はまだ早かった)

山門をくぐり蛇行する山道をたどると左手に石垣を巡らせた本坊・喜見院があります。百済寺の紅葉でまず見るべきところが、「天下遠望の名庭」と言われ、「日本の名庭100選」にも選ばれている池泉回遊式庭園「庭園本坊」です。東側の山腹を利用して造られ自然に谷川の水が注ぐ池に巨岩を配した豪華な造りです。三山中随一との評をとり、池を配した庭園に色づく紅葉が映る様は観音浄地の趣です。殊に書院からの眺めは格別で高さ十数メートルにも及ぶ楓の朱色のほか、黄、緑などの葉が散りばめられ、まるで錦織のような景観を作り出しています。

本坊喜見院の紅葉に染まる庭園の最高所から望んだ景色は、「天下遠望の名園」の名のごとく西に開ける湖東平野の眺望が楽しめます。

ここで昼食のオススメの一軒を。琵琶湖の南東に広がる東近江一帯は、田園地帯や近江商人の歴史を色濃く残す古い街並みがあり、どこかおおらかでのどか、心をゆるりとほぐしてくれる空気が流れていています。そんなことを感じながら車を走らせて矢先に現れる存在感のある一軒家「そば処 藤村」です。

暖簾をくぐり京都の町家を思わせる長いアプローチを抜けると窓の外に映える鮮やかな木々が見事な借景となって目に飛び込んできます。

テーブルは杉の一枚板、椅子は飛騨高山製とモダンと自然が融合した居心地のいい空間である。

長野で修業したという店主の打つそばは、シンプルイズベスト。関東風のやや濃い目のつゆと中細の弾力のあるほどよいコシのある蕎麦は、ひさびさに美味い蕎麦です。蟻巣石の石臼で挽いて香りと甘みを引き出したそば粉を井戸水を使って打っていて、清涼感のあるつるりとのご越しのよいなめらかな食感です。そば湯もトロリ系で最高!

午後からは湖東三山に別れを告げ、愛知川沿いに東上すれば東近江、鈴鹿山系の入り口、永源寺町にある永源寺に向かいます。町のおよそ半分が国定公園に指定されているのが、門前町として栄えた永源寺町です。渓谷を刻み、深いエメラルドグリーンをたたえる愛知川をはるか真下に望むようにして建つ「瑞石山 永源寺」は、関西有数の紅葉の名所と知られる臨済宗永源寺派の大本山です。南北朝時代に近江守護職・佐々木六角氏頼が 中国に渡って仏法を極めた寂室元光禅師(正灯国師)を迎え伽藍を建立し康安元年(1361)に開山したものです。名僧元光を慕って、室町時代の隆盛期には2000名以上もの学僧が集まったといいます。一時衰退したものの江戸時代には東福門院(後水尾天皇皇后・徳川和子)により再建、彦根藩主井伊氏の庇護を受け諸堂が整えられました。

境内の楓の数は2000本ともいわれ、毎年11月中旬を過ぎる頃には堰を切ったように紅色に色付き、全山紅葉に包まれて錦織り成す秋の景色を展開します。

土産売り場の駐車場に停め愛知川(音無川)にかかる旦度橋・大歇橋を渡り、羅漢坂を上ります。

右手にはゆったりと流れる愛知川、左手の雷渓山の石崖には十六羅漢の石仏を見ることができます。いつ頃作られたかは不詳とのことですが、一人ひとりのお顔は生き生きとしてどこかユーモラス。苔むした姿は石なのに温かみさえ感じられて、思わずじっと見入ってしまいました。

境内にはモミジやカエデが多く、全山紅葉に包まれて紅に染まり、総門にたどり着くまでの120段の石段を上っている途中にもしばし足を止めて見入ってしまうほど老樹のカエデが見事です。永源寺の建造物の中で最古の歴史を誇る総門。門に降りかかるような紅葉と紅い絨毯に覆われた石段が美しい。

いよいよ総門をくぐります。行く先の紅葉に気持ちがたかぶります。200年前に建てられた総門は平成10年の改修が行われました。

また総門から山門にかけての参道にも野趣味わい深く頭上に紅葉が広がり、道案内をしてくれているかのようです。

山門は建立に7年の歳月をかけ、楼上に釈迦三尊と十六羅漢をお祀りする威厳あふれるものです。奥に進めば、全国でも珍しいヨシ葺きの大屋根を持つ本堂が出迎え、ここに祀られる本尊は、世継観音と称され、一心に願えば世継ぎが授かる、霊験あらたかな子授けの観音として親しまれています。

燃えるような紅葉が目を楽しませてくれる山門をくぐり、鐘楼の脇を通ると、本堂、法堂、開山堂などが甍を連ねる往時の様子をいまに伝える壮大な伽藍が点在し、その見事な寺院建築に彩りを添える紅葉に目を奪われます。広々とした境内を楓の老樹が埋めて錦織り成す秋の景色を見せてくれます。境内でゆっくり紅葉狩りを楽しんでください。

開山御手植のもみじの落ち葉と緑の苔のコントラストがひときわ目に鮮やかに映ります。

向かいには経堂があり法堂からの渡り廊下越しに見る紅葉とのコントラストが美しい。

世継観音(秘仏)を安置した葦葺きの本堂をはじめ、華やかな紅葉に彩られながらも凛然とした趣を守る堂宇の数々。静謐な諸堂を巡ると、心が研ぎ澄まされたような爽やかな気持ちに包まれます。

鈴鹿山脈に源を発する愛知川の上流には「永源寺ダム」があり、ダムカードをいただきに寄り道します。ダムサイトの地形や地質を生かすため左岸側をコンクリート重力式ダム、右岸側をロックフィルダムとする複合ダムで高堰堤では日本最初の試みでしたが昭和47年(1972)に完成しました。

戻って国道421号を八日市IC方面に車を走らせると見えてくるのが、英国出身の陶芸家バーナード・リーチに関するコレクションが日本一の日登美美術館に併設されている「ヒトミワイナリー」です。

滋賀県で希少なワイナリーが開かれたのは平成3年(1991)。「手間がかかっても、本当の美味しさを」という熱意から誕生した、機械的に濾過しない分、葡萄の旨味が濃くてピュアな味わいが楽しめる微発泡のにごりワインは今や全国区の人気ワインに。店内では少しづつですが全種類無料で試飲ができ、ワイン酵母で作ったこだわりの自家製焼き立てパンのも味見OK。お土産に好みのマリアージュを見つけて買って帰ります。

湖東三山は交通の便が悪くマイカーでのアクセスが一般的ですが、紅葉の時期は混雑します。紅葉シーズンにはJR琵琶湖線河瀬駅、近江鉄道尼子駅からシャトルバスが運行されるので利用するものいいです。3ヵ寺を結ぶ全長8kmの「湖東三山自然歩道」が通じていて、車の混雑を横目に秋の一日を歩くのにもちょうどよい距離です。ちなみに西明寺から金剛輪寺までは徒歩約1時間、金剛輪寺から百済寺までは約1時間半で大体が平坦な田園の道です。一部シャトルバスを利用してもいいですね。

翌日太郎坊宮のある八日市を訪れます。                                      「秋色の東近江!勝利と幸福の聖地太郎坊宮とかくれ里を訪ねる」はこちらhttps://wakuwakutrip.com/archives/4097

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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